第41話 別離

 巨大な魔物をなんとか無事倒す事が出来、そのまま栄養として吸収し終えると予想外の所から声がかかる。まさかエルフのネイシャからフォレストドラゴンかと問われるが、どう答えるか迷っているとポポからアドバイスを貰う。


 (エルフ族はフォレストドラゴンと世界樹と関係があったから、話しても大丈夫。他の種族はちょっと無理かも、ファイアドラゴンの事もあるから)


 確かに以前聞いていた様に、エルフ達は世界樹の実を女王が食べる事により魔法の恩恵が貰えるため、世界樹の守護を担うフォレストドラゴンとも相性が良い。だからエルフ達は問題ないが、このまま聖樹国に帰った場合獣人達は、今回の事のように逃げる可能性が高い。

 そんな事を考えながら、頭の中を整理し終わると不安そうなネイシャの方に向いて話しかける。


 「ネイシャごめん、本当は精霊では無くフォレストドラゴンだったんだ。竜魔戦争で魔族にやられてから、まあ色々あってね…。人型の方が魔族に見つからないと思ったのもあってそうなっていたんだ。まあ信じられないとは思うけど」


 「あーいえ!実は前から懐かしい感じがするなと思ってたんですが、こういう事だったのなら納得出来ます!」


 「この姿は怖く無い?」


 「全く!前のお姿より、雄大で尚且つ凛々しくてよっぽど宜しいかと思います!」


 どうやらありがたい事にネイシャにとってドラゴン姿の方がお気に入りみたいだ。少なくとも怖がらずにいてくれるだけで、良かった。この姿は人間達や獣人達には、かなり刺激が強すぎるため恐怖に陥る。本当は仲良くできれば良いのだけれど根本的に難しい。だから、このまま帝国軍とは別れて、聖樹国に帰るべきかと思案していると、ドレークとエルジュもかなり急いで駆けつけてくる。


 「主人よ!偉大な御尊体になられ終着至極でございます。ナギから報告は聞いておりましたが、御無事で何よりでございます」


 「ああ、ありがとう。まあ周りは散々だけどね。人間達、獣人達は逃げてしまったから。それとそっちの巨大な魔物は大丈夫だった?」


 「ナギの応答が途切れたため、心配しましたが魔物をなんとか行動不能に陥れまして、こちらに急行した次第でございます。巨大な魔物は意外と手強く、また事前に報告がありました魔法も効かないことも確認できました。帝国軍も大分やられ撤退しておりましたが…ただ、あまりあやつらの事は気にしない方が宜しいかと」


 「そっか、そういう事ならここからすぐに移動しよう。この姿を見て攻撃されたらたまったもんじゃない」


 「「「御意」」」


 そして倒れ伏した木人達を簡単に復活させる。ドラゴンの姿になると今まで難しかった事が簡単に出来る様で、今後は人族と獣人達と交流出来なくなる可能性は高いが、出来る事が増えたのは単純に嬉しい。

 だが、辺りには篝火のお陰でまだ見えるのだけど、巨大な魔物との戦闘により時間が少し経ち闇が深くなり始めている。そしてもうこの体には天幕は必要ないのだが、一つだけネイシャ用に回収しすぐにこの場から旅立つ。

 聖樹国への同行者は、上級木人であるドレーク、エルジュ、ナギ、エルフのネイシャ、中級木人400体を連れて行く。


 最終目的地は聖樹国ではあるが、まずはドレーク達が相手をした巨大な魔物の動向が気になるため、そちらに案内をしてもらう。

 暗い闇の中、迷いなくドレークに案内してもらうこと20分ほど経ったであろうか。巨大な魔物を誘導したせいか、少し遠いみたいだが魔物の近くに来ると、暗い中でも漸く姿が見えてくる。

 

 「これは…死んでる?」


 巨大な魔物の周りには、一面水浸しになっており沈みやすい泥っぽさも窺い知れる。恐らくドレークとエルジュで罠を張ったのではないか。だが基本的に罠を張るなんて事はしないためそれ程の強敵だった事が分かる。

 また行動不能と聞いていたのだけど、大きな両足が変な方向を向いておりとても立てそうには見えない。また、生きているかどうかも分からないため、一応聞いてみるがドレークは頭を振る。


 「なかなかにしぶとい奴でして、まだ生きていると思われます」


 「分かった、とりあえず竜毒で仕留めよう」


 ぬかるむ泥状の土に足を取られながら、ゆっくりと歩いていき魔物の近くまで来るとさっきまで死に体だったのが嘘の様に、身体を起こし殴りかかってくる。


 「グガアアアアアアアアッ」


 「ごめんね、栄養になってもらうから安心して死んでおくれ」


 言葉も通じているか分からないが、最後の手向とばかりに話しかける。巨大な魔物は上半身だけを起こし、腰も乗っていない駄々っ子の様なパンチを繰り出してくるが怖くも無く、軽い衝撃を感じながらそのまま首筋に竜毒を付着した爪を差し込む。その瞬間魔物の身体は、ビクンビクンと身体を震わせると巨大な魔物は動かなくなるのであった。

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