第7話 クリスマスイブ
クリスマスイブ当日。紬と優太が来るまで、部屋の掃除をし、買ってきたお菓子を用意しておく。
去年のクリスマスもこうして3人で集まってクリスマスパーティーをした。付き合っているなら俺抜きでやった方がいい気がするが、紬も優太も3人でやりたいらしい。
去年も確か、俺の家でクリスマスイブの日にやった。クリスマスパーティーだったが、お菓子食べて話してただけだからお菓子パーティーになってたけど。
プレゼント交換もやって、今年もそれがある。紬と優太の分を先週買いに行ったが、2人が喜びそうないいものを買えた。
掃除も終えて、後は来るのを待つだけとソファに座るとインターフォンが鳴った。
座ったばかりだが、立ち上がり、モニターで確認後、玄関に行ってドアを開けた。そこには紬と優太がいた。
「お邪魔しまーす!」
「おはよ、昴。お邪魔させてもらいます」
2人をリビングへ案内し、各自持ってきたものを俺に紹介してくれた。
「見てみて、たこ焼き器~。材料買ってきたからやらない?」
「おぉ~、食べたい」
今年もお菓子だけを食べる予定だったが、紬のおかげでたこ焼きが食べられる。
「タコパだな。焼いたことあるひとー」
「はーい、あるよ~。昴は?」
「ないけど……」
「たこ焼き焼けないとモテないよ?」
「そうか、それは困った……。紬、焼き方を教えてくれないか?」
「全然困った顔してないし、モテるとかどうでも良さそう……。まっ、いいよ、教えてあげる」
「ありがと。優太は、焼いたことあるのか?」
「あるよ、小さい頃にね」
どうやら3人の中で俺だけがやったことがないらしく、紬に教えてもらいながら作ることに。
紬は、ウインナー、チーズ、キムチといろんなものを持ってきてくれたが、タコがなかった。なので、ちょうど家にあったものを使うことに。
紬に教えてもらった通り作ると上手く出来上がり、冷めないうちに食べることに。
「んっ、美味しい」
「だね~、あっ、昴、これ食べてみて」
紬は、端にあるたこ焼きを指差すので、俺はそのたこ焼きを自分の皿に乗せる。
すると、目の前に座る優太がなぜかニヤニヤしており、笑っていた。
(……怪しいな)
食べてみてと言われた瞬間にこれは何かされると思っていたが、もしやこのたこ焼きにはおかしなものが入っているのだろうか。怪しいが、食べてみよう。
パクっと一口で食べるとすぐに何が入っているかわかった。
「紬さんや、何を入れたか言ってみなさい」
「やだ、当ててよ。変なものじゃないからさ」
どうやら俺が当てるまで答えは教えてくれないらしい。
「わざび」
「せいか~い! よくわかっ──痛い!」
何がよくわかっただよ。俺がわさび嫌いなの知っていて、入れるとは。
チョップされた紬は、頭を押さえて、隣にいる彼氏さん、優太に抱きつく。優太は、苦笑いし、彼女の頭を撫でていた。
とにかく水が欲しい。わさびなんて嫌いで少しも食べないのにあの紬がすすめてきたたこ焼きは、まあまあ入っていた。
立ち上がり、キッチンへ水を追加しに行き、飲んではまた入れて、飲んではまた入れてと繰り返していた。
(最悪だ……)
口直しに戻ったらチーズとウインナーが入ったたこ焼きを食べよう。
「ごめん、昴。怒ってる?」
「怒ってないよ。けど、甘いものが欲しいかな」
「甘いもの、わかった! コンビニで買ってくるね」
「お、おう……」
紬は、俺と優太に今、欲しいスイーツは何かと聞いて周り、コンビニへ出掛けた。
優太と紬は、もう焼いた分のたこ焼きを食べ終えたようで俺は、残りの分を1人食べる。
その間に優太は、たこ焼き器を片付けてくれていた。
「昴は、明日、どのようなご予定で?」
「明日は、イルミ……いや、特に何も」
危なかった。イルミネーションなんて言ったら恋人と行くのかとかそういう質問が来てしまうところだった。
「そっか。昴も彼女作ったら2人で過ごしたりできるぞ」
「はいはい、そうですか。相手がいないから俺は今年も来年も1人だろうな」
恋愛に興味がないわけではない。白鷺といてドキドキすることが増えてから興味が湧いた。
白鷺のことは好きなのかわからないけど、誰かに取られたくないという独占欲があることに最近、気付いた。
「白鷺さんのことはやっぱ興味なし?」
優太が白鷺という名前を出してきて、少し反応してしまう。このやり取り前にもしたな。
「白鷺? 前にもその質問あったけど、何で白鷺なんだ?」
「だって、移動教室の時、よく隣の教室覗いて白鷺さんのこと見てるし」
「!」
学校で白鷺とは話すことがないからこそ彼女のことが気になって、通る時は、見ていた。それを優太に気付かれているとは。
「み、見てないよ……」
「ふ~ん、そう? けど、白鷺さん狙うなら覚悟決めないとな。彼女、人気高いし」
「……別に狙ってない。それより片付けありがとな。洗い物は俺がやっておく」
1人遅れて、たこ焼きを食べた俺は、テーブルに置いてある皿をまとめてキッチンへ持っていく。
「ありがと、任せるわ」
役割分担し、俺と優太は、雑談しながら片付け、洗い物をする。
全て終えると紬が帰ってくるまでテレビゲームをすることに。
「や~、昴、強すぎだわ。俺、昴にカーレースで一度も勝てたことないよな?」
「うん、ないな。それより、紬、遅くね?」
「だな。メール来てるかな……」
優太が、スマホを取りに行き、メッセージ確認の間、俺もスマホを手に取る。
電源をつけるとこの前、連絡先を交換した白鷺からメッセージが来ていた。
(白鷺?)
何だろうと思いながら通知をタップすると白鷺からは『ごめんなさい』とメッセージが。
(ごめんなさい?)
白鷺は俺に何か謝るようなことをしたのだろうか。された覚えはないが……。
「紬、もう帰ってくるって」
「そうか、良かった」
コンビニはここから近いはずなのに紬の帰りが遅く、心配だったが、帰ってきていることを聞いてホッとした。
紬は鍵を持っていないので、ピンポーンとインターフォンが鳴った。
「俺が出る」
「おー」
急いで玄関へ行き、扉を開けるとそこには紬がいて、そしてなぜか後ろには白鷺がいた。
紬は、白鷺の手を取り、俺に向かってうっすらと微笑んだ。
「隣人さん、捕まえちゃった」
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