XXIII .闇のオークション
ディコイに連れられた店でスーツに着替えた俺たち……。どこからどう見ても……前世でいうホストにしか見えない。
「ディコイ……本当にこれで大丈夫なの?」
「すっごく様になってるよぉ。仕上げにこれを着ければ……ほぅら完璧!」
仕上げに、と言いながら差し出されたのは、真っ黒なサングラスだった。
「おいおい……これから夜に出歩くのに、こんなの着けてたら怪しいじゃねぇかっ!」
「……炎魔はバカなの?……あっ、ごめん。バカだったわぁ」
「くそやろぉ……」
「もぅ……」
いつものように炎魔とディコイじゃれあいを止め、俺は炎魔に向かって話した。
「潜入するには、格好もビシッと決めてないと!怪しい雰囲気を出してないと、オークション会場には入れないんだよ、きっと」
「そぅそぅ、トラガ言う通りぃ」
「それなら……我慢すっか」
「これから会場に向かう訳なんだけど、少しでも変な動きをすると追い出されるからね!気をつけてね」
――この中で1番変な動きしそうなのって、確実に炎魔だよね……。ディコイ……炎魔を見てる、というか……その笑顔が怖いよ……。
外はすっかりと暗くなっており、サングラスをかけることで視界は悪かったが、なんとかディコイに付いていくことができた。
ディコイが足を止めた先には地下へと続く階段があった。どこか不気味な雰囲気が漂うその場所は、いかにも非合法のオークションが行われててもおかしくない、そんな場所だった。
階段を降りて行くと、扉の前にはスーツを着た2人組がいた。彼らがいわば門番なんだろう……そう思いながら俺たちは扉に近づいた。
「失礼……。貴殿方が招待されているか確認させていただきます。お名前をお知らせ下さい」
――この状況、本当にやばいよ……。名前なんか言うと……即退場じゃん……。ディコイ、どう対処するんだ……。
炎魔と俺は、ここに来る道中で散々口止めされていた。
口を開けば余計な事を言い兼ねないらしい……。俺まで口止めされるとは予想外だったが、ここは大人しく従うことにした。
パチンッ――
ディコイが指を鳴らすと、門番をしていた2人組の態度が一瞬で変わった。
「お待ちしておりました、ディール様。どうぞお通り下さい」
――ディ、ディール?……誰それ?
聞きたくても口を開かないように気をつけ、扉が閉まったことを確認した後、小声でディコイに尋ねた。
「何が起きたの?」
「僕の治癒能力応用さぁ。指パッチンで、相手に僕が別人だと思い込ませたんだ」
――いやいや……片目ウィンクじゃないんだよ!
こうして無事にオークション会場へと潜入できた俺たちは、目立たない場所を探し、腰掛けることにした。
会場内は全体的に薄暗く、ステージだけがぼんやりと明るく照らされていた。
「なんか……こんな所にどんな人が来るのか気になってたけど……まじでヤバイんじゃねぇの!」
炎魔は席に着くなり、辺りをゆっくりと見渡し、小声で話し掛けてきた。
俺も気になって周りを見るも、会場にどんな人たち来ているのかはわからないようにカモフラージュされていた。
「ってか、どんな人たちがきてるかわかったら一網打尽に取っ捕まえられるんじゃないの?」
「そうでした……」
しょんぼりする炎魔を見ていると、凝り固まっていた緊張が解れる気がした。
しばらくすると、薄暗く照らされていた明かりが消され、ステージが明るく照らされた。
「今宵はようこそお越しくださいました。我々一同、皆様方にご満足していただける品を取り揃えておりますので、どうぞごゆっくりお楽しみいただけますと幸いです」
場内に響き渡るアナウンス――。
仮面を着けたスーツ姿の男がステージ中央に姿を現した。
そして、彼の合図とともにオークションが始まった。
出品されている品は様々。
一時的に力が増強する違法的な薬剤、毒性の強い弓矢の素材、魔導師が使っていたであろう闇の魔導書など、普段ではお目にかかれない品ばかりだった。
「さぁ、続いての品はあの我らにとっては手強い手強い、魔獣のお披露目です!」
その情報を聞いた俺たちは、互いに顔を見合せ頷いた。
――手強い魔獣……もしかしたら黒魔獣の仲間かもしれない……。
会場内に緊張が走った。
ステージ奥から運び込まれた檻にライトが集中し、中に閉じ込められている魔獣の姿が照らし出された。
「……あれはっ!」
予想通り、黒魔獣の姿がそこにはあった。
『グルルッ……グルルッ』
威嚇して鳴き声を上げているのだろうか……。だが、どう見ても様子がおかしい……。
「あいつ……すげぇ弱ってる」
魔獣の異変には俺たち皆気づいていた。
「身体中に傷がある……」
「……なんて酷いことを」
心配する俺たちとは違い、会場内では歓声が上がっていた。
観客の反応を見ていた仮面の司会者は、声のトーンを上げ、得意気に話出した。
「こちら、かの有名な黒魔獣です。生きたまま捕獲され、このようにイキイキしているのは大変珍しいです。そしてこの黒魔獣とセットでご購入をおすすめしたいのが、こちらの秘薬です」
台に乗って運ばれてきたのは、藍色の怪しい薬品だった。
「なんだあれは……」
「こちらは、この黒魔獣力を倍増させるだけではなく、我ら人間の指示に従う保証まで付いております。これまでになく画期的な代物です。さぁさ、皆様~いかがですか」
さきほどよりも大きな歓声が上がり、これまでで一番の盛り上がりを見せていた。
「あいつら……」
炎魔が怒りを爆発させそうであり、それをディコイと2人で押さえ込むのに必死だった。
すると、隣から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「おやおや……これはこれは皆さんお揃いで……」
感じる殺気に俺たちは隣を見た。
あろうことか、そこには久遠とキールを伴った男の姿があった。
「お前……」
炎魔が睨み付け、威嚇するのにも動じず男は続けた。
「久しぶりだね、虎牙。この姿で会うのは何年ぶりかな」
「……一樹、本当に一樹なのか……」
俺の目の前にいたのは、あの時一緒に遊んでいたプレイヤーのまんまの姿をした、一樹の姿だった――。
》》》》》
to be continued……
永遠(とわ)の友情∞尊し絆 ~ゲームの世界に転生した俺が、攻略対象のボスとタッグを組み、裏ボス攻略に臨む!!~ 虎娘 @chikai-moonlight
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