第5話 ~戦闘後の報酬タイム~

「おっ、戻ったかエヴィー」


「キチンと荷馬車は残ってました、道沿いに置いて来たから、盗賊とかが心配だったけど大丈夫でした」


「ほら、魔種コーヒーだよ」


「ありがとうございます!」


 部屋に戻ると中はコーヒーの良いニオイが充満していた。


 魔種はとても万能で、このコーヒーに使われているのは、光の魔石を肥料に作られた魔種で、疲労回復の効果がある、そしてハウスシードは部屋に入った者にも、疲労回復の効果があるので、すぐ疲れる自分にとっては、当たり前の様に常備しておきたいのだが、道具屋の給料では光の魔石や、この魔種などは高くて頻繁に買えないので、常備は断念した。


 魔道具にハマって研究をしてたら、道具屋の店長が淹れてくれたのが始まりだったな、苦いのが苦手な僕は絶対飲まなかっただろうな、今じゃ研究のお供としてコーヒーが欠かせない。


 この魔種コーヒーを気軽に淹れれるアルテンさんは、きっと魔物とか狩る仕事をしてるから、お金を持ってるんだろうな。


 装備品も細かい装飾まで精巧に作られてるし、魔銃もきっと高価なモノなんだろうな。


「ねぇアルテンさん」


「どうしたんだい?」


「その魔銃って、失礼だけどいくらだったの?」


「あぁ、これ?無料だよ」


「え?あの威力の武器が??」


「まぁ、弾の魔種や火薬なんかは自腹だけど、あと修理なんかも無料だよ。なんかこの武器の製作者が「ぜひ君に使ってほしい」ってな感じの気持ちを文字に起こして、手紙にして武器と一緒に送られてきたんだよね」


「無料……もしかしてアルテンさんって、その武器の製作者の子供…とか?」


「ははっ、そんな事無いよ…ただこの、ニック魔道具シリーズって言うんだけ――」


「あぁ!ニック魔道具シリーズの武器でしたか!作品が出る度にチェックさせてもらってましたよ!道理でどこか見た事があるような気がしたんですよ!でもこの武器初めてみましたよ?」


「君意外とグイグイ来るタイプよね?」


「あ、あぁすいません……僕実は魔道具に目が無いんです」


「いやそれは知ってるよ、理由は何て事ないよ、この武器のシリーズの第2作品目の連射式魔銃のおかげで、俺は活躍して来れただけの事だよ」


「連射式魔銃!欲しかったけど限定販売だったんですよ……なので手に入れられませんでした…」


「それで製作者からラブレターみたいな手紙を、たくさん送られてきてね、まぁそれは主に魔銃に向けてのだけどね、なんでも「君と共にダンジョンで乱れ舞う魔銃は、それはもう光り輝いて見えた。魔銃が喜んでいたよ、君とダンスを踊れて。そしてそれにインスピレーションを受けて作ったそれは、もはや魔銃と君との間に出来た子供さ」の手紙と共にこの魔銃が送られて来たんだ」


「なんか気持ちも分からなくないですけど、気持ち悪いですね」


「そうなんだよ、それを目に入れた瞬間鳥肌が立って、この文章が網膜に焼き付いてしまったんだ、目を瞑るとおぞましい文章の数々が一字一句浮かんでくるよ」


「なんか理由を知れてげんなりしたのは初めてかもしれません……」


「最初はあまり使いたくなかったよ、でも今じゃこの子無しじゃ…おっと飲まれかけた」


「ははっ……なるほどこの武器の事が知らなかったのは、非売品だったからなんですね」


「そういうことだね、あっ街に着いた時にこの銃の説明を抜粋したメモと、連射式魔銃あげるよ」


「え!?く、くれるんですか?」


「あぁ、もう使わなくなったしね、ギルドの武器庫で埃被らせとくよりは良いと思って、それに君なら上手く使ってくれる気がする」


「あ、ありが、ありがとうございます!本当に嬉しいです!」


「じゃあ明日朝一で街まで行こうか」


「はい!」


 !


「どうぞ、レッドボアの肉を焼いて、塩を振りかけただけの、簡単ステーキ召し上がれ」


「おぉ、凄く美味しそうです」


 レッドボアのステーキは肉厚で、肉汁が溢れ出てそれと同時に涎も溢れ出っぱなし。


 ナイフを入れると断面は濃いピンク色、それにフォークを突き刺し口に運び頬張る。


 僕が今まで食べてきた肉のどれよりもおいしく弾力があって、噛めば噛むほど旨味が染み出す。


 肉汁はもはや完璧に肉を引き立てる最高級なソース、永遠に噛んでたい、この旨味をずっと享受していたい。


「やはり逃げ回った逃避個体だからなのか、肉が締まっていて弾力が良いね、おいしい」


「ふぁい!ほいひいへす!」(はい!おいしいです!)


 !


「ふぅ、もう食べられないです」


「たくさん食べたねぇ、食べたら眠くなってきたよ」


 アルテンさんはそう言うと部屋に寝袋を敷き包まった。


「あ、食べてからすぐ寝ると魔牛になりますよ」


「ならない、ならない……」


「寝ちゃった」


 僕も寝るかぁ、あんな幸せな物食べたんだ……魔牛になっても良いや。

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