第14話 ~終演?~

 突然の攻撃に焦る老人は、ビステルへの攻撃をやめて、老人はオークを周りに配置して、瞬時に肉壁を作り身を護る体勢に入った。


「ハハッ、演劇の最後には必ず大多数が勝つもんさ…」


「まさか、俺の周りに伏兵がいるとはな、クソガキ共のくせに小賢しい演技しやがって」


「おいおい爺さん、口調が乱れているよ…演者は最後まで演じなきゃね」


「この計画、瞬時に出来るとは思えん…それに連絡を取る素振りもしなかった、まさか監視されていたのか!」


「やっと監視にお気づきに?ディシーブ系が強化されてることに気が付いていたのに、エヴィーさんを一人で逃がしたのも、彼が慌てて余計なことをしでかさないようにする為、だから今頃彼は救助隊に保護されているはずです」


 エルフの老人は街への攻撃計画を立て始めた頃から数年、ずっと隠密行動に優れた街の冒険者たちに監視されていたのだ。


「道理で度々視線を感じると思っていた、だがまさかその視線はお前らのものだったとは…」


「危険の芽は早めに摘んでおいた方が後々楽できますよ?と言っても僕たちも数十年野放しにしてきましたがね、では主役は貴方ですアルテンさん、後は頼みますよ…結構血を失い過ぎました」


 ビステルがそういうと同時に、4~5人の兵を連れたアルテンが霧の中から現れた。


「やぁ、貴方が冒険者協会のお偉いさん方が、長年の会議の主題にしているエルフのご老人ですか?」


「それについては知らんが、きっとそうだろうな…そしてお前はあの時の……」


「おや?もしかして…いやその顔を見たら思い出したよ、魔王の隣にいた老人じゃないですか…勇者パーティーに後を任せたのは失敗だったかな?」


「ふん、懐かしいな…確かにアイツらに任せたのは失敗だろうな、お前たち味方目線でも随分と阿呆な4人だったろう」


「4人?あの場に勇者パーティー全員がいたはずでは?」


「最後まで気づかなかったか…既に一人、僧侶の女は最初から俺たちの手駒だったのだ、阿呆は俺が思っている以上にいたようだな」


「道理で行く先々に都合良く四天王が出て来ていたと思ったら、あの僧侶さんの仕業だったのか」


「まぁアイツに期待してた奴なんて、慈悲深い魔王様だけだったがな」


「一つ質問良いですか?勇者パーティーは全員国に帰ってきました、その勇者パーティーは一人を除き正常なのでしょうか?」


「さあな…さて、お喋りは終わりだ、投降する気はさらさら無い、俺を捕らえたくばこのオークの軍勢を倒すんだな!」


 老人はオークの軍勢に指示を出し、その指示に呼応するようにアルテンの部隊にオークたちは走り出した。


 その距離約5m、だが、アルテンの部隊がオークの軍勢を滅ぼすのに1mも要らない。


「爆破」


 アルテンの一声で次々と地面が爆発し、オークたちは空中へと吹き飛ばされる、直前の魔力の反応を察知していたのか、老人は既に空へと飛翔していた。


「おぉ、あれを避けたんだ…中々やるけど残念」


 そう言いながらアルテンは老人に銃を向け、照準を冷静に合わせて引き金を引いた。


 パンッと破裂音が森に谺すると同時に、老人は空から落ちてきた。


「これで一件落着かな?」


 部隊の皆が老人の死を確信して、ピリピリとした戦闘の雰囲気から一変し、自由にしゃべり出したが、アルテンだけはまだ老人を警戒していた。


「ナイスショットだったぞアルテン!」


「あぁ、お膳立てありがとうね、でもまだ終わりじゃないよ…ご老人起きてるんだよね?」


 そう声を掛けた瞬間、老人の身体から紫の蒸気が噴き出した。


「なんだ!?」


「あれはディシーブ化の原因にもなっているガスだね、皆マスク着用して」


 老人の身体から噴き出す蒸気は、木の実から出るものよりも何十倍にも濃い霧だ、あれを吸い込んだりすると一発で危険な状態になる。


「ク、クソガ……キ共、絶対に…許さんぞ」


「そりゃそうだよね、やっぱ自分にも施す実験をしていると思った、研究者はいつもこうだ」


 ガスの効果のせいで筋肉が肥大化した老人は、前腕の筋肉の重さに耐えきれずに、手を地面に付け、半ば四足歩行のようになり、顔を歪ませて咆哮を上げアルテンの部隊に迫って来た。

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