第0.5話:極楽到着
「.....やっとだ.....」
同じ景色を見ながらひたすらに登るという苦行を、どれほどの時間が経ったのかわからないほどの時間おこない、遂に光が差す穴が見えた。
少し早い達成感を感じ、下を向くと、そこには汗だくの罪人が必死に登っているのが見えた。
.....少し嫌な予感を感じ、急いで登る。
光が差し込む穴の目の前に来た時、プチッという音が聞こえた。
その音が今登っている糸のものであると、直感で感じた僕は、瞬時に眩しくて見えない穴に上の位置の手を突っ込み、身体の外側に思い切り突き刺す様に動かす。
落ち始めると、穴の中の地面に引っかかる事が出来たのか、危機一髪で落ちる事なく宙吊りの状態になる事ができた。
腕を上手く使い、穴の中に入ると、水の中だった。
極楽の水とか悪魔にとって、良くない効果が有るかもしれないと思い、魔法を使って透明な足場を作り、水の中から出て、辺りを見渡す。
辺りは真っ白な蓮の花が多く水に浮かんでいる。多分此処は極楽の蓮池。確か蓮池は
落ち着いて考える為、透明な足場を使い、近くの地面に着く。
確か、頂上に極楽の統治しているお釈迦って言う奴がいる寺院がある筈だ。
そして、そこの寺院に天界に行く為に必要なモノが手に入る。
「ひとまず、この山の頂上にある寺院を目指すかぁ〜」
「なるほど。そこで天界へ行く為に必要な勾玉を手に入れ、三途の川へ行く訳ですね」
「そういう訳......ん?」
あれ?僕今誰と話し.....ん?
殺気も敵意も感じない.....そして声的に幼い女児か?それにしては感情が微妙に篭ってないような.....
声の方へ振り返ると、微妙な小ささ(155cm)をした女の子がいた。髪は部分によって長さが不揃いな暗い紫色。いかにも感情を表に出さない様な
.....確か極楽に存在する人型は主に、生きている間の徳が高すぎて、極楽の管理を任される事になったヤツと、普通に死んで極楽往生の為に待っているヤツの2種類だ。
....コイツはどっちなんだろう....若干悪魔の様な雰囲気も感じる。ただ、悪魔にしては人間味が無さすぎる。だとすると前者な気が.....それに、極楽に来る為には基本的にさっきの糸を登るしかない筈.....
「自分の正体に関する考察を重ねているところ失礼します。自分は、貴方に協力する為に送られた悪魔です。よろしくお願いします」
「.....悪魔なのか.....そうだとしたら、どうやって此処まで来たんだ?それに援護って、
「はい。自分は、ジンガンチさんに、貴方を協力する様に言われ、送られました」
「送られた?」
「はい、ジンガンチさんの知り合いに、極楽へワープできる方がおりましたので」
「.....僕わざわざ糸を登って来たんだけど?」
「ジンガンチさんに信頼されているのではないでしょうか。自分は身体能力はあまり高くありませんので。それに、あちらにも事情がありますし」
節約の為ねぇ.....アイツマジで覚えてろよ。
「はぁ、とりあえず当分は協力するわけだし、自己紹介をした方が良いと思うんだが、大丈夫か?」
「はい。それでは自分から致します。自分は、“ハイドレンジア”と呼ばれています。そのままでは長いと思うので、ご自由にお呼びになって下さい。自分は、戦闘はあまり得意では無いのですが、貴方に足りない部分を補う事が出来るらしいので、ご期待下さい」
「.....そうか。僕の名前はノイズ。悪魔としてかなり上澄みだと自負してる。よろしく」
悪魔の自己紹介は、基本的に自分の能力である、
これには、決闘の前に言うのは無粋であるという習慣と、敵に確実な情報が渡るのを防ぐ為である。
まぁ、それはそうとして、さっさと山登りを開始しないと....と、思った次の瞬間。
木々がザワザワっとした大きな音が鳴り、視界が一気に薄暗くなる。いや、視界というよりは辺りが影で覆われたような感じの為、上へ向いてみると、そこには直径10mはありそうな巨大な蜘蛛が空中を散歩していた。
恐らくコイツは、極楽蜘蛛と呼ばれる知性を持つ蜘蛛。恐らく悪魔である僕達の存在を感知して、やって来たのだろう。僕が登っている途中で糸が切れたのもその為だな。
「んじゃまぁ、ウォーミングアップといきますか」
僕はそう言い、魔力を練り始めた。
戦局のノイズ〜黒の糸〜 赤はな @kagemurashiei
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