モニカ、プンプン! なにがあったのかな?

ある日のモニカ

 とある国の末の姫さま、モニカ(5歳)。


 今日はご機嫌ななめ。


「またったくもう、まったくもう、もう、もう!」


 ほっぺを膨らませて牛さんのようにモウモウ。


「姫さま、一緒に遊びましょう」

「いやでつ!」


 メイドが優しく語りかけても、プン!


「ケルスなんて知らないでつ!」


 お友だちのわんこがすり寄ってきても、フン!


「モニカ、いっしょにお昼しない?」

「いらないのでつ!」

「おやつは? シュークリーム好きよね?」

「いらないのでつっ!」


 年の離れた姉姫のリジェルがご機嫌うかがいもプンプンしたままでした。


「まったく、まったくもう……。みんな、モニカのきもちを分かってないのでちっ!」


 口をとがらせ、モニカはお庭へ。


 お城の広いお庭は午後の日差しがいっぱい。

 ぽかぽか。


「きもちいいでつねえ……」


 おや?


 モニカ、おひさまを受けて、ぽやぽやとほほが緩んできています。


「ちょちょたんでつ!」


 ひらひらと、花の咲き乱れるお庭にたくさんの蝶々。

 まるで舞を踊っているかのよう。


「キャハハハハ」


 モニカもつられて、大人の真似してダンスです。

 ひとり遊びでも楽しそうですね。


「つまんないでつ!」


 でも、すぐひとり遊びに飽きて、またプンプン。


 ご機嫌、直して。


 鳥さんたちがピィピィ鳴いています。


「とりたん、とりたん!」


 モニカ、鳥を追っていきました。


「にゃあ、にゃあ……」


「あえ?」


 モニカ、首をかしげます。

 どこかから仔猫のか細い鳴き声。

 小さな声はまるで鈴のよう。


「どこでつか? どこにいまつかぁ?」


 モニカ、きょろきょろ。


 いました。


「おりられないでつか?」


 東屋パビリオンの屋根に、仔猫が。

 下を見ては、足を少し出しては、みゃあみゃあ。

 屋根をうろうろ、にゃあにゃあ。

 とっても心細げ。不安いっぱい。泣いています。


「ねこたん、ねこたん、モニカ、ここにいまつ」


 モニカ、ぴょんぴょん跳ねて、仔猫にお知らせ。

 何をするのかな?


「ねこたん、ねこたん、モニカのところへ来てくだたい。モニカ、モニカ! ここでち」


 あらあら、モニカは仔猫を助けようとしているのですね。

 うまく受けられるかな?

 仔猫は応えてくれるかな?


「ねこたん! ねこたん!! モニカはここでつ! ここにおりて来てくだたい!」


 大きく手を広げ、ぴょんぴょん、ぴょんぴょん。

 白いうさぎさんのよう。

 小鳥たちも心配そうに見守っています。


 蝶々がひらひら、仔猫を誘います。


 仔猫はおそるおそる、こわごわ。


「ねこたん!」 


 ジャンプ!!


 モニカの小さな腕のなかへ。


「うきゅ!」


 失敗。モニカの顔に、仔猫ダイブ。

 小さなモニカは柔らかな青い芝生の上にひっくり返ってしまいました。


 大丈夫?


「キャハッハハハ」


 モニカはでも、楽しそう。

 仔猫がモニカに優しくすり寄ってきました。お顔をすりすり。ごめんね。ありがとう。

 親猫も来て、仔猫をペロベロ。モニカのほっぺもペロペロ。


「ねこたん、ねこたん。いっしょに遊びまちょう」


 ニコニコ笑顔のモニカは、午後のおひさまいっぱいのなか、猫の親子とたくさん遊びました。


「お夕飯よーーー!」


 お城から、姉姫リジェルの声が。


「あい!」


 元気にモニカお返事。


「バイバイでち!」


 笑顔でサヨナラ。


 夕飯の食卓では、午後のお庭であったこと、メイドやお姉さんに笑顔ニコニコ、まるでおひさまがまた昇ってきたように話します。


 ほらね。


 リジェルはメイドさんに目配せ。

 メイドさんたちはほっと。

 お姉さんには何でもお見通しのようでした。


「今日もよく遊びまちた」


 ベッドに入ればもう、すやすや。


 あれ?


 なんでご機嫌ななめだったのかな?

 分かりませんね。

 きっとモニカにも分かっていない。

 おやすみ、夢のなか。明日もまた元気に。

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