第51話 再燃のエルフ
エルフ達3人に今まで隠していた真実を話すと、やはり度肝を抜かれた様に驚く。
「黙っていて済まなかったね、最初に人型で現れたのも世界樹であるポポが、卵時代に寄生して魔族に見つからない様にと身体をそう作り替えたんだ。それからはずっと人型で暮らしていたけど、ついこの間帝国に行った時に巨大な魔物と遭遇した際にポポが怒って、フォレストドラゴンである本来の姿に戻ったって訳なんだ」
今までの経緯を説明はしたものの、まだ信じられないのかはたまた理解が追いつかないのか、狐につままれたような表情をする3人である。
「まあ、急にこんな話を言われてもなかなか信じられないというのも分かるんだけど、世界樹であるポポがとうとう世界樹の実を生み出せると言っていてね。女王であるラズーシャが食べるとエルフのみんながまた魔法を使えるようになるんでしょ?」
「は、はい…。確かに私が世界樹の実を食べるとエルフ全員が魔法に使えます。フォレストドラゴンであられるぺぺ様が、嘘を言われるとは思わないのですが。ただ世界樹は魔族のせいで燃え尽きてしまいましたので、形すら残っておりませんが…」
「まあね。世界樹が無事だったのは奇跡だったね。母親がどうやら核部分を取り出し卵に寄生させたって本人が言っているんだ。まあフォレストドラゴンしか出来ないみたい。だから取り敢えずは、エルフ全員をここに集めて皆にもわかる様にして、魔法の再燃と行こうじゃないか。勿論、外に出ているエルフ達もいるから10日位後に一応予定しておこうかな」
「承知致しました…」
どうやら、ラズーシャはまだどこか夢見心地なのか、心ここにあらずといった感じに見られフラフラと退出していき、その後ろを追う様にネイシャとララシャの2人も退出していく。
「そういえば、世界樹の実って結構大きいのかな?」
(まだまだ不完全だからかなり小さい、効能もまだ弱いと思う)
さすがに千年以上生きてきた世界樹の頃に比べると、現状だとそれは仕方ない。少しでも魔法が使える様になれば、ラズーシャも元気になるだろう。
直ぐに各地にいるエルフへと伝令が走り、10日までに全エルフ約1500人が聖樹国へと集まるのであった。そして世界樹の実を授ける日が漸くやってくる。
「いやあ、晴れて良かったね。雨だったら延期しようかと思ってたんだけど」
「それはエルフ達にとっては生殺しというものです。皆、もう魔法が使えないと諦めていたものですから。ただ私が一番この日を待ち望んでいたのは間違いありませんが」
エルフの女王ラズーシャはそう言うと、後ろを振り返る。その先には、全エルフ約1500人が集合したおかげで所狭しとギュウギュウになりながらも、今か今かと待ち望んでいた。
「確かにね。わざわざみんな集まってくれたんだから、あまり待たせちゃ行けないから早速始めよう」
「畏まりました。皆!今からフォレストドラゴンであられるぺぺ様から、世界樹の実拝受の儀を執り行う!皆静かに待つ様に」
今まで聞いたことの無い覇気に満ちた声を響かせると、全てのエルフはこちらを注視し静かになる。それを確認し終えると、こちらも準備に取り掛かる。
「んじゃポポ、後は任せるよ」
(分かった。もちろんぺぺにも協力してもらう。前に貯めていた巨大な魔物の栄養も全て使うのと、身体の部分からも貰うから力が抜けて小さくなると思う)
ポポがそう言うや否や、身体全体がポカポカと暖かくなってくる。さらに、このドラゴン姿では感じなかった空腹感がギュルギュルと突如襲ってくる。周りには草や木が生えては枯れを繰り返し辺りは摩訶不思議な空間となる。それを10分ほど繰り返していただろうか、自分の身体がどんどん小さくなっていくのが目線の高さが変わることで分かる。周りにいるものはハラハラしながらこちらを見守ってくれている。そして疲労感が身体全体に出始めた時、ポポから
(準備出来た。右手を出してあげて)
ポポの言葉に従い、右手をラズーシャの近くまで伸ばす。すると爪の先から、そろりそろりと小さな世界樹の枝が生えだすとピンポン玉位の、緑色と青色に土色の3種のグラデーションがかかった実がなる。どうやらこれが世界樹の実らしい。
「今は力が弱いから世界樹の実が小さいらしいけど、さあどうぞ」
ラズーシャはごくりと唾を飲み込むと、ゆっくりと実に近づいてゆく、そして掌中の珠のように大切に触ると簡単に世界樹の実を取ることが出来た様だ。その瞬間世界樹の枝はすぐに身体の中に戻っていく。
ラズーシャは手取った世界樹の実を皆に見せるように高く掲げる。すると全エルフから大喝采が巻き起こり、空気が震えるのが感じられた。
「もう二度と大切な物を奪われぬ様に、我が命に変えてもお守りいたします!」
ラズーシャは皆に宣誓をすると、大事そうに持っていた世界樹の実を一口で食べる。すると予想外な事にラズーシャや他のエルフ達は、先程の熱狂はどこに行ったのかポロポロと泣き出してしまう。
「繋がりが、、、帰ってきた…」
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