第55話 黄昏時のゆく末は
ウラゼーが聖樹国からシーアルバ首都への往復を6日でやり遂げた。竜眼をあげたとはいえ、なかなか侮れない。そして大提督ネランから港湾都市マガラカ奪還作戦の発令が承認されたのだ。
「ぺぺ様、大提督ネラン様より一枚の羊皮紙を預かっております」
ウラゼーにお礼を言うが、羊皮紙に書いてある文字が分からないためアーバレスに渡す。眷属としては、武力があまり無いがその分知力に長けているため、言語や文字もかなり出来る。そしてアーバレスは渡した羊皮紙を軽く
「シーアルバのネラン殿が記入された内容としましては3つになります。1つ目は港湾都市マガラカの奪還作戦を承認する事。2つ目はこの奪還作戦にはシーアルバの戦力は当てに出来ない事。3つ目は、作戦成功時は港湾都市マガラカ領土半分を割譲を認める事、以上になります」
どうやら、シーアルバからの援軍は見込めない様だ。出来れば協力して、事にあたりたいのだけど仕方ない。聖樹国を防衛する戦力は残しておかないといけないが、こちらには戦力増強を成し遂げたエルフ達もいるわけだからなんとかなるだろう。
ただ、マガラカにいる魔物の規模を眷属であるヤエに偵察に行って貰っている。女王ラズーシャ救出にも、一役買ってくれた事もあり敵上偵察や救出作戦では一番活躍してくれる存在だ。また、ヤエは現在もマガラカ付近を偵察してくれており、上級眷属同士ならタイムラグが一切ない念話も出来るため情報は逐次更新される。
「ありがとう。それと偵察中のヤエからは追加の情報は何か来てる?」
「現在は特にありません。マガラカからシーアルバ首都への
「マガラカにいる魔物は12000か…。時間をかけると、シーアルバを攻めている魔物の軍勢に挟撃される心配があるから時間との戦いになるな。ウラゼー殿から聞いていたクラーケンはいまのところ大丈夫か」
今回は、魔物がシーアルバに釘付けなのを利用し、出来るだけ不意打ちを仕掛ける作戦でいく。新設されたエルフ連隊1000人は女王ラズーシャが選んだ精鋭であるため、かなり期待できる。傭兵からは
「奪還作戦の編成は、エルフ連隊1000人、
「御意。出発は明日にされますか?」
「んー傭兵団の準備次第では、直ぐにでも出発しよう。あと傭兵団の報酬は、色をつけてマガラカの土地とお金に食糧をあげることにしよう。どうせマガラカの土地なんて貰っても、うちらじゃそんなに使いきれないし」
「それであれば傭兵達も、喜んで食い付くと思われます。奴らは報酬がないと動きませんので」
こうして、マガラカ奪還作戦は発令される事になる。そして傭兵組合へすぐに情報は拡散され、腕利きの傭兵達が集合する事になる。そして全員が揃ったのは、景色がオレンジ色に染まりつつある黄昏時であった。
「皆、注目せよ!これから、港湾都市マガラカ奪還作戦を遂行する。今までの私達は誇りを失い地を這って生きてきたが、フォレストドラゴンであられるぺぺ様、世界樹であらせられるポポ様に誇りを再び取り戻して頂けた!このエルフの誇りに賭け、必ずこの作戦を皆で成功させるぞ!!!」
以前とはまるで別の生き物の如く、覇気に満ち溢れたエルフの女王ラズーシャが演説をしており、周りの皆はその空気に当てられ熱狂の渦を巻いている。
「本当に別人のように復活されて、良かったです。3年間…、エルフ達長寿種族からすると短いはずなのですが、あの時は失意のためか時間の流れがかなり遅く感じられました」
少し離れた場所でまわりの熱狂にはあてられず、冷静に受け答えをしている傭兵組合長のララシャだが、内心かなり喜んでいるみたいだ。
「ララシャも奪還作戦に参加するんだ?」
「はい。目一杯魔法を使える機会はなかなかありませんし、それに私達エルフの皆は活躍出来るこの日を、今か今かと待ち望んでいたんです。少しでも恩を返せる様に、また二度と誇りを失わぬように」
普段クールなララシャが熱意を秘めた思いを言葉にのせる。今回の奪還作戦も、エルフの女王自ら是非参加させて欲しいと言い出したのだ。
「あ、それと…団長の尻拭いもあります」
「あはははは!それは言ってやるなって!俺も最初大将のドラゴン姿を見た時は、マジでビビッたんだぜ?話を聞いてなかったら普通は逃げるだろーからザルバは許してやれって」
「いやあ、オレなんてちびっちゃったっすよ!あれは反則っすよー!」
ララシャとの会話に、暁炎の夜明け副団長バーモスと序列4位のライクが急に潜り込んで来る。その内容から、周りからは笑い声と同意する声も上がってくる。そして何故か大将呼びされているのは気にしない。
「皆には期待しているよ。報酬もかなり奮発したし、さらに活躍次第ではボーナスもでるかも、後はザルバの事も水に流してあげるとしよう」
そう言うと、周りはさらにやる気になったようだ。傭兵達はエルフみたいに義理だけでは動かない。しっかりと利益を提供し持ちつ持たれつが大事なのだ。
そして軽く談笑をしながら、緊張も解し漸くマガラカへと出発の時を迎えるのであった。
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