第46話 海洋国家シーアルバ
なんとか聖樹国まで辿り着いてから、10日ほどの日が経った後のこと。魔物の被害より自分で破壊してしまった家や道路を片し、突貫工事にてある程度形になってきた。その間には特に魔物の攻勢が強まったりはせずに、緩やかな時間を過すことが出来た。しかしそんな時に、今まで商人同士でしかやり取りが無かった、聖樹国から西に位置するシーアルバから商人ツテで、正式な外交官が是非来訪したいと打診があった。
元々シーアルバは海賊生業を主にしていた様だが、いつからか海運業にシフトし西大陸との貿易やこちらの東大陸と貿易にて栄えている国だ。だが、こちらとは商人同士としてのやり取りしかして来なかったため、こちらからの接触は無かったが、シーアルバの方からわざわざ来たいようだ。最初の頃は国と言っても、かなり小さい部類だったため様子見をしていたと思われるが、しかし
そのシーアルバについてはあまり知らなかったため、会議を開き意見を募る。もちろん会議と言っても、ドラゴンの体が大きいため棲家の前で青空会議だ。そして会議を仕切るのは上級木人のアーバレスになる。
「ではこれからシーアルバについての会議を始めさせて頂きます。事の発端は、シーアルバの商人より外交官を派遣し
「まあ、帝国とは大分隔たりが出来たと言うか、行く道程が魔物のせいでかなり戦力がないと危なくなったからねぇ。それを考えるとシーアルバと交流を深めても悪くはないと思うけど皆はどう思う?」
ゆっくりと頭を下に向け、周りを見渡す。ドラゴンの大きな体では、2Mもあるドレークすら見下ろす事になる程だ。今回はエルフ側からは、女王のラズーシャとその侍女、さらにNo2のネイシャと傭兵組合長を務めるララシャの4人だ。
「私は問題ないかと思います。シーアルバの商人とは傭兵組合にてやり取りした事もありました。利に目敏いというのでしょうか?世界の情勢についても、なかなか敏感な様ですしこちらが知らない情報もあるでしょうから、交換できるならこちらとしても利があるように思えます」
付き合いの長いララシャは思った事をはっきり言える性格なため有難い。他のエルフ達はまだ慣れていないか、ネイシャは女王を立てているのか今日は大人しい。他の上級木人達も同様にしているが、そもそもシーアルバにはそこまで興味がないのか…そんな風に考えていると、普段あまり言葉を発しないヤエから発言が出る。
「シーアルバの件ですが、元々海賊の成り立ちからか海の戦いには強いそうですが陸上戦では帝国には劣る様です。また最近調べた情報では、海の魔物が暴れているとも聞いており、さらに悪いことに国の地形の関係から北から南に長く国土が海に面していることもあり、帝国の北側まで国が続いております。つまりラスマータ王都が落ちた今、シーアルバも陸の魔物からの脅威にさらされている可能性もあるかと」
「ふうむ…。それだと意外とシーアルバも余裕は無さそうだなあ。そういう事ならヤエはそのまま情報を調べる感じでお願い」
「御意。それとラスマータ王都の避難民ですが、他の街とどうやらシーアルバにもかなりの数の避難民が押し寄せています。受け入れられている者もいれば、当たり前ですが奴隷にされたり、殺されている者も多数いるみたいです。そのため、いずれここ聖樹国にも大量の避難民が押し寄せる危険性があります。そのため事前に避難民をどうするかを決めておいた方が良いかと愚考致します」
万単位の避難民を受け入れられる所はもはやなかなか無い。前は出来るだけ避難民を受け入れようと考えていたけれど、ラスマータ王都の悲劇を聞いてからはそんな考えは無くなってしまった。あれは、ラスマータが凄かったのか馬鹿だったのか意見は分かれるが、あまりにも多い数の避難民は毒になる…。
「ヤエの言う通りだ。そしてこれから避難民の対応だけど、現在工事中の
「元々帝国軍に預けていた獣人5000人を住まわせる予定でしたので、無理をして8000人程でしょうか?」
「ふうむ…。それなら避難民を受け入れたいって思う人はいる?」
一気に場の雰囲気が静まりだす。どうやら誰も避難民について配慮したいとは思っていないようだ。つまり、気にかかっていたのは自分だけという事になる。
「…皆の意見は分かった。では取り敢えず避難民の受け入れは今の所は無しでいく。ただ帝国軍に預かって貰っている獣人達は、これは最初の計画通りに進めるからそのつもりでお願いね」
そして皆の賛同を経て、会議は終わる事になる。シーアルバの商人には了承の旨を伝えると早い事に、6日後にはシーアルバの外交官が聖樹国に到着するのであった。
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