第15話 ~家~

「少々マズいね、みんななるべく散開して戦おう!波状攻撃続けるよ」


 アルテンは周りに指示を出すと、それに従い部隊が散開する。


「隊長!流石にキツイっすよ」


 状況は変わってない、多対一の人数有利を生かして攻撃を続ければ。


「くそったれ!武器が折れやがった…このジジイ硬すぎんだろ!」


「こっちも刃こぼれが酷い!」


「全く男衆は何やってんのよ!これだから手入れをしない奴は嫌いなのよ、ほら代えは後方にあるからちゃっちゃと代えて!……アルテン様の分もあるからね~!」


「ありがとうアイリン!」


 メインだった二人が後方に行ったか、このままでは押され切ってしまう……アイリンの準備は。


「アイリン!ゴーレム、頼めるかい?」


「アルテン様の為とあらば!ゴーレムちゃん達!やっちゃって~!」


 アイリンは小慣れた手つきで、背負っていた巨大なリュックを地面に下すとその場に中身を広げた。


 中からは緑色の粘土片がゴロゴロと出て来て、それにアイリンが触れるとその粘土片は二体のゴーレムに形を成し、後方で武器を変えていた二人を押し退けて一際大きい大剣を手に取り前線に向かい出した。


「小細工……を、意味の無い……ことだ!!」


「大分辛そうだけど大丈夫かい?」


「だ、まれ!」


 この老人、動きは遅くて避け易いが皮膚が硬くて決定打に欠けるな……俺らの最大火力と言えばアイリンの火炎魔法だが、森で放ってしまえば逆にこちらが不利になるだけだな、それにこの迷霧が火炎に対してどういう反応を示すかは分からない……最悪僕ら諸共爆発する可能性もある。


「キャー!ゴーレムちゃん達~!」


「この程度の、泥人形で倒せると思うなよ」


 変身の初期段階にあった言葉の詰まりが無くなってる、あの老人適応してきてるな、早く倒さないとマズい……何か作戦のキーは。


「これなら!」


 これなら行けるかもしれない。


「隊長がなんか思いついたみたいだな」


「皆協力を頼む!どうにか隙を作ってくれ!」


 アルテンが言うと後方から武器を変えた二人が走って来た。


 その手には先程とは違い剣ではなく、変わりに細長い銃を持っていた。


「電撃準備!行けます!」


「合図で!」


 この老人戦闘は全くの素人だ、そのせいか攻撃方法が単調で見抜きやすい、それに自分の体格を制御出来て無いのか振りかぶりの後の隙がデカい、そこを狙う。


「用意!」


 アルテンは右の大振りを見切りジャンプ、そして老人の伸びきった腕に乗ったと同時に指示を出し腕を駆け上がる。


「ガキが!振り落としてくれる!」


「発射!」


 合図と同時に電撃を纏った弾が老人の両足に当たり、痺れが効いたのか膝を付く。


「ガァアアアアアア!!!?」


 アルテンは痺れが伴う痛みに耐えきれずに、上を向いて叫ぶ老人の大きく開いた口に何かを撃ち込んだ。


「グゴッ!?」


 叫び切った老人の息継ぎのタイミングでそれが更に奥へと飲み込まれていった。


「ぎさま!何を飲み込ませた!」


「楽しかったよ老人、強くもあった……正直これをから貰っていなかったら危なかったよ」


 アルテンがそう言い切ると同時に何か異変を感じたのか前に倒れる老人、そして身体がしわしわとしぼんでいき、苦しそうな声を出しながら口から植物の根が出てきた。


 そして次第に家の様な形を成す老人を見ながら、アイリンは心底気持ち悪そうな顔をする。


「うっわ~なにあれ?」


「ハウスシードさ、あれは水や栄養をこれでもかと吸う植物で最終的に家になるんだ。そのせいである種災害の様なものも起こったりするとエヴィーが言っていたんだ」


「エヴィーってアルテン様が連れてきたですね!」


「はは、そういうと怒るよ~彼は」


 とりあえずこれで一件落着かな?まぁこっちの被害はほとんどゼロに近い、楽勝とまでは行かないがこの即席パーティーの連携は固まったかな。


「じゃあ帰りますか」


 それぞれ帰宅の準備をしていると、丁度隊員に連れられたエヴィーがやってきた。


「アルテンさん!ありがとうございます!」


「いや、巻き込んでしまって悪かったね」


「そんなことないですよ、迷霧を舐めてた自分が良くなかったです」


「それは仕方ないさ、こんなことになるなんて普通予知できないからね、それに助かったよハウスシード……想定外の使い方だったけどね」


「使われたのならそれが別の用途でも、道具達は喜びますよ!それに僕だってそうします」


「結構えげつないよね君」


「アルテン様~!準備出来ましたよ!帰りましょう」


 エヴィーと話していたら準備が完了した様でアイリンが呼び掛けて来る、それに応じて俺達は街へ歩き始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る