第49話 青空会談

 シーアルバとの会談を受理してから6日後の昼過ぎ、こちらの傭兵団と護衛を多数引き 連れシーアルバ御一行は到着する事となる。やはり道中の安全を確保するためか、シーアルバからは予想以上の大所帯が見受けられるが無事に着いて良かった。最近では魔物もかなり活発に行動しているため、木人達を聖樹国周辺へと警備任務につかせているが、それでも油断出来ない程に蔓延はびこっている。

 そして、今日は執政官のアーバレスとエルフの女王らでシーアルバの歓迎式をしているらしい。残念ながら言葉は解らないのだが優秀な人材がいるそうで、翻訳として着いてきたのか分からないが問題無さそうで良かった。

 ただ聖樹国に着いてからは色々と聖樹国内を案内したそうだが、シーアルバの人らはかなり驚いた様で、門番には6m程のギガース級木人がいたり都市内からそびえ立つ大楠の木を見ると、大抵の人は驚愕し普通の国ではない事を理解する。また都市内のエルフ区域では、緑豊かな土地になっており様々な野菜や果物が旺盛おうせいに実っており、食べるものにも困らない。普通は植物を育てる時には肥料や微生物等色々気にしないといけないのだが、フォレストドラゴンと世界樹がいればまさにチートと言えるだろう。現に、他国では少しずつ作物の収穫が落ちてきているそうなので聖樹国がいかに特殊か分かる。

 

 そんなこんなで会談の日である次の日を迎える事になるが、天気も快晴で季節的には夏も終わりに差し掛かり少し暑さもマシになってくる。しかし、ドラゴン姿での他国との会談はこちらも初めてなので、驚かせないか心配だがまあなんとかなるだろう。


 (基本的にドラゴンは人類と共存して来なかったから、驚いても仕方ない。エルフはまだ良いんだけど)


 心配した気持ちが寄生している世界樹のポポに伝わったのか、頭の中に呟いてくる。


 「まあね、事前に知らされてなかったらザルバローレ達みたいに逃げちゃっても仕方ないかな。ファイアドラゴンの行いが、人類に対してそう言う風に植え付けてしまったのだからね」


 あの時は仕方なかったとは言え、ザルバローレ達を恐怖に陥れ逃げ出させてしまったのは悔やまれる。今は帝国で元気にやっているだろうか?

 別離してしまった事を考えていたら、どうやら会談の時間がもうすぐらしい。側に控えていたナギから教えてもらう。そして、会談場所である棲家前には広く場所が取られており、ドラゴンだけじゃなく人であれば500人は優に入れるようになっている。

 それからほんの数分経つと、アーバレス達に連れられて女性と男性が一人ずつ付いてくる。女性は意外と背が高く若く見え、オレンジ色の髪は焼けた肌に良く似合っている。隣の男性は黒髪で肌は焼けているが見た目や仕草から知性が感じられる。


 「主人よ、お待たせしました。こちらがシーアルバの大提督であるネラン=シーアルバ殿とマイダナ商会のウラゼー殿になります」


 「ああ、ありがとう。シーアルバから良く来てくれたね、歓迎するよ。まあおもてなしという訳ではないけど、これをあげよう」


 翻訳を間に挟むとテンポも遅れ本音も聞けないため、いつもの竜眼を手から生やしナギに取って貰い2人に渡す。エルフの女王が翻訳してくれるが、面白い事に反応が分かれる。シーアルバのトップであるネランは、竜眼を受け取ると興味津々といった形で、一通り眺めると一口で食べる。


 「う、うまいぞおおお!?なんなんだこれは!?身体も凄く調子が良い!これが伝説の世界樹の実なのか!?」


 勢いよく食べたネランとは反対に、ウラゼーは慎重に竜眼を観察していたがネランの雄叫びに驚かされ、毒はないと見てゆっくりと食べ出す。ネランみたいに言葉は出なかったが、目を見開き驚いている様子が伺える。大抵の人は食べると何か言ってしまうのだが、ウラゼーという商人はなかなかやるようだ。


 「喜んで貰えたなら何より、それは世界樹の実ではなく竜眼。中程度の治療効果、滋養強壮に、美味しいのは勿論ドラゴンの言葉が分かるようになる」


 「た、確かに先程は言葉が理解できなかったのに分かる様になっている!こんなに凄い食べ物は初めて食べた…。ウラゼーもどうだ?」


 「はい…。西大陸にもこのような果物?でしょうか、食べた事はありませんし見た事もありません」


 どうやらこのウラゼーという男性は西大陸出身なようで、そのためかこの会談にも着いて来たのだろうか。


 「西大陸とは、東大陸とは結構違うかい?ドラゴンもいたりはしないかな」


 「そうですね…。西大陸はここ東大陸より工業が盛んで、また宗教国家や王国等様々な国もあります、魔物はいますがドラゴンは寡聞にして聞いた事もありません。またこちらで使われている魔法は西大陸では使えるものはおりません」


 なるほど、西大陸と東大陸は結構違う所が多く見られるようだ。そしてドラゴンがいないと言うことは非常に残念だ。絶滅危惧種であるドラゴンには将来的に嫁が欲しくなるのだが、難しそうだ。


 色々と興味深い話も聞けて満足しているとネランから突拍子の無い発言が出る。


 「ドラゴンの素材は高値で売れると聞いているのだが、また血を飲むと不老になるという伝説があるのだが本当だろうか?」


 ネランの発言直後、眷属達から溢れんばかりの殺気が撒き散らされ、今にも襲いかかってしまうような様子が見られたため、今回は直ぐに辞めさせられたのだが、2人ともガクガクと震え上がりこれ以上会談を継続することが出来なくなってしまうのだった。

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