第28話 新生傭兵団
ザルバローレが聖樹国にやって来てからは驚きの連続だった。元々は、旧城塞都市カルメンで傭兵稼業を営みその中でも上の方に入るA級に認められていたが、
しかし聖樹国はまだ出来たばかりの国ではあるが、受けられる恩恵が別格であった。勿論条件はあるが四肢欠損を治せるなんて、他の大陸に行ってもないはずだ。歴戦の傭兵でも魔物との戦いで、身体を欠損し引退するものも多い。
ララシャが聖樹国の傭兵組合のマスターになり、腕も綺麗に生えた事から驚愕したが事情を聞くと、すぐに仲間をラスマータ王国に蜻蛉返りさせ引退した仲間を引き込むのであった。
そうして、傭兵団元暁月夜の水平線と元炎天の流星は聖樹国で合併し、新しい傭兵団として
そして団長はザルバローレ、副団長にはバーモスがつく事になる。
「いやあ、しかしこの国は良い意味で変わっているな。飯は美味いし、他国じゃ貴重な小麦粉を使った柔らかい白パンまで食べられる。それに比べて王都は、かなり大変な事になっているだろうし。珍しいこんな馬車の様な物も貸してくれるとは本当に来てよかった」
竜魔の森へと、
「こんな便利な物は以前にはなかったんだがな、だか聖樹国に来て良かっただろ?なんせ精霊様がいるおかげで、食糧は安定しているし作物の育ちも凄い。他国に必要な物がこの国には揃っている、まあ塩はシーアルバに頼っているみたいだが」
バーモスから話しかけられたザルバローレは、後ろを見ながら
水牛をさらに大きくしたような木人らしく戦う力はないが、物を引いたりする力が強いため馬車を引かせているが、その引いてる馬車も特別製だ。魔物を狩る傭兵団には、無料で貸し出される事になったそうだ。
今回も動物や魔物を求めて竜魔の森へと探索に来ており、食べられない魔物は傭兵組合に納品し肉は自分達で食べても良い。この国では、他国では金と同じ価値がある胡椒を魔物と交換してくれたり、様々な物が物々交換にてとりおこなわれている。それはここでしか食べられない貴重な物も多く、珍しい野菜に果物にドライフルーツ等もあり、シーアルバへ行く商人がここで仕入れて護衛に傭兵団がついて行く事も増えて来た。なんせ今の世界情勢もあり食糧が足りていないので、どこも喉から手が出るほど、特に穀物が欲しいはずだ。
精霊様の凄いところは、季節外れの作物ですら育てられると言う。成長速度もあり得ない程に早く。果物に至っては、何回も実をつける。そのため今いる住民も飢えることなくシーアルバにも輸出出来るほどらしい。
今商いが盛んなシーアルバ行きへは、街道もあるが魔物がまだまだいるため護衛は必須だ。そのため今回の竜魔の森へは10名ほどで来ており、他は護衛任務に回している。
勿論、シーアルバから商いにやってくる商人も多く、こちらでは塩や魚の干物の価値が高いので上手く商いが行われていると精霊様から聞いている。
ザルバローレ達が竜魔の森外縁部に来ると、木こりと思わしき獣人達が木を切り倒しているのが見え、軽く挨拶をしながら奥へと進んでいく。
竜魔の森の動物は、固有の進化を遂げたのか他では見られない大きな動物もおり、気性も荒いために弱い魔物よりよっぽどタチが悪い。
先を進む斥候から合図があり、奥へと進むと巨大な熊の
悟られないように、事前に決めていたハンドサインで団員のエルフ達が矢を放つ。
「グモォ!?」
矢は体内にしっかりと刺さるが、皮下脂肪が厚いせいか思ったよりダメージは無く、驚かせた程度ですぐにこちらに気付き、咆哮を上げながら突進してくる。
2体いるうち特に自分より大きな熊をザルバローレは土魔法で強化し両手剣で受け止めるが、あまりにも強い衝撃を殺しきれず後ろへ押されてしまう。
「なかなかの力強さだが、やはり獣か」
だが、慣れたもので勢いが止まるとすぐさま体制を立て直し、横っ腹に両手剣を振り抜き骨が折れるような音と共に地に伏せる。
もう片方の熊は他の団員達が陽動している隙に、バーモスが魔法を使わずに上手く頭を切り飛ばしてしまうのであった。
「こりゃ、C級位だと結構きついかもな。多分死人がでるぜ」
余裕綽々と熊を屠ったバーモスだったが、なかなか侮れない熊だったと呟く。
「竜魔の森は、3年前からより強い動物や魔物が増えているからなあ。初心者であるD級やC級には熊が出たら逃げろとしか良いようがないな」
傭兵には階級が一番下からD級、C級、B級、A級、特A級、S級とあり団長の強さや魔法使いの数、団員の人数を総合的に判断して与えられる。
そしてザルバローレも、バーモスと同意見らしく竜魔の森は初心者にはきついと判断する。
その後、血抜きした大きな熊2体を馬車に乗せてほくほく顔で、奥へと進み魔物をさらに狩るのであった。
今回の探索では上級種はおらず、下級種と中級種を数体ほどを難なく倒し、馬車が8割ほど埋まった事もあり帰路についた。
そうして充実しつつ、安定した日々を過ごしていると本格的な夏を迎える事となる。
そして以前帝国と話をしていた、調印式についての使者が到着するのであった。
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