しまかぜ荘と林間学校? Day1 午前編
お久しぶりの登場となってしまいましたね、光村あずみです。
では、恒例の自己紹介を――(いつから「恒例」になったのでしょう……?)。
私は、容姿端麗で成績優秀の中学一年生。……うそじゃ、ないからね?
あと、一応。一応、推理小説が好き。好きな作家さんの作品ばかり読んでるし、推理力も皆無(あれ、成績優秀だったんだっけ、私)だから、変な期待はしないでいただきたい。
さて、今日は待ちに待った(?)林間学校!
一番気になるのは、夜のキャンドルファイヤー。もちろん、瑞希と一緒に楽しむ。
ちなみに、ハイキングとか野外炊事には全く興味がない。私が好きなのは、「楽しむ」ことだけだもん。
「あずみちゃん、張り切ってるね」
バスの隣の席に座ってる瑞希が話しかけてくる。
「まあ、あんたの言う30%は合ってる。私は、林間学校の全てが楽しみなわけじゃないの」
「……はあ」
まあ、こいつに何を言っても通じないだろう。
「はーい、みんな静かにー!遠足じゃないんですよー!」
先生が叱る。
もちろん、こんな若い女の先生の言うことなんか聞くはずもなく、みんなは気にせずしゃべり続ける。
――……あんたら、先生がかわいそうにならない?
「では、施設の方に挨拶をしましょう。よろしくお願いします!」
学年の代表の人が司会をする。
それに合わせて私も挨拶をするんだけど、全然話は聞いてない。
「――はい、ありがとうございました。じゃあ、三組のみなさん、今からはハイキングです!私についてきてくださーい」
あ、ちなみに私たちは三組ね。
山道に入ってすぐ、瑞希の息が荒くなってきた。
「瑞希、大丈夫?」
「はあ、はあ……。これ、で、大丈夫に、見える?」
ああ、もう!これだから、貧弱男は(あ、そうか、瑞希って男だったのか)!
しょうがないから手を引いて歩こうかと思ったけど、みんなの目の前だと気まずいのでやめておく。
――頑張るのだよ、瑞希。
私は、瑞希に生あたたかい目を向ける。
「え、ちょ、あずみちゃん!?一緒に、行って、くれないの?」
もう、こいつの言うことは、虫!……ああ、じゃなくて、無視!
しばらくして、頂上に着いた。
「わぁ、やっと着いたーっ!……あれ?瑞希くんは?」
班長の幸本さんが言う。点呼をしないといけないので、班のメンバーが全員そろっているか確認しているのだ。
「もっと後ろにいると思う。あと、あいつには『くん』をつける価値はないから」
「もう、あずみんは瑞希くんに冷たいなぁ~」
ああ、ノリが軽い人って本当に疲れる……。すべて「冗談、冗談~」の一言(いや、二言かな?)で済ませてしまう。
「……お、瑞希来た」
「瑞希くん、遅いじゃないか」
藤堂と憲一(憲一郎だっけ?)が口々に言う。
瑞希は、酒を飲んで酔ったみたいに顔が赤い。汗をかいたのか、髪の毛もびしょびしょ。
「……のろま」
「はいはい、田浦さん!ポジティブに、ポジティブに!」
同じ班になって初めて気づいたんだけど、田浦さんはたまに変なことを言う。
うちの学校は、ポジティブでいることを大事にしている。だから、田浦さんはよく幸本さんに注意されている。
「それより、憲一。女の子口説いてなんかいないで、お昼ご飯食べようよ」
私がそう言うと、憲一(?)がすごい形相でこちらを見てくる。
「僕の名前は憲一じゃなく憲一郎だ!その呼び方を直してくれないかい!?」
「ああ、わかったよ。憲一」
こいつ、名前が美川憲一に似てることをかなりコンプレックスに思ってるみたい。
みんな、思い思いの場所に敷物を敷き、弁当を食べている。
――先生、「遠足じゃない」って言ってたけど、この見た目だと確実に遠足だよ。
そんなことを思いながら弁当を食べ、時間が過ぎていった。
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