カプセルの結末
冬野瞠
カプセルにて
右手の薬指にささくれを見つけて、自分の口元がむう、と歪むのが分かった。それ以外は完璧な自分なのに、かなり残念だ。
アイスブルーに染めた髪にアイロンを当て、立体感を持たせたヘアセット。二重瞼がより際立つように考え抜いたメイク。お気に入りの色をバランスよく使ったネイル。自分の体型が一番引き立つよう改良した学校の制服。
アタシはいつだって、自身の完璧を追い求めてきた。
こんな時――周りから
「ねえ、
目尻に
この船は漂流している。何もない宇宙空間を、あてどもなく漂っている。
誰も予想していなかっただろう。修学旅行で訪れた宇宙基地で、観光用の宇宙船のケーブルが切れ、高校生だけが宇宙空間に放り出されるなんて。
一番の懸念事項は酸素だ。密閉空間の酸素は、六人の男女によって刻々と消費され続けている。
アタシは班長に向かってニッと笑ってみせた。
「焦っても何にもならないじゃん? それに、友達に見せる最後の顔が、涙とか鼻水でベタベタとか嫌だし。アタシは最期まで完璧に綺麗でいたいわけ」
それを聞いて同班の男子が
「自分が死んだ後のことを考えたって仕方ないだろ!」
「そーかな?
きっと今も、大人たちが必死に手を尽くしているはず。
この漂流の結末が悲劇だろうと奇跡だろうと、アタシはただ、完璧な自分でいるだけだ。
カプセル内の酸素が無くなるまで、あと十五分。
カプセルの結末 冬野瞠 @HARU_fuyuno
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