第6話 ~一夜明けていざ隣町へ~

「ふあ、あぁ……まだ眠い」


「さて!行こうか!」


「アルテンさんは朝強いですね」


「俺も昔は弱かったよ、ただ軍隊に5年ほど所属したら、身も心も朝にも強くなったってわけさ」


「なるほど、アルテンさんはどこの部隊にいたんですか?」


「敵魔法生命体殲滅部隊って言うとこにいたよ、簡単に言うと魔王勢力を削って、魔王を討伐しよう部隊だよ」


「え、あの部隊ですか、道理で強いわけです」


「まぁ、俺より強い奴なんてあの部隊には、掃いて捨てる程いたよ」


「あ、ちょっと待ってください、ハウスシード枯らすの忘れてました」


「あれ枯れるの?」


「この除草剤を使えば完全に消し去れます、ただそこらの道具屋に売ってるような除草剤じゃ枯れませんけどね」


 この除草剤は特別製で、ロットスライムの体液を混ぜている。


 ロットスライムは基本汚い場所に生息していて、昔ここから一番近い国の下水道に大量発生し、度々問題を起こしていた。


 一部では人間が世界を汚くし過ぎた為に、生まれたスライムだと言われているが、それは間違いである。


 野生でも動物の糞や、死骸などを吸収して過ごしているので、たとえ人間が世界を汚していなくとも発生した魔物らしい。


「よっと」


 除草剤をハウスシードに撒くと、掛かった部分から音を立てて煙が出て、みるみる内に緑の液体が全体を覆い、数分も経たない内に跡形も無く消え去り、その場には少し膨張したロットスライムが、動き回っているだけになった。


 そして逃げ出さない内に、先程除草剤を入れていた容器をスライムに向け、根本のボタンを押すと、それを吸い込んだ、すかさず蓋をして終わりである。


「君と合ってから色々と驚かされるな、でも固定拠点としてこれは取って置かないのか?」


「それは基本しないですね、なんでかと言いますと、この人口植物はその形を維持する為に周辺の草木の栄養や、そこの湖の水を吸い取っているので、このまま放置してしまうと得が殆ど無いからですかね、たまに景観を良くしようと、草木を全て枯らす目的で植える人はいますけどね」


「なるほど、それは一泊明かすだけの目的で植えたなら、除去しないとだな」


「はい、その通りです、ここはこのままでも十分景色が良いですからね」


「そういえば君、荷馬車にも色んな魔道具を乗せているけど、やっぱり魔道具使いなのかい?」


「えぇ、昔弟に教えられて、そこからハマりにハマって今に至ります」


「でも俺の友達に魔道具使いがいるけど、ここまでの量を持って旅する所は見た事ないな」


「それは僕が魔道具の移動販売もしているからですよ、と言っても魔の付く物なら大抵売ってるつもりです」


「なるほど商人だったか、何を売っているのかな?」


「商人ですか、まだ1つも売った事無いですけどね、えーと…それならハウスシードの種はいかが?」


「それ売り物なのかい?」


「はい、今ならこの除草剤も付けて……」


「どうしたんだい?」


「えと、この移動販売も思い付きで始めたみたいな所があるので、相場がよくわからないんですよ」


「あ~、じゃああの銃と交換って事にしよう」


「なるほど、っていやいや絶対に銃の価値は、この種よりあるでしょう」


「いや良いよ、俺もよくわかんないしさ、実はここら辺に来たばっかなんだよね」


「アルテンさんがそう言うなら……それでお願いします」


「ガラクタと交換してくれてありがとうね」


「こちらこそありがとうございます!」


「あっ、ここら辺の通貨?なのかな、よくわかんないなら商業組合があるはずだから、着いたら寄ってみれば?」


「その手がありましたか」


 そしてハウスシードを除去し、隣街へ行く準備を整え僕らは出発した。

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