第13話 巣作りドラゴン

 「思っていたより大きくなったなあ」


 上を見上げると、かなりの高さである事が分かる。そして城壁が約8m程であるのに対して、軽く凌駕するため都市外からでも良い目印になるはずだ。


 ただ、これだけの物を呼び出したのにもか変わらず、疲労感等は全くない。

 魔法では魔力切れが起こると、倦怠感や疲労感が出るそうだが根本的に何かが違うのかも知れない。


 (魔法じゃないからね、息を吸ったり吐いたりするのと一緒)


 なるほど、今は結構意識してイメージしながら植物を呼び出しているが慣れていけばもっと楽になると。

 今までは身体から植物等を生やす事が多かったけど、ヤシの木の事もあり色々試していくのも面白そうだ。


 周りを見渡すとネイシャとララシャが目を回しているのを見つける。綺麗に敷いてあった石畳みも吹き飛び、噴水があった部分も破壊されて水溜まりが出来ていた。

 エライ事になっているため掃除して無事な石畳みはリサイクルしたい所だ。


 「エルジュ、ネイシャさんとララシャさんを連れてこちらの所有する土地の境目に土魔法で土塀とか盛れるかな?そんなに大きくなくていいから。それとこれは後で良いんだけど、空堀を作って水がうまく流れるなら水堀にしたいんだよね」


 「容易い事でございます」


 そう自信に満ち溢れた言葉で、応えてくれてへばっているネイシャとララシャを介抱する。


 エルジュの土魔法はかなり高くLv10もあるから問題なさそうだ。貰った敷地にはほぼ緑を生やしていく為要らない家は解体して、来客用の家だけを残して、他の使わない物は物資置き場に置いておこう。


 この惨状を自分1人で片付けるのは非常に骨が折れるため、下位種の木人を呼び出し後片付けや森の作業を行わせよう。

 残りの予備のヤドリギを確認すると数は3体で内訳は下位種ゴブリンが70体、オーク12体。上位種はゴブリンメイジ3体、オークメイジ2体、オークナイト1体となる。


 下位種ゴブリン10体とオーク10体を使用し合計20体の下級木人を、指揮官兼巣の護衛に下位種を40体、上位種を全て使用し上級木人を作成する。

 下位種は話すことは出来ないが、言葉は理解できるため単純作業に持ってこいだ。

 また使うヤドリギは2体にして1体は腰蓑に貼り付けておく。


 (さくっと呼んじゃおう)


 ポポにサポートをお願いしながら、ヤドリギに左手を当て右手を地面に置く。そしてイメージだ。下級木人はそのままの背丈で呼ぶ。上級木人は指揮官クラスなので名前はもちろん付ける。

 そう思い、まずは下級木人を地面からニョキニョキ生やしていく。簡単に下級木人20体呼び出せた所で、次は本番だ。

 執事は呼び出してしまったから、次はメイド騎士を呼び出す事にしてみる。


 鎧やヘルムはそのままでイメージカラーはライトグリーンの若葉色にする。メイド騎士な訳だからヘルムの上に白のレース付きカチューシャを取り入れ、鎧の上にワンピースと白のエプロンを着用させる。身長は150cm位で武器は両手剣を指定する。


 そしていつもながらの、全て木製である。

 

 (がんばる)


 何となくだけど、ポポが居なければ木人の呼び出しや属性関係もこんなに上手くいかない気がする。こちらがイメージしたのを上手く汲み取り、形作っていくようなサポートだと勝手に思ったいる。

 つまりはポポ様々である。

 そういう事で心の中で感謝をしながらイメージを固めていく。


 そしてお腹に力を入れ直して、呼び出す!



 「顕在せよ!若葉のメイド騎士ナギ!」


 その瞬間、2体いたヤドリギに変化が現れる。ふたつがひとつとなり、大きなひとつのヤドリギになる。

 そして球根部が徐々に肥大化していき、約2mまで大きくなった所にそこからライトグリーン色の大きな花が咲き、すぐに枯れると球根部が十字に裂け、上品にナギが中からゆっくりと歩いて出てきた。


 背格好はイメージしていた通り150cm位だろうか、立ち姿も凛としていて尚且つ上品でとても癒される。両手剣は背中に装着されており、身の丈ほどより小さそうだ。

 そんなメイド騎士を見ていると頭の中に、スッと情報が流れ込んでくる。


若葉のメイド騎士ナギ Lv42


力 130

防 150

早 80

賢 100


スキル:両手剣術Lv10 水魔法Lv4 土魔法Lv4 水耐性Lv2 土耐性Lv2 火耐性Lv1


称号:フォレストドラゴンの眷属



 (綺麗だね)



 「ご主人様、お会い出来て光栄の極みでございます。若葉のナギ、只今罷り越してございます。また、世界樹で有らせられるポポ様にも御拝謁賜り、恐悦至極でございます」


 ナギは右足を後ろに引き膝を曲げて丁寧に挨拶してくれる。その声はとても凛とした声で聞き易い。


 (これから、宜しくね。ナギ)


 「宜しく頼むよ、仕事が山盛りでね」


 「ご主人様やポポ様に御奉公出来ますのは誉れにございますので、お任せくださいませ」


 そう言うと背後に控えていたドレークにもスカートをつまみあげ華麗にお辞儀をする。多分木人同士は繋がり合ってるような気がする。その様な仕草や動作がたまに見られることがある。

 

 その後ドレークは僕の護衛を継続し、ナギは木人を引き連れて必要な場所に木人を送りこむ。ナギは上手いこと土魔法を使い石畳みを外しそれを木人が運んでゆく。


 その作業を見届けた後は巨木をいかにして巣にするかを考える。入り口を切り抜いて、中に居住空間を作りたいのだがなかなか良いアイディアが浮かばない。思案顔で唸っているとポポから助け舟がやってくる。


 (中に住みたいならイメージが大事、これはぺぺが作り出した物だから大丈夫)


 なるほど、正直まだまだ内装とかは決め切れてないのだが、1階は応接間で椅子や机は欲しいし端に階段を設置したい。2階は食堂で、3階は客室、4階は木人スペース、5階は自室にしたい。まだまだ漠然としている為、今はまだ簡易的な形にしたいし、最悪木の中の切り抜き等最低限できれば良い。


 そしてポポに促されるように、巨木に両手を付けて先程想像した通りにイメージをしていく。元々は加工した木や材料は呼び出せず、例外としてはヤドリギを使用した木人には、鎧風にしたりと色々出来たのだが。


 そんな風にイメージしていると腰蓑に張り付いていたヤドリギが、急に飛び出し巨木に張り付くと同化してしまった。瞬きをし、キョトンとしてしまう。だがすぐに気を持ち直し、きっとポポが手助けしてくれているのだと感謝し、目を閉じてイメージに集中する。


 どれくらい経っただろうか、すぐのような気もするがはっきりとしない。目を開けようかと思った矢先、ポポの声がじんわりと聞こえてきた。


 (出来た)



 


 


 




 

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