第10話 ~スゴいねエルフ~

「おはようございます」


「あら~エヴィーちゃんおはよ~」


「サンジュさんは、誰にでもちゃん付けをしているんですか?」


「いや~気に入った子にだけ、してるよ~」


「まだ会って3日か4日ぐらいですよね?」


「気に入るのに時間なんて関係無いよ~」


 二階から降りてサンジュさんと会話をする、ここ数日はそれが僕の朝のルーティーンになっていた。


 サンジュさんはエルフの女性で、勿論耳が長くて美しいって感じの人だ。


 この世界にはいろんな種族が暮らしていて、エルフはその中の一種族で、主な特徴としては耳が長く魔法に長けているというところだ、そして基本的にみんな美形である。


 魔法大戦ではそこまで名前の挙がらない種族である。


 ちなみに魔法大戦時魔王軍に付いている種族もいて、その種族達はもう敵として扱われて、どの国でも迫害対象になっている。


 それが元々耳の長いという特徴を持ち、魔法に精通した種族、つまりエルフの原種から分化した、ダークエルフである。


 ダークエルフは、原種の中でも特に凶暴性を持ち、黒い肌を持ち、肉弾戦を好む種族で、勿論魔法も使うが、エルフのそれとは違い、ドス黒い闇の魔法を自在に操る。


 元々エルフとダークエルフは同じ村で過ごしており、肌の色も同じであった。


 そしてある事件によって今はダークエルフと呼ばれる悪の心を持つエルフ達が、エルフの村から追い出されてしまったのだ。


 その事件とは、今のダークエルフの特徴を、特に色濃く性格に反映された闇の心を持つジトというエルフが、自身の闇の魔力を役立てれないかと思い、それを研究中に、魔力暴走により闇の魔力に身体を取り込まれてしまった。


 そしてその暴走した闇の魔力の波長に感化された闇の魔力を秘めたエルフ達が操られ、村は阿鼻叫喚の地獄絵図に成り果てた。


 ダークエルフ達は強く、村にいるエルフ達では対処出来ずに、困った族長は森に棲んでいる妖精達に力を求めた。


 すると闇の魔法に興味を示した一匹の大妖精が力を貸してくれた、闇の魔力を持つエルフ達と交換という条件付きで。


 そうして大妖精が与えてくれた力で、ダークエルフ達は抑え込められ、妖精達の手に渡った。


 だが、闇の魔力は思ったよりも強力で、手に負えなくなった妖精達は、エルフの村から数百キロ離れた森の中に解き放った。


 解き放たれたダークエルフ達は、当時の魔王軍に拾われ、魔王領土の付近で調教された。


 そして正気を取り戻した彼らは魔王軍に使える身になったのだ。


 これが4000年前の話であり、その状況を子供ながらにして見ており、この物語を語り継いで来たのがサンジュさんだった。


 最初に聞いた時はかなり驚かされ、本当かどうか分からなかったが、アルテンさんに確認したらそうだと言われたので、今では信じている。


 エルフという種族は長寿の生き物だが、数千年単位で生きているエルフはかなり珍しい。


 サンジュさんによると、当時族長は一万歳をゆうに越していたらしい、そして今もご存命でエルフの一国の王をしている。


 流石に族長レベルの長寿は更に珍しく歴史上では、最長であり今も記録更新を続けている。


 昨日長生きのコツを聞いたのだが、ダラダラして低燃費で生活をすると言われて反応に困った、サンジュさんを見ていると、本人的には真面目に言っている様子だったのだから。


 それと飛行魔法でプカプカ浮いて移動すると楽だとアドバイスを受けたが、僕にはとても無理なアドバイスだった、そもそも飛行魔法は燃費が悪く、今でも飛行靴や魔法の箒などの魔道具が基本とされている。


 それを出来るのは膨大な魔力を持った大魔法使いか賢者か、エルフぐらいである。


 魔法は当たり前の様に全属性を扱えて、普通の人間が苦労して習得する中級魔法が、エルフという種族の中での認識では、赤ん坊が初めて無意識に行う魔法だと言っていた。


 一握りの魔法使いにしか習得できない上級魔法は、生活魔法程度の認識らしい、そしてその長い寿命を駆使して、一つの属性を煮詰めるのが基本らしい、サンジュさんは昔からめんどくさがり屋、一歩も外に出たくない派のエルフだったらしいので風の魔法を極めたら、風で飛べて歩かなくても良いだろうと考えて、その場から一歩も動かないで家事を全て終わらせられるところまで昇華させたらしい。


 風の魔法は緻密な魔力制御と、膨大な魔力が要求される魔法で、エルフでもあまり使われない魔法である。


 それを息をするかの様に操るのがサンジュさんである、アルテンさんは少し前に不思議に思いなぜそんな凄い人が、こんな辺鄙な街で宿を構えているのか聞いてみたと言う、帰って来た返事は、国に行くと勧誘がめんどくさいから~こんな所で~不労所得を吸ってるんだよ~っと言われたらしい。


 一時期習得した力で周辺の国々のトラブルを解決していたせいで、いろんな国からの勧誘がめんどくさくて逃げたと、どうやらエルフにはそれが理由で、強大な魔法を習得しているがあまり人々に力を貸さないのがいて、魔法大戦の時も村の周りに近付いて来た魔物を狩る程度で、エルフ達が人間に力を貸していたら、2年で終わった大戦であると意見する国の王もいる。


 この宿に来てから毎日かなり凄い事を聞かされては驚いての繰り返しである、語り部として歴史を語り継いできた面もあるので、意外に話好きのエルフなのかもしれない。


「それじゃあクエストに行ってきます!」


「行ってら~しゃ~いがんばって~」


 そして今日もルーティーンを終わらせ、商業組合のクエストを片付けに、監視員を雇いに組合へ向かった。

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