しまかぜ荘と林間学校? Day1 午後編
ご無沙汰してまーす、光村あずみです!
まあ、私たちの世界では、全然時間が進んでないんですけど……。
さて、前回はハイキングをしたんですが、瑞希があまりにも貧弱すぎて。本当は一発かましてやりたかったんだけど、余計に遅くなりそうだから、やめた!
下山したら、施設に入所する。そして、あらかじめ決めておいた(というか、先生に決められた)部屋へ入り、荷物の整理や布団の準備をする。
私たちの部屋は、小さい部屋。ふつうは、このサイズの部屋はベッドなんだけど、なぜか布団。どういうことだ!……まあ、消灯時間の後にこっそり話をしやすいんだけど。
で、メンバーが……。班で分けてあるんだけど、幸本さんと田浦さん、そして私と、もう一つの班の女子が加わってる。
準備をし終わったら、食堂へ向かう。食堂では、班ごとに分かれて座る。
唐揚げのいい匂いがふんわりと漂う。う~ん、幸せ。
「いただきます!」
藤堂が挨拶をして、食べ始め……ようとしたけど、瑞希に食べ物を分ける。
「はい、瑞希。あんたはもっと食べて強くなるのよ!」
「ちょ、やめてよ~。今の時代、強くなっても何の意味もないし、僕が残すと食品ロスになるよ?」
「……」
私は、言い返せない。
それに、柔道に日々勤しんでいる藤堂なんて、真っ白い灰になっている。
――ご愁傷様……。
手を合わせて慈しむ心を最大限に表現したあと、大人しく夕食を食べる。
しばらく無言で食べていたのに、憲一がこの静けさをぶち破った。
「ちょっと、藤堂君!その食べ方はやめたまえ!ほら、僕のように優雅に食べることはできないのかね?」
復活し、ガツガツとかきこむようにして藤堂はご飯を食べる。
……私たちは、藤堂の食べ方より憲一のやかましい怒鳴り声のほうがだいぶ迷惑なんだけど。
「……聞いているのかい?」
藤堂は、なおも黙々とご飯を食べている。
そして、カツンという小気味いい音を立て、空になった茶碗を置いた。
「さっき、なんて言った?ちょっと、聞こえなくてな」
口調は軽いものだが、有無を言わせぬ迫力を感じさせる。
「あ、ああ……気のせいじゃないのかい?は、はは……」
「……アメイセンソウ」
田浦さんが、ぼそりと言った。……何のことだろう?
お風呂も入ったし、次はキャンドルファイヤーよ!
体育館で大人しく座る私たち。
「はい、これ、どうぞ~」
先生が、みんなにろうそくを配る。
全員に配り終えたとき、順番に照明が消されていく。
そして、完全な真っ暗闇になった。
しばらくして、校長先生が入場し、各クラスの学級委員に点火する。そして、だんだんと明かりが広がって――。
あれ、瑞希は――?
隣の藤堂に言う。
「ねぇ、瑞希がいないんだけど」
「はぁ?……本当だ。点呼の時は、いたのに。……田浦も、どこに行ったんだ?」
後ろを振り返ると、確かに田浦さんがいなくなっていた。
私たちが困っているのに気が付いたのか、先生が話しかけてくる。
「どうしたの?光村さん。それに、藤堂君」
「……瑞希と田浦さんが、いないんです」
「えっ?……ああ、それなら、大丈夫よ。気にすることもないわ」
――えっ?
先生は、まるで二人がいなくなることを知っていたかのように言った。
そのとき、最近、瑞希が言ってたことを思い出した。
「――この番号を覚えておくと、役に立つかもね」
瑞希が言っていた数字は、とっても長くて、複雑で。でもどこか聞き覚えがあるような気がして。
そして、今回の事件で、妙に引っかかって。
やっと、それが電話番号のことだと気づいた。聞き覚えがあったのは、「090」があったからだと思う。
瑞希の言うことだから、覚えた方がいいのかなと思い、今の今までひと時も忘れたことがない。
その番号で、いなくなった瑞希――あと、田浦さんと話せるような気がした。
――でも、なんで瑞希は電話番号の事なんか言ってたのかな?
しまかぜ荘の毎日 emakaw @emakaw
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