ホルスタイン女子高生と正邪のささくれ  KAC20244

愛田 猛

ホルスタイン女子高生と正邪のささくれ KAC20244



「ミノ子、私、人差し指の爪の付け根が痛いのよ。何だか、変なものができてるみたい。」


魔法学園の朝の教室。ホルスタイン女子高生のホル美が、泣きそうな顔で、親友のミノタウロス女子高生のミノ子に訴えている。


ホル美が声を出すたびに、ホルスタイン柄のセーラー服に包まれた巨乳が揺れる。



ミノ子がホル美の指先を見ようとしたものの、どうしてもホル美の巨大な胸に目が行ってしまう。


内心溜息をつくミノ子だった。

(女の私でさえこうなんだもの。男の子はみんな釘付けよね。男の子はおっぱい星人ばかりだから。)


その真偽はさておき、ミノ子はホル美の求めに応じて、ホル美の右手人差し指を見る。


爪の根元が反り返って逆に剥けており、その下側には黒い文様が見えている。


「なにこれ、こわい。」

ホル美が口にする。ミノ子も正直そう思うが、ホル美のためにあえて口には出さない。


そこへ、ペガサスのペガものぞきこんで来た。

ペガは驚き、「急いでヤギ先生に見せて!」

と叫んだ


「ペガ、何だか知ってるの?」ミノ子が尋ねたが、ペガは震えながら

「私では判断できない。でも、アレだったら大変なことになるから、とにかくヤギ先生に見せて!」という。


ちょうどその時、担任のヤギ先生が教室に入ってきた。正確には彼はヤギではないのだが、皆がそう呼んでいる。魔法理論の先生だ。


ホル美がヤギ先生に泣きつく。

「せんせ~い。変なものができてるんです~」


ヤギ先生は眼鏡をかけなおして患部を見て、驚愕の色を見せる。

「こ、これは…」


ペガがヤギ先生に聞く。

「「先生、これはやっぱり正邪の…」


ヤギ先生がうなずく。

「ああ、これは正邪のささくれじゃ。大変なことになったのう。ホル美さんや。」



ミノ子がホル美に変わって尋ねる。

「先生、正邪のささくれって何ですか?」


先生が答える。

「この背かいでは、ささくれというのは精霊のいたずらと言われている。じゃが、時に自然の魔力の影響で、善悪がそれぞれ自然のマナにたまり、合わさってささくれを作ることがある。それが背負いじゃのささくれじゃ。


小さいものであれば、特に問題はないのじゃが、このような文様が出るものは、世界を変えるものなのじゃ。」


「「「「世界を変える?」」」」

皆驚いた。


「ああ。正邪のささくれ、というのは、世の中の正しいこと、素晴らしいことが集まった魔素と、邪悪なものが集まった魔素がまじりあうことによってできたものじゃ。正と邪の対立によって、体内でささくれと文様が醸成させるのじゃ。」

ヤギ先生はいう。


「で、今後どうなるんですか?」ミノ子がおそるおそる聞く。


「それがな…」ヤギ先生は口ごもる。


「先生、教えてください!」ホル美が叫ぶ。


「それができた個人の、過去のふるまいに依存するのじゃ。もし邪悪なことばありしているときには、邪のささくれが爆発し、その者は邪悪な者に変わる。昔、ある狼がよこしまな考えを持っており、正邪のささくれが邪になって、大邪狼となり、人々を恐怖に陥れた。大魔狼は魔物も動物も人族もかまわずに喰い散らかしたのじゃ。」


皆そくっとした。


「一方、良い行いを続けていると、聖なるささくれが広がり、その者は聖なる者となる。 あるカモメが、聖なる鳥となり、人々に幸福を与えた、という伝承が残っている。その聖なる鳥が、邪なる狼を退治したのじゃ。」



皆、顔を見合わせた。


「先生、ホル美は…」ミノ子がおそるおそる聞く。


「うむ、この感じだと、明日には変化があするじゃろう。その時、ホル美は聖なる牛か、邪なる牛のどちらかに変わるであろう。いままでの行いで大体決まるが、あと一日、できれば良い行いを続けなさい。」


そしt付け加えた。」

「今日は、もう帰りなさい。そして、明日も学校には来ないでいい。隔離じゃな。」



ホル美は真っ暗になった。 もしかして自分は悪の牛になり、討伐されてしまうかもしれない。自分の命はどうなるのだろう。


友達思いのミノ子が言う。


「ホル美、私がずっとついててあげるから大丈夫よ。ずっと一緒よ。」



ホル美は、弱弱しく首を横に振る。

「ありがとう。ミノ子大好き。でも、ミノ子に迷惑はかけられない。私、一人で部屋にこもるわ。」

ホル美はそう言って、自宅に戻った。

ミノ子は、ホル美が心配でほとんど眠れなかった。。

さっきが、ホル美の通常モードの見納めだったかもしれない。やはり一緒に居ればよかったかもしれない、などの考えがぐるぐる回っていた。






翌日のことである。魔法学園のクラスの皆が、、近所で変な魔素の動きがあるのに気づいた。


「先生、やっぱり…」ミノ子がいう。泣きそうな顔をしている。


難しい顔をしたヤギ先生が答える。

「たぶん、そうじゃな。ホル美がどうなったか、少し様子を見よう。」


皆が沈黙する。


ほどなく、どたどたと足音が聞こえた。

そして教室のところで音がやむ。


ホル美だ。間違いない。


教室のドアが開き、ホル美が現れた。


た。

ホルスタイン柄の背^ラー^風と揺れる巨乳とアホ毛。そして、ぽやぽやしただらしない顔。いつものホル美だ。



「ホル美、どうなったの?」ミノ子が聞く。


ホル美が答える。

「うーん、わかんない。寝て起きたら、ささくれが消えてたよ。」


ミノ子が心配で眠れなかったというのに、ホル美はぐうぐう寝ていたようだ。


ヤギ先生が爪を見る。正邪のささくれは、確かに消えている。先ほどの魔力の流れも、ささくれが変化したものだろう。


ヤギ先生は結論を出した。


「ホルは、悪いことも良いことも何も考えとらん。ただ喰って寝てるだけだから、魔素がどちらにも不足して、消えてしまったんじゃな。よかったよかった。」


ミノ子がいう。

「あ~、ホルもが何も考えてなくてよかった今日ばかりは、ホル美が考えなしでよかったと思うわ!」



ホル美は、ぼーっとした顔で答える。

「えへへ、それほどでも。」


今日も魔法学園は平和だ。







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なお、ホル美はKAC2024 連作シリーズの登場人物です。

この作品にハートをつけてから、他の作品もお楽しみください(笑)。







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ホルスタイン女子高生と正邪のささくれ  KAC20244 愛田 猛 @takaida1

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