第8話 ~初めての取引~
冒険者協会に入ると、すぐに目を惹かれるのは、天井に吊り下げられた、禍々しいオーラを放つ、大きな龍の牙であった。
この龍の牙は、300年前の大竜災の時に、この地を襲撃した龍の1匹だと言われている。
大竜災とは、数百年に1度、魔力が枯渇した地脈を巣にしている龍達が、魔力を求めて、地上へ一斉に押し寄せる災害である。
武器を受け取る為に、アルテンさんを探していると、丁度受付の横にある通路から、大きな荷物を背負って、職員と話ながら出て来た。
「おーい!アルテンさん!」
「お!エヴィー、相場はわかったかい?」
「それが、魔道具に関しての相場は載っていないようで、大人しく同業者に聞いてみる事にします」
「まあ、あくまでも相場だからね、そこは取引相手と相談って感じかな?」
「そうなりますね」
「あっ、そういえばクエストはもう受けたかい?」
「はい、クエストはもう受けました!」
「それならこれ、ハウスシードと交換ね」
「あのぅ、多分このハウスシードにはそこまでの価値が……」
「いやいや、十分価値あると思うよ、それに俺自身がこれで良いって決めたんだから、君がそこまで考える必要は無いと思うよ」
「それも、そうですかね?それじゃあわかりました、取引成立です」
「じゃあ、色々荷物を置きたいから、俺の泊っている宿まで歩こうか、すぐそこだから荷馬車は繋いだままで良いよ」
「わかりました!」
冒険者協会から出て、繋ぎ場の逆方向に少し歩くと、宿屋と簡素な木の板がぶら下がった、2階建ての建物が見えた。
「ここがアルテンさんの泊っている宿ですか?」
「そうだよ、ここは色々便利な所に建っててさ、近くになんでもあるよ、そのせいかいつも満員なんだけどね」
アルテンさんに着いて、宿屋に入ると、そこの主と思しき女の人が、受付にいた。
「あら~アルテンちゃん、おかえり~」
「ただいま」
「あら?後ろの小さくて可愛い子は誰?まさかアルテンちゃんの彼女?」
「あはは、彼は男だよ……ね?」
「そ、そうですよ!少し小さいかもしれないですが、一応成人してますからね!」
「あらごめんなさいね~間違えちゃったわ~」
「いえ、大丈夫です!僕は晩熟タイプなので!行きましょうアルテンさん!」
「わかったよ、案内するね」
アルテンさんの案内で2階に上がり、奥の窓際の部屋へ入る。
「なんかごめんね、サンジュさんはいつもああだから」
「いえ、身長なんてこれっぽっちも気にしてません」
「気にしてるんだね……」
「それよりも取引しましょう!取引!僕はハウスシードを」
「じゃあ俺は、この連射式と魔銃の解説書、って言ってもほとんど話はしたんだけどね」
「それでもありがたいです、貴重な武器と資料、ありがとうございます!」
無事取引をし、僕はアルテンさんから、連射式魔銃と魔銃の解説書を受け取った。
「ところでこの武器、どうやって使うんですか?」
「簡単だよ、その魔種が入ったタンクを背負って、銃を構えて標的に向かって撃つだけ」
「このタンク、かなり大きいですね」
「見てくれはそうなんだけど、重力魔法で軽くなってるから、実践ではそこまで気にならないよ」
「なるほど?」
言われるがままに、タンクを背負ってみると、言った通りとても軽かった。
大きさからの軽さのギャップに、知らない人が持ち上げようとしたら、ぎっくり腰になりそうだ。
銃を手に取ってみると、こちらはタンクとは違い、ずっしりとしていた。
「あれ?これじゃあ連射式なのに、いちいち弾を込めないといけませんよ?」
「それは大丈夫、タンクの中とその銃は繋がっていて、その引き金を引くと、転送魔法で銃口から飛び出すって仕組みだよ」
「なるほど、それも後で色々と話を聞かせてくれませんか?」
「良いよ」
こうして強力な武器を手に入れた僕は、試し撃ちも兼ねて、まずは近くの森へアルテンさんと向かう事にした。
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