第23話 遥か遠き理想国
帝国との会談も上々に幕を閉じ、これからは他国との貿易も見据えて動いていかなければならない。ただこちらは貨幣というものがないから、取引先の貨幣価値を知らないといけないため、他国に明るい商人から色々聞かないといけない。また自国領内では物物交換で大丈夫だろう。
だが大きく変わるのは、獣人が約5500人も新しい住民として加わる事だ。元々の城塞都市規模からいうと、今までが少な過ぎたため丁度いい人数になるだろう。
ただこれからさらに住民が増える事を考えるなら都市拡張は必須となる。今ある城壁はそのままにして、さらに外周が広くなるように城壁を建てたいところだ。
また眷属である中級木人もかなり増えたため、土木工事に従事させたい。
獣人達は聞いた所、雑食ではあるが肉を好むため食せる魔物の肉や、畜産をしていかなければならない。
エルフの場合は、肉はほとんど食べないためその辺は問題ない。
その後避難民とも合流し、魔物の追撃がない事を確認すると帝国軍に別れを告げて出発するが、ラスマータ王国は結局散り散りになって逃げた後はどうなったか不明だ。まあ帝国軍が見つけたら保護するだろう。
ただ、エルフの女王を軟禁されているためあまり無下には出来ないが信用もできない。
そして仲の良かった暁月夜の水平線団長は、ラスマータ王国に帰り今度こそ傭兵団を解散し、すぐにこちらに向かうと声高々に宣言し、ラスマータ王国までは帝国軍と一緒に帰ると言いそこで再会を約束し別れた。
しかし今回の遠征での1番の成果は、間違いなく魔物から得た栄養だ。
あまりにも大量だったため、途中からはこちらの栄養に回しながらヤドリギも増やしていった。
この調子で栄養を蓄えていけばドラゴンになれるのだろうか?そんな風に考えているとポポから指摘が来る。
(元々ドラゴンの身体から人の姿に作り替えたけど、身体は今もドラゴンに戻ろうとしている。今は抑えているから大丈夫だけど、抑止力が無くなればすぐにドラゴンになる)
えーと、つまりポポが今抑えているから人の姿なままで、それがなくなるとすぐに身体ドラゴンになると?
(そう)
あまりにも衝撃的な事実に、絶句してしまう。身体を作り替えたと言っていたから、ずっとこのままかと思っていたがどうやら違うらしい。
「もしドラゴンの姿になっても、人の姿に戻れるのかな?」
(戻れるけど、戻るまで2年くらいはかかると思う)
なるほど、そう簡単に人の姿に戻れないならまだこのまま人の姿でいいな。
それに急にドラゴンになってしまったら、エルフや獣人は訳が分からなくなってしまうだろうし、根回しも必要だから一旦置いておく。
また魔物対策はかなり重要で、国の防衛力は多いに越したことは無いだろう。
現在の戦力は上級木人のドレーク、エルジュ、ナギの3人。
中級木人は、5000体。ここにオーガ級が80体、ギガース級が10体で合計5090体が中級木人の戦力だが、同じ中級でも個体が違うと強さもかなり異なるようだ。
特にギガース級とオーガ級は別格だ。
さらに木人は火に弱いものの、食糧は要らず日光浴だけで賄えるのが大きい。
そんな風に考えながら、特に大きな問題もなくゆっくりと9日間歩いているとエルフの国が薄っすらと見えてくる。
避難民と合流したその日全員に、竜眼をあげたことで大分活力が湧いたようで、行軍は思っていたより早く進んだ。
「な、なんだあの大きな木は!?」
「もしかして、世界樹ではないか?」
都市から大きく立ち昇る巨木に獣人達は騒ぎ始める。余りにも大きい為世界樹と間違える者まで出始める。
「皆さん落ち着いてください!あれは世界樹では無く、森の精霊様の棲家です!」
事情を知っているエルフ達が、説明をしていくと獣人達はさすがはキジマグ様だと、何故か株が上がってしまう。
獣人達と合流した後、数多くの木人とこの姿をみた獣人達が、ムーラム隊長にあの方はもしかしてキジマグ様かと問われたそうで、その通りだと言うと一部ではお祭り騒ぎになってしまう程で、話しがすぐに広がってしまった。まあそのおかげで、獣人達はこちらの言う事を聞いてくれる。
そして獣人達は落ち着きを取り戻し、2時間ほど歩くと
一応到着前に防衛しているエルフには先触れを出して伝えていたのだが、それでも伝えた事が信じられないのか、出迎えてくれたエルフ達は驚愕している。
しかし、獣人達を都市内に入れる前に名簿を作ろうと思ったのだが紙が大量にないため今回は見送る。
まだまだ国とは言えないため、出来ることから始めていこう。
住むところに関しては、南側の都市内の建物は殆ど空いてはいるけれども、好き勝手に住まれるのは宜しく無い。先ずは列を作らせて家族構成を聞き、以前の職業を照らし合わせて住ませる場所を決めていく。
暴れるものや待遇に不満があるものは即座に追放する予定だが、今の所は皆落ち着きながらネイシャやムーラム隊長からの話を聞いている。
独り身の者同士集めて、宿を一時的に家にしたり、共同生活をさせ出来るだけ受け入れられるようにしていったおかげで、全員無事にエルフの国に入れる事が出来た。
まだまだ理想の国と呼ぶには遥かに遠いが、避難民である獣人達は喜んでくれているものもおり、故郷を失い悲しむ者は勿論いるのだがそこまで悲観していない為良かった。
そして獣人達への炊き出しの準備をしながらネイシャにララシャ、冒険者のアライナ、ムーラム隊長を我が家に呼び、これからの事について話し合うのであった。
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