修復

 過食の日々の中、出会えて良かった本がある。 

 私は悩みがあると、それをテーマに描いている小説を読みたくなる。

 過食がテーマの小説なんてある? と思ったが、見つけた。

 松本侑子著『巨食症の明けない夜明け』

 絶版とのことなので、古本屋で文庫本を購入して読んだ。

 思いっきり泣いた。表紙が、大きなケーキの絵だと思っていたが、イチゴの代わりに膝を抱えた女の子がいると気づき、さらに泣いた。

 でも、過食症がこんなに文学的な作品になるなんて、と救われた気持ちにもなった。

 今でも、好きな小説は? と聞かれたらこの本をあげたい(聞かれることは今のところない)


 知らぬ間にささくれはできる。

 それに気づいて、根本から切ったりクリームを塗ったりケアすればいいのだけど、無理にはがしたり、ほっといたら服などに引っかけて血が出てしまうことがある。

 ヒリヒリしたり、腫れたりして、後悔する。

 それでもいつの間にか修復し、元に戻っている。

 振り返ると、そんな経験だった。(漂うこじつけ感……)


 今思えば、「いつの間にか」の「間」に、優しい面接官の男性(この方は、最初に名乗られた時に聞き取れず、名前を認識できなかった。残念)や、転職サイトの大石さんや、タクシー運転手さん(思えば、車内に名前が記されていたはず。認識していない。すみません)の存在があったから修復できたのだと思う。

 独りだと思っていたけれど、そうではなかった。


 そして、現在の私は親の見てないところで小説を書いている。

 仕事から帰って、ずっとスマホをぽちぽちしているので、親に見られたら絶対に怒られるだろう。でも過食よりは健全かと。

 ……もっと早く小説を書こうと思っていたら。ストレスを食べることではなく、小説にぶつけられていたら!!

 ……と思うけど、過去のことは仕方ない。こんな経験があって、『月と食べ過ぎ』という俳句集?を公開したり、今回のお題のネタが見つかったりしたわけだし。


 長々と暗い思い出を綴ってしまいましたが、読んでくださった方、ありがとうございます。


 今、食欲が抑えられているかというと、そうではない。小説を書いたり、読んだりすると頭を使うから糖分が欲しくなる。つい、チョコレートを食べ過ぎてしまう。気をつけなければ。


 とは言いつつ、この話を書き終わったら、甘いものを食べながら面白そうな小説を心ゆくまで読みあさろう。

 それが今の私の一番幸せな時間だ。

(完)

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親の見てないところで いととふゆ @ito-fuyu

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