第27話 世界樹の実
「確か世界樹の実は、エルフが食べると魔法が使えるようになるって話だったよね?」
(そうらしい、でもまだまだ小さい実しか出来ない)
それでも魔法が使えるのならエルフの戦力はかなり上がるだろう、だが問題もある。森の精霊として覚えられているのに急に世界樹の実を渡すとどうなるか?
実は森の精霊ではなく、フォレストドラゴンと世界樹でした。それで問題が済めば良いのだが、獣人達の事もあるし、判断が難しい。
「実を食べた本人だけ、魔法を使えるで合ってる?」
(いや、エルフの女王に渡していたから多分みんな使えるかも。ただ昔より凄く力が弱いから今はわからない)
もしエルフの女王の役目だとしたら、今は世界樹の実はまだ隠しておいた方が良い。エルフ全員が魔法を使えるようになれば、かなりの戦力になるのは間違いない。ただ世界樹としての辻褄合わせも考えておかねばならないし、いずれは本当のことを言わなくてはならないかもしれない。
なんにしても着実に世界樹の力は強くなって来ている。しかし懸念も多いにあり魔物の勢力拡大や、魔族の動向も気になる。今回のマーバイン王国の件もあり、他国や自国が魔物に対して対処出来なければこれからはもっと厳しい戦いになるだろう。現にラスマータ王国の戦力は余り当てにできないので、これから友好を深めるには、少し遠くはあるけれど頼れるのは今の所帝国しかいない。第3皇女ことサナリーとも、この前の遠征で少しは友好が築けているためこの路線で関係を向上させていこうと心に決めた。
それからは日常はゆっくりと過ぎ去り、上級木人のユエとアーバレスを作り出してからは、エルフと獣人との都市運営は大きな問題も起こらず順調に滑り出す。
その後20日程経ち、気温が徐々に高くなり夏を迎えるそんな中、都市外にて上級木人のアーバレスから城壁工事の進捗状態を聞いていると、懐かしい顔を見る事になるのだった。
「おーい!精霊様!」
「やあ、ザルバローレ久しぶりだね」
大きな声で話しかけて来たのは、以前共闘もした事もあり色々と縁がある傭兵団暁月夜の水平線の団長ことザルバローレであった。さらに、その後ろには違う傭兵団の列がなす。
「精霊様御無沙汰しております、以前マーバイン王都戦にて助けて頂きました、傭兵団炎天の流星団長のバーモスです」
真っ赤な髪色は傭兵団の名前を彷彿とさせる。以前の戦いの時に、倒れているところを竜眼にて回復させた所縁が出来たのだ。だがほとんど会話らしい事はしていないため殆ど初対面に近い。
「いえいえ、お久しぶりです。しかしザルバローレはともかく、バーモスさんはこの様な辺境にどうして?」
「いやあ…。実はラスマータ王国がかなりきな臭い事になってきまして。避難民の流入もあり食糧事情もかなり悪化していまして、前からザルバが傭兵団を解散してエルフの国に行くと言ってましたので、私も傭兵団を解散してついて来ました。あの時、精霊様に助けて貰えなければ死んでいましたので、これは運命だと思いまして」
バーモスは簡単に言ってはいるが、傭兵団を解散するなら傭兵組合や国が止めるのではないかと考えていると、泥舟は御免だと無理やり解散をしてきたらしい。ラスマータ王国はそんなにも不味い状況らしい。
だが強い戦力が増えるなら嬉しいのだが、どうやら使う魔法は傭兵団の名を冠した火魔法らしく、火を飛ばす事は出来ないが武器に纏わせて燃やす事が出来るらしい。ステータス的に言えば火魔法Lv2位だろうか。
「しかし凄い大規模な拡張工事をしているんだな」
ザルバローレは、都市拡張のために働いている木人やエルフ、獣人をみて
そのまま、ある程度視察を終えると彼らを都市へと案内するために城門へ向かう。城門前には、武装した獣人とオーガ級木人、ギガース級木人がおり来訪者を一瞥する。ギガース級は体調が6mほどあるため、初めて見る人は驚いて腰を抜かす人もいるらしい。
「精霊様、お疲れ様です!そちらの方はお客人でしょうか?」
「ありがとう、ラスマータでの知り合いでね通して貰うよ」
入国する前に本来ならここで他国の人は、銀貨1枚を徴収される。ただし、他国の銀貨であればなんでも良い。まだ貨幣がないこの国では、仕方のない事だった。
そして城門内へ入り目的地である傭兵組合へ到着する。昔からここの傭兵組合にはお世話になっていた2人は建物を見てしみじみする。
「ここはやっぱりそのままなんだな」
ザルバローレが言う通り、以前と同じように建物をそのまま使っている。ザルバは慣れた手つきで傭兵組合の扉を力強くあけ、中の人物を見て驚嘆する。
「ララシャ!久しぶりだな。会えてよかった…ってお前!腕が生えてるじゃねぇか!」
やはりこの世界では四肢欠損を治す事は不可能らしく、周りにいる傭兵達も騒ぎだし喧騒に包まれるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます