第8話 一緒に

───数分前



「……会いたい。家の前に行くだけならいいですよね」


 そっーと私は、家のドアを開けて、ゆっくりと閉めた。彼の家の方を見るとエレベーターが開く音がした。


「あっ、えっ、白鷺さん?」

「……(お友達でしょうか?)」




***




「隣人さん、捕まえちゃった」


(ま、マジか……)


 帰ってくるのが遅いから心配していたが、まさか白鷺を捕まえているとは。


「すみません、萩原さん。家を出たら田野さんとバッタリと出会ってしまって」


 詳しく聞いたが、紬と白鷺は初対面だそうだが、白鷺は学校では有名人だ、紬は彼女のことを知っている。


 俺の家のインターフォンを押した時に隣のドアが開き、そこで会ってしまったらしい。


「別に謝らなくても。てか、紬、無理やり捕まえたんじゃないだろうな?」


「無理やり捕まえてないよ~。白鷺さんと話しててクリスマスパーティーやってるから一緒にやらないって誘っただけだよ」


 紬が、言っていることが本当なのか怪しいので白鷺の方を向くと彼女は、本当ですとコクコクと頷いていた。


 どうやら紬の言っていることは間違っていないようだ。


「白鷺さんも参加しよっ。今からお菓子パーティーだよ」


 ポンッと肩を持たれて、白鷺は、どうしようかと悩んでいた。


「……紬も優太も優しいから白鷺さえ良ければどうだ?」


「……参加したいです!」


「なら決まり! どうぞどうぞ」


 紬の家じゃないだろとツッコミたくなったが、俺は、白鷺を家に招いた。


 彼女をリビングへ連れていくと優太は、なぜか「やっぱりね」と言いたげな表情をしていた。


「いらっしゃい、白鷺さん。ちょうどいいタイミングだよ、今からお菓子パーティーだからね」


 玄関でやりとりしている間に優太はテーブルにお菓子を出してくれていた。


「ひよりちゃん、チョコ好き?」

 

「好きです」


「じゃあ、あーん」


「はむっ……美味しいです」


 紬とひよりは、この数分で仲良くなっていた。そしてなぜか餌付けされている。


「いやぁ~、まさか隣人がひよりちゃんとは。ってことは、あの可愛らしいお弁当は、ひよりちゃんが作ってたの?」


 紬が俺とひよりに向けてそう聞くが、彼女は、答えないのでここは俺が答えるべきなんだろう。


「そうだよ。毎日、作ってもらってた」


「へぇ~、そうなんだ。あのお弁当、やけにハート多かったけど、ひよりちゃんは、昴のこと好きなの?」


 紬が白鷺にそう尋ねると彼女は、頬を赤らめてコクりと頷いた。


(可愛すぎかよっ!)


 あれ、てか、今、好きって……いやいや、好きって前にも言われたし、これは、友達としてだよな。


「きゃーかわゆい。昴のどこが好きなの?」


「どこが……そうですね、私は、萩原さんの全てが好きです」


「お~もう告白!」


 好きと言われて目をそらしていたが、再び彼女の方へ視線を向けると白鷺と目が合った。


 この気持ちが何なのかもう気付いている。彼女といるとドキドキして、一緒に話して楽しいと思えて……誰かに取られたくない。


 近くにいる優太や紬、白鷺にまで聞こえそうなぐらい心臓がうるさい。






***






 12月25日、クリスマス当日。俺と白鷺は、駅前のイルミネーションを見に来ていた。


 クリスマスだからか家族や恋人といったたくさんの人が来ていた。


「人多いですね……手、繋ぎませんか?」


 白鷺は、手を差し出して、ニコッと俺に微笑みかける。


「そう……だな。繋いでいたら迷子にはならないだろうし」


 手を繋ぎたいとは言えず理由をつける。迷子になったらスマホで連絡し合えばいいだけだが。


 差し出された手を優しくぎゅっと握る。すると、白鷺は、微笑み、指を絡めてきた。


「綺麗です……」


 目の前にキラキラ輝くイルミネーションを見て、彼女は、呟いた。


 そんな彼女を見て、俺は先ほどの発言について聞くことにした。


「白鷺……さっき言ってた好きってどういう意味なんだ?」


 そう聞いてから彼女は、一言も話さず前へ進んでいく。


 人混みの中、綺麗なイルミネーションがある最後の場所まで来ると彼女は、立ち止まった。


「そのままの意味ですよ。私は、萩原昴さん、あなたのことが好きです」


 これを友達としての意味で告白されているとは思わなかった。綺麗な目で真っ直ぐと見つめられ、両手で優しく包み込むように握られる。


「……俺も白鷺のことが好きだ。付き合ってほしい」


 なんてタイミングの悪さだろう。近くにライトアップされていたものが消えて彼女の顔が見えなくなった。


 だが、頬に柔らかいものが当てられてそれが離れた瞬間、ライトアップされ、彼女の顔がはっきりと見えた。


「もちろんです。私も萩原さんと付き合いたいです。前に一度告白したときとは違います。今ならハッキリと萩原さんが好きで、萩原さんと付き合いたいです」


 人は触れあうことで幸せを感じることができる。彼女が言っていた通り、今、とても幸せだと感じた。


「うん、ありがとう」


「ふふっ、駅に戻るためにもう一度イルミネーションを堪能しましょうか」


「賛成」


 行きと一緒で手を繋いで同じ場所を通っていく。同じものを見たはずなのにさっきより綺麗に見えるのはなぜだろうか。


 ゆっくりと隣を見ると、彼女と目が合い、微笑み合った。

  






         【完】

完結です。ここまで応援ありがとうございます。

2万字以内に上手く書けるかなと挑戦してみましたが、やはりこれぐらいの長さの作品は書くの苦手です。終わり方が難しすぎます。次回作は、長編かな……。

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