第4話 こんな僕も居た。
僕がこの会社に入社してから1ヶ月が過ぎてもうあの頃の桜はもうすっかり葉桜になっていた。5月、会社の前の通りにはハナミズキが咲いて白く可愛らしい花を咲かせている。
会社の人たちはGWの話だったり旅行の予定を立てている話もちらほら聞こえてくる。
「松下は連休の予定はどうするんだ?実家に帰るのか?」上司が僕に聞いてきた。
「僕はまだ考え中ですかね。実家に帰っても何するわけでもないですし…」確かに実家に帰っても家の手伝いをさせられたりとか正直面倒くさいところもあった。
「どこかぶらりで歩いてみようかなって思ってます。土地勘もあまりないですし?」
「そうか。それならばここ行ってきたら良いぞ?」そう上司から勧められたのはここから少し離れた温泉街だった。「日帰りで帰ってこれるし息抜きにはなるさ!」そう言われ見てみると街並みはレトロな雰囲気を出していて和服を着て何泊か滞在したら最高なのではないかと考えさせられる様な温泉街だった。
「良いですね!行ってみます!」折角勧めてもらったんだ。行ってみよう!言われてすぐ今使っている手帳にメモを残し連休を密かに楽しみにしていた。
そうこうしているうちに連休に入り上司から勧められた温泉街に向かった僕は下調べで決めていた温泉へ。時間も午前中だったこともあり旅行客も少なく街並みとも合間って独特な雰囲気を醸し出していた。まるで僕一人昔の世界へタイムスリップしたかの様な…非現実的な体験をし僕は自然の匂いと温泉街に流れる小川のせせらぎ。ご飯屋さんの
「僕ってこんな……」
「…さてそろそろ帰ろうかな。」そう思いお昼頃適当に入ったご飯屋さんを出る。
「おはよう御座います!!温泉教えてくれてありがとうございました!連休中に行ってみたんですけど凄く良い雰囲気で自分に無い感情が出てきました!!」
「そうか!それはよかった!!」
素直な自分の感想に上司もご機嫌そうだ。社内の人たちともこうして皆んなで旅行してるのだろうか?女性よりも男性が多い職場で旅行…んー。そうなれば皆んなで行くのかな?
そんなくだらなそうな疑問を一人自問自答をしていた。
業務の休憩時間、社内の自動販売機へ向かうとあの事務の香苗さんがいた。
「お疲れ様です!」
「あ、亮太くん。お疲れ様。」
「コーヒーですか?ん?紅茶ですか??好きなんですね!自分はまだ苦くってあんまり得意じゃ無いです…」
「そうなの?もうちょっと時間が経てば分かると思うよ。じゃあね。」
周りから見ればなんでも無いただのたわいない話し。僕からすれば初めて2人で話したという強く印象に残る会話。
そう言って別れて離れていった香苗さんの手にはタバコが握られていて飲み物を持っている手の方で僕に手を振ってくれた。
なぜだろうかおぼろげに惹かれるものが香苗さんにはあった。
「タバコかぁ…僕も吸う様になるのかな。喫煙所で香苗さんと話したいなぁ。」そんな妄想に1人ニヤケ顔をしながら僕は自分のデスクへと戻った。
時間も夕方になり後少しで今日も終わる。今日の夜は何を食べようかな。香苗さんのことご飯に誘ってみようかな?どうしようかな?まだ早いかな?
また1人妄想してるうちに気づけばもう香苗さんは帰ってしまっていた。
「はぁ。また次機会があれば誘ってみよ…」
「お疲れ様でしたー!」今日もコンビニかなぁ…
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