第61話 暴食のドレーク
クラーケンの超遠距離攻撃からなんとか立ち直す事が出来たが、一体あの攻撃はなんだったのだろうか?城壁を破壊する力に、フルプレートアーマーですら貫通するなんて、常識的に考えられないため魔法位しか思いつかない。今は、エルフの女王ラズーシャとドレークが敵を錯乱しているため、まだこの辺りは余裕があるがクラーケンの足攻撃の余波により、高波が何度もこちらに押し寄せてくる。
しかしクラーケンの戦いは一進一退のようで、ギリギリの攻防をしておりあまり進展は無さそうに感じるが、ドレークからは時は熟したと報告が入る。
「時は熟したとは一体どういう事でしょうか?そこまで戦いに変化がある様に思えませんが」
「ドレークが言うんだから嘘ではないと思うし、これから徐々に起こるかも?皆もその時のために、臨戦体制を維持でクラーケンに何かあれば攻撃に参加しよう」
だが、ドレークからの報告から少し経つとクラーケンの動きがさらに激しくなってくる。あたり構わず乱雑に攻撃しているみたいで様子がおかしく見える。ドレークが何かを仕組んだのだろうか?
「なんかクラーケンが苛ついているというか苦しんでる?エルジュ、ドレークが何をしたか知ってる?」
「主人なら御存知だと思いますが、ドレークは何でも食べる食いしん坊で、いかもの食いであります。そして眷属である我らは、主人や世界樹であらせられるポポ様の恩恵により、魔法とは違った個性が付与されておられます」
確かにドレークの元となるヤドリギ時代は何かしらにつけて、色々な物を食べていた。こちらが食べているものを見ると、まるで
「そして、ドレークは暴食ではありますが取り込んだものを保存しておく事も出来、それを活用し尚且つ、今も食べているのかも知れません。食べているものは、クラーケンの体か、はたまた何か別なものかは分かりませんが」
「なるほどね、それならクラーケンが嫌がってそうなのが分かるね。チクチクされるのって嫌だから」
「いやはや、海の上だとオレらはお荷物だから仕方ねぇが、ドレークの旦那やラズーシャ様はスゲェな」
「クラーケンが弱ってきたら、皆の力がきっと必要になるさ。もちろん主攻はドレークとラズーシャだけどね」
バーモスが海の上では活躍出来ないため、気落ちしているがまだまだ本番はこの先だ。ただ、問題はドレークとラズーシャの体力と魔力が切れないかそこだけ心配になる。あれだけ海の上を縦横無尽に駆け巡るなんて、魔力の消費も大きいはずだ。
暴れ狂うクラーケンの攻撃を冷静に回避し次々に軽い攻撃を食らわせて行く。ドレークとラズーシャのコンビはなかなか良いらしい。
そして、クラーケンの様子が変わってから10分程経過するが、予想外な事にクラーケンは急に攻撃を止めるとまるで逃げるかの様に、海の中に潜って頭が見えなくなる。戦闘の様子を固唾を飲んで見守っていた此方側は、一瞬首を傾げるがララシャが檄を飛ばして行く。
「皆さん!クラーケンは逃げる選択肢を取ったようです。すぐにこちらでも追撃に移行しましょう」
「お、おう!!しかし、どうやってあっちまで移動すれば良いんだ!?」
「大丈夫。今から木船を呼び出すからそれに乗るとしよう。動力は水魔法使いと風魔法使いに任せるよ」
ララシャやバーモスの期待に応えるために木船を呼び出す。原則として、魔物の栄養を使わないと原木や植物しか呼び出せない。しかし使用すると呼び出すイメージ次第で、馬車であったり船だったり様々な物を呼び出せる様になる。一応木人枠らしく、自我はないが命令は聞いてくれる。
(呼び出す時は、イメージが一番大事。サポートは任せて)
ポポからイメージが大事だと教わり、それが正しかった事を証明する。かなり密集率が上がるが、なんとか100人程乗れる木船を次々と呼び出し海に浮かべていく。勿論簡易的な物なので帆はないので、推進力は魔法使い頼りになる。
「よっしゃ!!ライク!皆でぶっ飛ばして行こうぜ!」
「うっす!飛ばしていくっすよ!」
傭兵達は木船に一番に飛び乗ると、魔法の力で海の上を滑空するかの様に飛び出していく。その後を追う様にエルフ達も、次々と波に乗っていく。魔法使いをふんだんに使える贅沢なんてなかなかないだろう。
ラズーシャ達の場所まで距離も1Kmしか無かったため、すぐに着く事になるが辺りにはラズーシャしかおらずドレークの姿が見当たらない。クラーケンにやられてはいないはずなので、ラズーシャに話を聞こうとするとエルジュから指示が入る。
「皆様!クラーケンが間も無く、ここから西方角で浮上します。浮上してきましたらありったけの魔法を叩きつけましょう」
エルジュの言葉に周りは緊張感が生まれる。誰もがその言葉を信じ西へと舵を切るとエルジュのカウントダウンが始まる。
「5、4、3、2、1…」
エルジュが0を言う前に、凄い勢いで水面が膨れ上がる。クラーケンの頭が見えたかと思いきや、体の半分位まで何かに突き上げられたかのように空へと打ち上げられた。
「皆!放てーーーー!!!!!」
「うおおおおおお!!いっけえええ!」
千人近い魔法使いから雨霰のように放たれる脅威の破壊力は、クラーケンを見事に打ちとらえた。その破壊力で辺りは爆風が吹き荒れ、大津波が発生し巻き込まれた木船は転覆してしまうのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます