第16話 帝国の思惑
フォレストドラゴンことぺぺが王都に出発する少し前、ガリバリアル帝国の帝都ではとある2人が密談をしていた。
豪華な椅子に座っているのは、鷹のような鋭い眼光を発している時の皇帝ロールド=フレイフル13世。
片方は膝を着き頭を垂れており、白いフルプレートアーマーを着込んだ並々ならぬ男は第一騎士団を纏め上げる団長アレス=タナテック。
「面をあげよ」
「はっ」
頭を垂れていた男は、ゆっくりと頭を上げる。
「第7騎士団がラスマータ王国へ出陣したそうだな?」
「はい、今朝出陣致しましたが本当に宜しかったのでしょうか?」
「愚問だ。今回の出兵は試金石だ、ラスマータ王国にとっても娘にとってもな」
第7騎士団は新設されたばかりの騎士団で皇帝の三女が団長を務める、なかなか類を見ない異質な騎士団である。
「忌々しいロズライ連合国はどうでるか楽しみだ」
今までは、ロズライ連合国とは一進一退を繰り返してきた宿敵とも言える。今回は兼ねてよりマーバイン王国から救援を求められていた件を利用し、ラスマータ王国、マーバイン王国とも一時的に同盟を結んだ。
こちらとしても、魔物との境界を接したくない事もあり援軍を出すことに決めた。
「どちらにしても少しは役に立つだろう」
皇帝はそう言うと不気味に笑った。
◇◇◇
一体どうしてこうなったのだろう‥。
目の前の将官らしき女性は綺麗な顔立ちで、銀髪がキラキラして綺麗なのだが、冷たい雰囲気を醸し出している。
そして、隣の男性は多分ラスマータ王国の貴族なのだろう。目の前の女性と色々やり合ってはいるが全く言葉を理解できない。
こちらには、困った顔のエルフ代表ネイシャが固まっている。
事の始まりは、王都までの道のりを強行軍にて2日で踏破した後である。
城門にて門番とトラブルがあったりしたが、なんとか事なきを得た。まさか本当に魔物と勘違いされるとは思っていなかった。
しかし、明日マーバイン王国に出陣に関する内容の会談が始まっていると聞いて来たのがこの状況である。もう無理やり竜眼を食べさせてやりたいのだが、そうは行かないのが悲しい所だ。
このまま対立路線で行くとなると魔物討伐にも支障が出そうだ。なんとか協調出来れば良いのだが。
しかしその後も結局対立したまま話は進まずに、解散となってしまった。こんな事になるなら参加するんじゃ無かった。
何の成果も得られない結果になってしまいトボトボと宿に帰ろうとしたとき、さっきの女将官が老兵と共にこちらを待っているではないか。
そのまま面白そうな顔をして、こちらにやってくる。どうやら老兵はエルフ語を理解しているらしく、このモジャモジャは本当に森の精霊かと聞いているらしい。
「こちらにいらっしゃるお方は正真正銘の森の精霊様です!!」
老兵のエルフ語は聞こえないのに、ネイシャのは竜眼のお陰で聞こえてくる。
その後も、老兵と言い合いが続き埒が開かないので少し強引な手法に出る。
手のひらから、竜眼をニョキニョキと生やし手のひらに乗せる。
それを見ていた二人はギョッとした顔になる。そのまま、竜眼を差し出して見るがやはり食いつかない。そのままネイシャに食べてもらい、毒は入って無いと言って貰う。
すると女将官の方が、意を決して竜眼を1つ摘みパクっと食べて咆哮を上げる。
「なんだこれは!?美味すぎるぞ!」
老若男女に人気のある竜眼です。
「どうです?こちらの声は聞こえますか?」
まさかこちらから声がかかるとは思わなかったのか、ビクッとし目を見開きながらこちらに話しかけてくる。
「あ、ああ。何故だかわからんが言葉が理解できるようだ。魔法ではあるまいし、うーむさっぱりわからん」
老兵もその光景を見るや否や、すぐに竜眼を手に取り一口で食べる。
「う、美味い。こんなに美味いものは食べた事がない。それに力が湧き上がるようだ」
老兵はそう言うとこちらに感謝し、疑って済まなかったと謝ってくれた。どうやら話は思っていたよりまともに通じそうだ。さっきの対談を見ていたから、心配だったんだ。
「取り乱して済まなかった。おっとすまない、自己紹介もまだだったな。私は、ガリバリアル帝国第3皇女サナリー=フレイフルだ」
皇女様何してるの!?お転婆の度を越えている気がする。老兵も心なしか不憫に見えて来た。
「これは丁寧にどうも、森の精霊と言われています。訳あってエルフ族に協力しています」
「やはり噂は本当だったか。済まないが協力して欲しい事があるんだが頼めないか?」
先程までとは打って変わって真剣な様子に少し身構えてしまう。皇帝の第3皇女ともなれば一般市民とはちがうしがらみがありそうだ。
「いや、まずは魔物の討伐の協力が先だな。上手くいった後に、改めてお願いがある」
そう言うとどこか悲しそうな顔を浮かべたが、直ぐにキリッとした表現になり、今後の魔物討伐について相談を受けるのであった。
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