ささくれ(東日本) [バキコとワンズ君④]
ハマハマ
ささくれ?
『別にユリちゃんと二人でラーメン食べてたから無視したんじゃないし』
え? そうなん?
「ならなんで無視すんだよー」
『だって……』
「だってなんだっつうのよ?」
『…………』
ラチあかねぇなこりゃ。
「いま家だよな? ひとりか?」
『……ひとりだよ』
「なら今から行くから! 待ってろ!」
『え――い、今から!? ちょ――ちょっと待――』
ラーメン屋で無視されてから、ひと晩考えてみたけどどうにも納得いかなくって逆に腹立ってきたんだよな。
なんで俺が不動産屋のユリちゃんと飯食ってんの見られた位でうじゃうじゃ悩まなきゃいかんのだっつうの。
あんなもん、近所のねえちゃんみたいなもんだ。
俺には全く悪いとこなんてねぇ!
――って事で突撃だ。
バキコんちと違ってオシャレさのカケラもねえアパート飛び出して、メット被って原チャリ飛び乗ってはい出発。
日曜の昼だ、道も混んでねぇ。五分もありゃ着ける。
なんつったって、バキコみたいに何軒も内見行ったりしてねぇからな。
俺の部屋選びの条件は、家賃の安さとバキコんちから近いって事だけだ。
…………あ〜……
でもアレだ。この五分だけでもホントに俺に落ち度がなかったか考えるか。
バキコんちの内見の時は、まぁ、割りと良い感じだったよな?
引っ越し手伝った時も、まぁ、特に問題なかったよな?
あれ? 二人で会うのそれ以来か?
あ……もしかして放ったらかし過ぎて怒ってんのか?
いやでも俺も結構忙しかったししょうがねぇよな?
あ……ユリちゃんと麻雀行く時間あるクセに、ってか?
ちょっと俺が悪かった気もしてきたな。
とりあえず顔見たら謝っとく……か?
そういや
まぁ、良いや。とりあえずなんで無視したんかだけ聞こ。
「着いたぞー。開けてくれー」
『開けない。会いたくない』
「なんで?」
『なんでって……その、そう、
は? ささくれ?
「ささくれ……――って何? それ病気か? おい! なんでもっと早く言わねえんだ! 大丈夫なのか!?」
「なんでささくれ知らないのよ! あんたどんだけバカなの!?」
バンっと勢いよく開いたドアで頭ぶつけるとこだったぜ。
「おい! そんな事よりささくれとか言うのどうなんだよ!? 痛むのか?」
めいっぱい心配してる俺をそっちのけで、バキコがなんだか呆れてる。なんでだ。
「ほんとにささくれ知らないの?」
「知らない。とにかく病院行くぞ。準備しろ。保険証あるか?」
ん? なんだ? おかしな沈黙作ってんじゃねえよ。日曜なんだ、救急探さなきゃいけねえんだぞ。
「ささくれってアレだよ? 爪んとこらへんの皮膚めくれて地味に痛いヤツ、だよ?」
「……――はぁ? そりゃ
ま、話をまとめると、だ。
西日本では「さかむけ」って呼ぶアレ、東日本では「ささくれ」って呼ぶんだと。しょうもねえ。
「んで? なんでささくれ
「…………言いたくない」
ラチあかねぇ。
「なら俺が先に言うぞ?」
「え? なんか知らんけど、どうぞ?」
「好きだ。付き合ってくれ」
「え――? え、そんな急に言う?」
「言う」
ラーメン屋で久しぶりにバキコに会った時と、
やっぱバキコといたいなって思ったんだもんよ。
「よし。返事あとでいいからさ、なんで無視したか教えろよ」
「いや〜。その、ね。私ら
してたな。すげぇ直球の下ネタのやつ。
「そんでさ、付き合ったりするとその、ね?
するな。なんならすぐでもしたいけど?
「私らほら、高校んときそんなだったから、もし付き合ったりしてさ、いざって時、爆笑して出来ないんじゃない? とか思ったらなんか照れちゃって……だって〇〇〇と×××とか呼び合ってたんだよ?」
なるほど。照れてただけなのか。
さらに一理も二理も三理もあるな。
けど平気だと思う。
だから言ってやる。
「安心しろバキコ」
「ん?」
「爆笑してもバキコとなら萎えない自信あるから、俺」
「それどんな殺し文句なん!!」
久しぶりに喰らったバキコのツッコミ。
やっぱコイツは最高だよな、色んな意味で。
ささくれ(東日本) [バキコとワンズ君④] ハマハマ @hamahamanji
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