第45話 ドラゴンロード

 聖樹国の東門周りに到着すると予想外のことに、獣人達やエルフにアーバレスにヤエと見知らぬエルフ2人が待っていた。そして皆からすぐに大歓声が巻き起こる。


 「おかえりなさいませ、主人よ。また覚醒の時を越え偉大なるお姿を拝謁出来ました事、至極光栄にございます」


 「ただいま、アーバレス。こんなに大きくなってしまったから、皆を驚かせてしまうと思っていたんだけど、喜んで貰えてくれて良かったよ」


 聖樹国の執政官として働くアーバレスとは和かな雰囲気で話をするのだが、頭の中では理解が追いついていなかった。自分の予想としては、エルフ達はまだしも獣人達の大半は逃げ出すと思っていたのだが、そんな事はなく熱狂がここまで伝わって来る。

 アーバレスの事だからプロパガンダとして、精霊とドラゴンを上手く使ったに違いない。だがそのおかげで、これからの都市運営は上手く行きそうだ。

 そんな中、見知らぬエルフが挨拶のため一歩踏み出してくる。


 「初めてお目に叶う事を誇りに思います、フォレストドラゴン様。私はエルフ族を纏める女王ラズーシャと申します。ラスマータ王都にてヤエ殿に、侍女と共に助けられました。魔法が使えない身ではありますが、末席に加えさせて頂きたく存じます」


 「ラスマータ王都では大変だったそうだね。こちらではネイシャが手伝ってくれてるから有難いよ、またラズーシャもお願いするから宜しく頼む」


 「畏まりました」


 女王であるラズーシャはやや覇気のなさはあるものの、今の所特に問題はなさそうだ。エルフのNo2であるネイシャには、頑張って貰っていたためラズーシャにも少し頑張ってもらう事になる。

 挨拶も大体終わり、気になっていた2体の巨大な魔物に目をやると、その周りには倒された木人達も並べられている。 巨大な魔物は大分痛めつけられていたようで、ボロボロになっており戦いの凄まじさが良くわかる。


 「大分激しい戦いだったんだね、被害の方は大体聞いてるけどみんな大丈夫だった?」


 「なかなかしぶとい魔物でございました。倒れても起き上がり、木人達は3割ほどやられてしまいまして申し訳ありません。接近戦は木人達が担当しましたので、獣人達やエルフには殆ど被害はありません」


 「それなら大丈夫さ、それ」


 こちらの掛け声と同時に、倒された木人達は次々と起き上がり隊列を成していく。住民達はその光景を見てどよめきがあがり、さすがフォレストドラゴン様だという声も上がり出す。

 そして倒された巨大な魔物の側に行くと、すぐに栄養を吸収し保存する。その光景もやはり見慣れぬものだったためか、驚嘆の声があちこちから湧き上がる。ある種のパフォーマンスとしてフォレストドラゴンの良さを少しはアピール出来た様だ。

 ただ、これから都市内に凱旋といきたい所なのだが、都市内に入るには東城門が邪魔で入れないのである。


 (壊して入ればいいんじゃない?)


 世界樹のポポが言うように、壊して入らなければならないのは確かだが、何というか勿体無い部分もある。さらに中の都市内も、道路や民家等を大幅に見直さなくてはいけない。歩く度にズシンズシンと響き渡るため、住民達とはある程度離さなくては可哀そうである。

 そんなこちらの悩みを汲み取ったのかアーバレスが、すぐに助言をくれる。


 「これは失礼致しました。こちらの城門ですがすぐに破壊して頂いて問題ございません。周り一体から棲家とされておられます御殿までは、隔離する事が決定されており、区画整理も進めておりますのでどうぞご自由にお通りくださいますよう」


 つまりアーバレスが言うには、このまま城門を破壊しながら通れということなんだろうか…。まあ、実際破壊しながら通れば採寸が分かるとは思うのだが、なかなか凄いことを言う。少し呆れてしまったものの、このまま待っているわけにもいかず一歩一歩と城門まで歩いていき、目の前まで着くと仁王立ちになり右手を叩きつける、すると轟音が鳴り響き城門は簡単に破壊されてしまった。

 そんな光景を見てしまったなら、普通は泣き叫んだりするのだろうが住民は大歓声を上げて喜んでいる。普通に考えれば、人海戦術でやればもっと後片付けとか楽になりそうなのだが、これもアーバレスの仕込なのだろうか。

 そんな事を考えながら、のしのしと壊された城門を通り抜け道路を通るのだが、やはり体格が大き過ぎるため、民家に体や尻尾が当たりメチャクチャになっていく。不思議な事に通った道には、小粋な事に緑がわんさか生えていき、東城門から棲家まではそれ以来ドラゴンロードと呼ばれる事になるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る