ささくれない俺に異世界転生を!
朝風涼
第1話 ささくれない俺に異世界転生を!
7月の三連休に、タテヤマダケに来ていた。
雄大で荘厳な姿に、俺は圧倒されていた。
風が吹いてくると、崖にぶつかって雲ができ、切り立った山肌を垂直に登って行く。
中学の理科で習った断熱膨張だったかな。面白いなあ。
圧倒的な自然の中で、しばらく雲ができていく様子を見つめていた。
それにしても、うちの会社のブラック体質はひどいものだ。
後輩が作ったシステムを、すぐに改良しろとは。
いやはやまあ、若手の失敗をかぶるのはいつものことなんだよな。
そんな会社にしがみついて生きて来たのは確かなのだしな。
三日間徹夜してなんとかここにこれた。最高の気分だ。
体はボロボロだったが、山の空気は、ささくれだったオレの心を癒してくれた。
指先のささくれを、青缶が潤してくれるかのようだ。
俺は、山本一郎。趣味は、山に登って高山植物の写真を撮ることだ。
ハイマツの中でライチョウの家族を見つけた。近づいても逃げないのだ。親が子供を連れて歩く姿に癒されながら、夢中で写真を撮った。
目的地の「天空のお花畑」に到着し、コンビニで買ったおむすび弁当を食べた後、お花畑の中で寝ころんだ。
来世があるのならば、こんな風に、花に囲まれて過ごしたいものだ。そう思いながら目を閉じた。
ふと気が付くと、三時を過ぎていた。徹夜明けの山登りで、眠ってしまったのだろう。霧が出てきていた。体に水滴がついても寒くなり目が覚めたようだ。
いきなりの寒さにブルっと体を震わせて、カッパを着て、歩き出した。
山頂は、すぐ先も見えないほどに霧が深かった。すでに、厚い雲の中に入ったのかもしれない。
山の雷は、横から飛んでくるので逃げ場は無いというめちゃめちゃ怖い話を思い出した。
だから、できれば午前中に山小屋へ着くのがセオリーなんだよな。
遠くで雷鳴が聞こえる。
胸騒ぎがする。
雷の音が、どんどん大きくなっている。
全身の毛が逆立つ。
バリバリバリ
神様、花いっぱいの異世界へ転生させてくれるよね。
ささくれない俺に異世界転生を! 朝風涼 @suzukaze3
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