JKに擬態している宇宙人の居候が、「ササクレ見に行こうぜ」と誘ってきた。

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

「ササクレ見に行こうじぇ」

「ケンジ! ササクレ見に行くじぇ!」


 独特の口調で、ピポラがオレに伝えてきた。


「ささくれ? ちょうどできたところだぞ。ほら」


 寒いし、魚が高くて食えないから、ちょうど指にささくれができている。

   

「違う。そっちじゃなくて、今の季節に見るもんだじぇ!」


 ピポラが首をブンブンとふる。

 そのたびに、青白い髪が揺れた。

 

 ピポラは見た目こそ普通のJKであるが、髪の毛はショートながらブルーである。

 目には幾億もの星が、またたいていた。


 彼女は、遠い星から来た宇宙人なのである。


 オレがピポラを紹介してもらったのは、三週間前のこと。

 高校に上がる前の日だ。


 拾ってきたのは、姉貴だった。

 UFOが壊れたので、修理が済むまで住むところを都合してほしいとか。

 居住スペースは一応、あったらしい。が、ちょっと目を離したスキにフロの湯が溢れて、動力源もろともダメになったのだ。


 姉は拾ってきたはいいが「大学の寮に連れて帰れない」という。

 なので、わざわざ遠い実家まで連れてきたのだ。


 まったく、姉の無計画さと来たら。

 

 とはいえ、両親や学校は、宇宙人であるピポラを快く受け入れてくれた。

 テレパスかなんかで操作しているようなのだが、人体に害はないという。




 それにしても、「ささくれを見たい」って。

 本物のささくれでも、ないみたいだし。

 いったい、何が見たいんだろう?

 

「じゃあ、ケンジ。一緒に弁当作ってくれ」


「よし。おにぎり弁当でいいな?」


「おう。おめえのオイギー、大好きだじぇ」

 

 オレは、おにぎりの作り方を、ピポラに教える。

 

「ササクレって、弁当を食いながら見るものなのか?」

 

「そうみたいだじぇ。シチューの図鑑だと、そう書いてある」


 シチューの……ああ、「地球の図鑑」か。


 こいつは宇宙人だからか、ときどき口調が変なんだよな。

 おにぎりは「オイギー」って発音するし。


 だとしたら、「ササクレ」ってのは……。



「わかった。待ってな」

 

 鶏の唐揚げと、一口大に切ったハンバーグと、タコウインナーを詰める。

 余ったスペースには、ポテサラやプチトマト、ブロッコリーなどを。


「できたぞ。連れて行ってくれ」


「まかしぇろー」


 ピポラがオレの手を引いて、公園に連れて行った。


「やっぱりか」


 

 オレは満開の桜を、ピポラと一緒に眺める。


 ビニールシートを広げて、桜の木の下で弁当を開けた。


「キレイだじぇー」


 散っていく桜の花びらを、ピポラがウットリした目で追いかける。


「これを、大好きな人と一緒に見に行きたかったんだじぇ」


「そ、そうか……」


 桜の木を見上げるピポラを、オレはキレイだと思ってしまった。

 おにぎりで口をパンパンにしているのに。

 

「どうした、ケンジ?」


「なんでもねえよ。ほら、ごはんつぶ」


 オレは、ピポラのほっぺたについたおにぎりの粒を取ってやる。

 

「んだよー。ちょっとドキッとしちゃったじゃんよー」


「ただのごはん粒だよ」

 

「あっ!」


 突然、ピポラが目を真ん丸にして口を開く。

 

「どうした、ピポラ?」


「おにぎりで、思い出したじぇ!」


「なにを?」

 

「オイラ、『桜もち食おうぜ』って言おうとしたんだった! ピンク色のおはぎに、あんこが入ったやつ!」


 色気より食い気!? 

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JKに擬態している宇宙人の居候が、「ササクレ見に行こうぜ」と誘ってきた。 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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