第11話 エルフ独立宣言

 呼び出しに成功し大きな球根から執事のエルジュが出て来る。鎧とヘルムはドレークとほとんど同じだが、執事要素も少しだけ取り入れた。また、鎧とヘルムはエバーグリーン色を基調として黒のネクタイを締め胸元は白のシャツをイメージし鎧とタキシードを合わせたような感じになる。但し、見た目はそうでも材質は木である。


 そしてエルジュと視線が合うとステータスの情報がスッと流れて来る。


 常盤の執事エルジュ Lv49


力 180

防 160

早 70

賢 180


スキル:格闘術LV12 土魔法Lv10 火耐性Lv1 土耐性Lv7


称号:フォレストドラゴンの眷属


 身長はドレークより低めの180cmで、シュッと引き締まった体格をしている。

 また武器を持たず格闘を使用し、属性の土で身体を強化し肉弾戦にて敵を粉砕していくようイメージをし、その通りに出来上がっていた。ポポもしっかりサポートをしてくれているおかげか、良い執事が来てくれた。

 

 そしてエルジュはこちらに丁寧なお辞儀をし、挨拶を述べる。


 「我が主人よ、お呼び出しくださり誠にありがとうございます。常盤のエルジュ只今推参致しました。また、世界樹のポポ様におかれましても御拝謁賜り、大変恐縮でございます」


 (これから、よろしくね)


 「宜しく頼むよ」


 エルジュはややドレークより年上だろうか、声色はとても優しく安心出来る。さぞ顔があればにっこりとした笑顔が見えたはずだ。

 そしてドレークにはお辞儀とその返しの頷きだけで挨拶が終わり、分かってる者同士という感じがした。


 「また明日みんなに紹介するよ」


 「ありがとうございます。楽しみにしております」


 そして待ちに待った自分の栄養摂取の出番だ。

 一応予備のヤドリギは置いておいて、それ以外のヤドリギを吸収していく。この時の幸福感と高揚感は得難いものがある。


(格がまた上がった)


 ポポとは繋がりあっているため、ポポが上がったという事はこちらも上がっているはずだ。元々、フォレストドラゴンと世界樹は日光浴をするだけで格が上がるが、時間がかかり過ぎるみたいだ。

 そして竜眼も大変好評で、竜眼の提供は瀕死状態の者だけとしたが、今後の影響も考えて戦闘に参加した全員に融通する事にした。すると森の精霊信仰が爆上がりしてしまい、確固たる地位を築いてしまうのだった。もう誰も不審者とは思わなくなるので安心した。

 そしてララシャさんの腕治療は、とある事情で少し待ってもらっている。急に腕が生えるとなると周りもびっくりするだろうし。


 そして魔物との戦闘から7日後早馬の伝令が到着し、王都から兵隊を引き連れて勅使がもうすぐやって来るので、すぐにエルフの代表者は出迎えの準備をしておくようにと言うと来た道を戻って行った。漸く物資の搬入や住民が帰ってくるのかと期待していたら、まさかの展開が待っていた。


 「なかなかの数が揃ってるな」

 

 城壁の上から軍隊の行列が進んでいるのを上から見物をする。見知らぬ人に見られたら魔物と見間違われるかもしれないので勅使との対談は参加せずに見送っている。エルフ側からは、精霊様は是非にと言われたが丁重にお断りをした。


 ただ見ていると、城塞都市の中には入らず門前でやり取りをするようだ。そして軍隊の中で服が煌びやかで、胸には勲章を3つ付けた男が前に出てき、エルフの代表側の前に立つといきなり大きな通る声で話始めた。


 しかし、偉い人の言葉は何を言ってるのかさっぱり理解できないから後で誰かに聞いてみよう。

 そう考えていたら、何やらもう終わったのか羊皮紙を1枚手渡しそのまま軍隊を連れて帰って行った。

 てっきり都市内に入り、本格的な話が始まると思ったのだが。側に仕えていたドレークとエルジュも、考えこんでいるようだ。何やらきな臭い感じがしてくる。


 その後軍隊が少し遠ざかり何故かその場で待機しており、帰る気配がない。不思議に思っていると下から大きな声が聞こえてきた。


 「大変、大変、大変なんですーー!!!」


 どうやら声の主は土下座女もとい、アライナだった。その後ろにはエルフのララシャに団長も付いている。そして一緒に城壁上まで階段で上がってくる。


 「エルフの国が独立なんです!!」


 一体何が何だかわからない。意味が分からないと顔を顰めているとララシャが手助けしてくれる。


 「アライナさん、それでは分かりませんのでこちらから説明します」


 ララシャはそう言うと少し深呼吸をし、息を整えてからラスマータ王国勅使の話を話し始めた。


 「魔物の大群を退けたエルフ族に敬意を表し、エルフの自治区を正式に国として認めるそうです。この城塞都市カルメンから隣町ラナータまでの間から竜魔の森外部まで含めた部分がざっくりとした境界だそうです。」


 いやいや、ざっくりしすぎでしょ。こんなの正式な発言とは思えないが。まあでも城塞都市を国として認めてくれるなら、結構ラスマータ王国も懐が深い。そう感心しているとララシャが更に話の続きを伝える。


 「また、城塞都市に所属する住民、商人、衛兵、兵隊、傭兵、冒険者はすぐにラスマータ王国に帰還する事。そして今までエルフに支援していた分、今回の兵隊損失分をラスマータ金貨50000枚王国へ10年以内に弁済する」


 全言撤回。なかなかに絞って来る。


 「さらに、ラスマータ王国が他国に進軍や侵略された場合は兵の出兵を命じ、これらが達成されるまでは女王ラズーシャの身柄は預かるとの事です」


 うーん、所謂属国みたいな感じか。しかし、いきなりこんな事を仕向けるなんてラスマータ王国はどうなってるんだ。


 「誰かラスマータ王国の思惑みたいなのってわかる?」


 「正直さっぱりだが、衛兵、兵隊、傭兵、冒険者は帰り支度を始めてる。住民や商人はとっくにいないけどな」


 都市の衛兵も兵隊も居ないんじゃ本当にエルフ族しか居なくなる。ましてや傭兵に冒険者も居なくなればかなり不味い。それを止められる者はどこにも居ない。


 「今いるエルフの数は?」


 「約700人ほどです、ただ外にでているエルフが集まれば1500人にはなるかと」


 明らかに、エルフの数も足りてないし食糧も不足している。

 

 「ララシャ、傭兵団はどうする?」


 「この状態なら、、、さすがに団は抜けないといけません。すいません」


 ララシャは、顔を俯き悔しそうにしている。


 「いいや、お前が抜けなくてもいい方法がある」


 え?と顔をあげるララシャ。


 「暁月夜の水平線は今を持って解散する。そしてエルフの国で最初の傭兵団を作るんだ。その団長は、森の精霊様だ!」


 その言葉に、みんながこちらに熱い視線を送ってくる。


 「はい!私も傭兵団に参加します!」


 アライナの声が高らかに響き渡った。


 


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