第3話 竜魔大戦争(過去編)
竜魔の森。
誰が名前を付けたのか分からないけどみんなそう言っていた。
私がここに根を張って少なくとも700年以上は経っているけど、それ以前もずっとそう呼ばれていたそうだ。
仲良しのドラゴン族は種属が違うとまるで性格も違うみたい。
ずっと一緒にいる優しいフォレストドラゴンはもちろん、ウォータードラゴン、アースドラゴンの皆は仲良し。
名前を付けてあげると言うと恐れ多いと言われてしまう。
エルフ族はたまに実を分けてあげてとても喜んでくれていた。
それ以外のドラゴンはやんちゃさんで、ちょこちょこファイアドラゴンが人間の街を燃やしたり、魔族の村を焼いただの自慢気に話を聞かされたとウォータードラゴンが苦笑いを浮かべながら私に話を聞かせてくれた。他にも自由気ままなエアドラゴンに、竜峰山から一切動かない無関心なアイスドラゴン。
今上げたドラゴンが全部で本当に性格が違う。ファイアドラゴンの物騒なも話もあったりしたのだけど、このままいつも通り暮らせると思っていた、ある話を聞くまでは。
3年前、ウォータードラゴンがかなり焦ったように話をしにきた。
「我らが女神よ、急に申し訳ありません。魔族との問題が発生しました」
ウォータードラゴンは昔から、私のことを世界樹ではなく女神と言う。神様ではないと言ったんだけど、ずっとこのままだ。
話を戻すと、どうやら若いファイアドラゴン3頭が魔族の王城と城下町を、力の見せ合いで少し焼いてしまったらしい。
いつもであれば、端っこの小さな村位なのに。
もちろん、魔族は大激怒。魔王がすぐに出てきてファイアドラゴン2頭を倒してしまった。
残り1頭は竜魔の森にすぐに逃げ帰り、その話を皆に聞かせたそうだ。
その後ウォータードラゴンは、アースドラゴンにも話をしてくると慌ただしく、ズシンズシンと森を響き渡らせながら走っていった。
「ウォータードラゴンがあんなに慌ててるのは珍しいですね、大母様」
すぐそばにいたフォレストドラゴンは、いつもおっとりしているウォータードラゴンがあんなに早く走るのは珍しいと目をパチパチしながら話してくれた。
いつもフォレストドラゴンは私の事を、大母様と呼んでくれる。
私が産んだわけじゃないんだけどね。
そんな風に思いながら、その時は深く考えてはいなかった、魔王城が焼かれた意味を。
しかし次の日には、信じられない事に魔王軍が竜魔の森に押し寄せ、1番目立つ私を目指して進軍してきた。
この時ばかりは、普段あまり仲の良くないドラゴン同士も協力せずにはいられなかった、アイスドラゴンを除いて。
魔族は何故だか分からないけれど憎いはずのドラゴンよりも、私の事を優先的に狙い撃ちしに来る。
世界樹である私も例外に及ばず火にとても弱く、魔族の火魔法に焼かれそうになるがすぐにウォータードラゴンによって火は消される。
だけど魔族の数が徐々に増えており、ドラゴン達が倒しても増えて行く一方だ。
そして何故かわからないけれど、いきなり消えない炎が現れた。ウォータードラゴンが必死に消そうとしてくれるけど、炎は消えずに大きくなるばかり。
こんな事が出来るの魔王しかいない。
なんとかドラゴン族のみんなで私を頑張って守ってくれたけど、私はどんどん燃え広がっていく。
そんな中一番仲の良かったフォレストドラゴンが轟々と燃えている中、私の大事な核を取り出す。
そして核を飲み込み、まだ身体の中にある卵に核を植え付けたんだ。そして、消えない炎に身体が燃やされながら魔族から少しでも離れるように走って逃げてくれた。
その後、世界樹の本体部分が全部焼けた事で魔族の興味は、残りのドラゴン族に向き始めた。
おかげで、フォレストドラゴンも燃え上がりながらもなんとか逃げ切れる事が出来た。
少しでも魔族側から離れるために、南へ走り続けるがやはり燃え上がる炎は一向に消えない。
「大母様、申し訳、、、あり、、、ません。ここまで、、、のようです」
ずっと炎に燃やし尽くされながらも走り続けたフォレストドラゴンの体力は、もう既になく事切れる寸前の中声を振り絞る姿は痛々しい。
(ごめんね)
「大母様に、、仕えら、、れて幸せ、、、でした」
その言葉の最後に、フォレストドラゴンは小さくなり御神木へと成り変わる。
それが無ければ、私はもうここにはいないだろう。
そのついた炎は、2年もの間ずっと御神木を焼いていたのだから。
世界樹の核のみとなった私はあまりにも無力で、申し訳ないと思いながらペペに寄生するしか無かった。
その後、ドラゴン族と魔族がどうなったか分からない。でも、魔族の大事な物を壊してしまったのならその報復で、世界樹を同じ目にしてしまおうとしたのかもしれない。
なんたって大きくて目立つから。
魔族からしたら、みんな同じドラゴン族みたいに思ってたのかもしれない。
そんな悲しい出来事があったけど、竜魔大戦争から3年後にペペは孵化し、念願だった名前付けも出来た。
まだまだ、世界の状況が分からないから心配だけどペペと一緒なら寂しくないし、なんだって出来そうに思える。
そう昔のことを思い浮かべていたら、少し感傷に浸ってしまったが、落ち込んではいられない。
少しでも前向きに考えられるように、これからの事をペペに相談するのであった。
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