第17話 呉越同舟
突然の会談後も、第3皇女ことサナリー=フレイフルとマーバイン王国へ出陣の事も話をした。
どうやら、まだ第7騎士団は出来てからそこまで経っていないようで、少しでも経験を積むためにマーバイン王国行きへ志願したらしい。
また付人である老兵は、ガナッド=ワールワンと言い帝国独自の階級制度で中佐に任命されているらしい。
帝国軍の良いところは、魔法の有無だけでは無く総合的な物で階級が決められるそうで、力だけでなく守り、賢さや魔法等色々と評価がある。だから平民であっても軍の階級が高い者も多いとの事。
正直な所話だけ聞いていると、帝国は凄い所だと感じざるを得ない。工業も発達しており、貴族制度はあるものの王国程ではないようだ。平民にも活躍できる場所があるのは個人的に好感度はあがる。
しかし他国を侵略しているという話を聞いていたため、どうしても悪いイメージができていたのだが、案外直接話を聞いて見ると悪くない。まあこれが本当の話であればなのだが。
正直ラスマータ王国の方が、エルフの女王の事もあり少し嫌気がさしてくる。少し身の振り方を考えた方が良いかもしれないので、今回は帝国と仲良くなりたい所だ。
また有難い事に第3皇女からは、帝国に興味があるなら是非遊びに来て欲しいと言われてしまったので考えておこう。
またこちらの影の護衛に徹していたドレークを最期に紹介する。ドレーク自身は軽くお辞儀したのみで後は無言をつらぬく。こういうときは物凄く寡黙みたいだ。それをみた老兵や皇女もドレークの威圧感を感じ唸り声をあげていた。
その後は、第3皇女とは別れてエルフの女王に会いに行こうとした所、残念ながらラスマータ王国からは断られてしまった。体調が悪いことを言い訳に断られては仕方ない。これもほぼ方便だとは思うが。
その日は仕方ないので宿に帰っているその途中で声をかけられる。
「森の精霊様ー!」
冒険者のアライナは、大きな声をあげながらこちらに駆け寄ってくる。その後ろには、暁月夜の水平線団長もいるようだ。
「お二人とも無事で良かったです」
そう答えるが、どうやら二人の反応は芳しく無いようだ。
少し話を聞いて見ると、傭兵団は残念ながら国の事情で解散できなかったらしく、このままラスマータ王国軍に傭兵団を率いて追従しなければいけないらしい。
傭兵の階級が高いとどうしても、国からのしがらみに囚われやすくなると。
アライナの方は冒険者を続けながらでもどうやら大丈夫そうだ。それで冒険者の方は、この援軍の参加には強制では無いそうなのでエルフ側に来るそうだ。
またアライナは、帝国語もわかるそうだから側に居て通訳をしてくれる。これは何かあった時に有難い。
「なんとか解散できないかと思って傭兵組合にも言ったんだが、緊急事態なので無理だと言われましてね」
肩をガクッと下げてやるせなさが漂う。
「それに聞いたんだが魔物の数が尋常じゃないらしいんだ、およそ20000と聞いたんだこれが本当なら、城塞都市カルメン以上に厳しい闘いになるだろう」
「20000!?それって大丈夫なんですか?」
アライナは驚きのあまり、悲鳴に似た声を出してしまう。
「大丈夫なわけあるか。スタンビート級だぞ?上位種次第ではあるがかなり厳しい闘いになるだろう。だがまあ帝国軍が来てくれて本当に助かった」
前回の死闘からまだそんなに日も経っていないこともあり、団長は少し感傷的になっているようだ。
「大丈夫!森の精霊様もいるわけですからドンと行きましょう!もし無理なら逃げちゃいましょう」
「そうですね。まあ救援ですから戦果よりも命を大事にしていきましょう」
なんとか場を落ち着かせ、明日の出陣のために早めに寝るとする。こんな状況で無ければ、もっと王都観光をしたかったのだがそれ所じゃ無くなってしまった。
そのままネイシャとララシャも泊まっている宿にいき、明日を迎える。
朝日が昇り始める頃に起きあがると、雑事をこなした後に朝食を食べ王都外で野営していたエルフ達とアライナも合流して王都の外にある軍の集合場所へ向かった。
そこには、帝国軍とラスマータ王国軍も丁度野営を片している所だった。帝国軍が10000の兵力とさらに傭兵団、ラスマータも同じく10000の兵力にここへ傭兵団の戦力を足す。
そして最後にエルフ300人が今回の総戦力となる。
ただ、帝国軍は職業軍人なのか末端兵士も統一された鎧を装着している。それに比べるのは烏滸がましいが、ラスマータ王国は農民兵が多く見受けられる。装備も貧弱で、最低限しかない。この事からも、帝国の軍事力が凄いことが見受けられる。
少し周りの兵隊から奇異の目を晒されながら歩いていくと、第3皇女と昨日のラスマータ王国の貴族が険悪なムードでやり合っていた。
「ここは帝国軍が指揮権を貰う、ラスマータ王国には我が指揮下に入って貰いたい」
どうやら、指揮権について揉めているようだ。昨日のやりとりから全く変わってない。まるで敵同士のようにやり合う様は兵士達にも悪影響が出そうだ。
「これは結構険悪そうですねぇ」
アライナが気まずそうに呟く。
結局そこから小一時間後、決まらないために指揮権は別々で行動する事になった。こんな事で大丈夫なのか心配になってしまうのであった。
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