KAC20244とあるささくれの出所

🗡🐺狼駄

ささくれの何が悪いってンだ、アァンッ?!

 俺様はなあ、この中年オヤジの右手中指で50年ささくれやってんだ。


 この野郎大雑把にも程があってよぉぉぉ! 俺様が擦れるのウゼェって、毎度毎度ブチッ! って引き千切りやがる。


 そのクセ「痛ってぇな、血が出ちまった!」てキレやがる。


 当たり前過ぎんだろうが、このスカタンがよぉぉぉッ!


 しかもそのまま放置プレイしやがるから傷口が腐って「痛てぇ、痛てぇ」って文句タレやがる。


 ほんっとに意味分かっんねえッ!


 それにだ、益々どうかしてんじゃァァァねえのかッ! てっなるのが、ひっぺがした俺様をテーブルの上に置いて眺めながら決まってこう曰うんだ。


「………ったく、こんなにデカくなりやがって……」


 なーに感慨深げに見つめてんだっ? テメェが無理矢理引っ張るからいけねぇんだろうが。


「……あっ、これはこれは右中指のささくれさん。ども、お疲れです」


「おっとぉ、そう言うてめぇは、左人差し指のささくれだな」


「ど、ども……お互いやってらんないッスよねぇ……」


 ………ンンッ? 何だ此奴、元ささくれのクセに馴れ馴れしい顔しやがる。


「やいやいやいッ! いってぇどのツラ下げて御近付きになろうってんだッ!」


「え……だ、だって同じささくれ仲間じゃございませんか。一体何をそんなにてんスか?」


「………おぃ、誰が旨いことを言えと。いやいやっ、ちっとも旨かねぇッ! 俺様はなぁ! テメェんとこの、人差し指の旦那にいつもいつも剥がされてんだッ!」


 そうだ、俺様は右手の中指から出所してんだ。中指様はなぁ……虚弱で不器用なお人だから、左手のささくれ相手にゃ、ちょっかいは出せねぇって寸法よ。


「シマが違ぇ奴と仲良くやれるかってンだッ! バァーローッ!」


「し、し、し、シマぁ? ええ……こ、この人何だか怖いよぉ。大体出所って何なん? あああっ! 血が付いてるっ!? 出所ってそういうっ!? こっわ!」


 ………ハァァァッ!? いやいや待て待て。


「テメッ! 待ちやがれッ! ………っておっさん! 俺様はソイツに様があんだよッ! ゴミ箱に入れんなァァァァッ!!」


 ………お終い。


 はぁ、この右手中指のささくれ…………。


『どうしてくれようか……ヒヒヒッ』


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