第57話 港湾都市マガラカ奪還作戦(2)
エルフ達の先制攻撃により、眼下にいた魔物達は一匹残らず弓矢の餌食となる。そしてそのまま勢いに乗り、北城門前に突貫していく。
「ほらよっと、今日は俺の奢りだ。たーんと食べな?」
「ギャギィィィィ!」
バーモス自慢の火魔法が、ゴブリン達を焼き殺し炭化させていく。さらに追撃とばかりに真っ赤に燃える拳大の塊がいくつも射出される。次々と抵抗する間も無く、ゴブリン達は消し炭と化していく。
「なんかおかしくないっすか?魔法を使う上級種がいないっすよ」
「なんだ楽勝だと思ったら、上級種がいないのか。まあいなけりゃこっちは、楽が出来て有難いんだが」
ヤドリギを解き放ち、下級種の栄養を奪い取りながら城壁上から戦闘を見ていたが、魔物は一切魔法を使わずに瞬く間にやられている。いつもなら、上級種の魔法が次々と打たれるのだがそういった気配は何もない。
基本的に魔物の軍勢は、編成として1割程の上級種がいる場合が多い。つまり、マガラカに12000体もの魔物がいるなら1200前後は上級種がいる事になる。まあ北城門は守る価値が少ない為下級種に任せていた可能性もある。もし、上級種がシーアルバ首都へ向かっているのなら、こちらは楽が出来るがシーアルバは色々と大変かもしれないが、今回は作戦が上手くいったと喜んで良いだろう。
「はあああ!これが最後っす!」
エルフの援護もあり、バーモス率いる傭兵達は下級種を次々と屠りながら、拍子抜けするくらい簡単に北城門を確保する事ができた。
「上級種がいないのは勿論あるが、こちらから奇襲なんてするのは初めてなせいか、魔物達も不意を突かれかなりパニックになっていたようだな」
「いつもこんな簡単なら良いんすけどねぇ。それで北城門を確保したら次は何処に向かうんすかね?」
「ここ北城門を確保出来たら、次は東城門に行く予定ですよ。初戦は被害無しの上出来ですから、すぐに転進します」
「ララシャさんどもっす!」
北城門付近は魔物が1000いかないくらいしかいなかったようで、それらを圧倒し完全勝利と言っても良いだけの戦果だ。そのまま、無傷のまま次は東門の方へ向かうが、北城門の守りはヤドリギから吸収した下級木人を呼び出し最低限の守りとする。
そしてそのまま、ラズーシャを先頭に城壁上から東城門を目指すのだが、ナギがこちらに報告があるのか近くにやって来る。
「主人よ、ドレークから南城門付近の情報が届きました。どうやら、大半の魔物達は西の海側方面へと向かっているようです」
「西の海方面…?こちらの騒ぎが伝わって東のこっちに向かうなら話は分かるんだけど、港方面になんかあったかなあ。まあ、南城門の魔物が少なくなるなら攻略しやすいか。よし、このまま予定通りに東城門を攻めて南城門へいきドレークと合流しよう」
「承知致しました。それとヤエが魔物の跡をつけ港方面に偵察に行くと報告が今入りました」
「分かったよ、ヤエなら問題ないから任せよう」
方針は当初と変わらず、東城門を攻めに行くが魔物は下級種のみ500体程しかおらず、問題なく確保する事に成功する。
そこからすぐに南城門へと急ぎ、そして南城門でドレークとエルジュの2人と合流する事になるのだが、そこにはあり得ない光景が待ち受けていた。
「おいおい…。2人だけでこんな数を倒しちまったのかよ!?」
「うひぃ…上級種はさすがにいないっすよね?」
南城門付近には、ドレークとエルジュに倒された魔物が1000体程地に伏せていた。そして上級種や中級種も少ないが、確認することが出来る。もうこの二人だけで良いんじゃないか?そう思える程圧巻されてしまう。
「ご苦労様、2人とも。西の港方面に魔物は行ったと聞いていたけど、2人でこの数を倒すなんてさすがだね」
「オ、オレとアイクも本気だせばこの位なんとかなるよな!?」
「意地を張るのはやめて下さい、普通に無理ですよ。中級種、上級種もいるんですよ」
バーモスがムキになって対抗するが、ララシャに宥められる。ただ、バーモスも強い部類に入るため下級種なら50体はいけるのではないか。ただし、上級種が1体でもいれば話は変わるのだが。
「主人よ、この程度の魔物であれば容易い事です」
自分が休眠している間に何かあったのだろうか?なんとなく、以前より戦闘力が上がっている様な気がする。
「容易い事ではないっすよね…?」
「軽く確認しましたが上級種は約50体程おりましたかな」
エルジュの言葉に皆は驚きを隠せないようで、さすがのバーモスでさえ空いた口が塞がらない様だ。
(なかなかやるね)
「さすがドレークとエルジュだ。ポポも喜んでいるし僕も誇らしいよ。これで、マガラカにある3つの城門は制圧出来た訳だけど、西にある港について何か分かった事はある?」
「ヤエからはまだ追跡中との事で、進展はありません」
「ふむ、ラズーシャこれからどうする?」
「そうですね…。こちらも、ヤエ殿の跡を追いかけましょう!何か魔物達が集まる原因があるはずです」
「そうだね。魔物はまだ10000体位はいる計算になるから油断しないで行こう」
そして、ヤドリギで栄養を回収しながら木人を次々と呼び出し防衛任務に当たらせる。さすがに、数が多いので半分程で切り上げてヤエの跡を追う様に西へと移動していく。
「しかし、胸糞悪くなるけどやっぱり魔物はオレら人類を食べているんだな…、知ってはいたが実際現場を見てみるとムカつくぜ」
バーモスが言う様に、魔物の死体を栄養に変えてる間に手が空いてるもので、生き残っている者がいないか確認したのだが家の中には人が食べられた形跡が残っていた。そのためか今の所生き残りは一人もいない状態である。もしかしたら、何人かは生き残りがいるかもしれないという淡い希望は、跡形もなく消え去るのだった。
「ヤエから緊急の連絡がありました。どうやら魔物達はクラーケンと戦っている様です」
その報告に、周りは幾分楽観的な気持ちになる。このままいけば漁夫の利を得て、こちらの被害も少なくなるに違いないと。
誰もが思っていた、その時までは…。
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