しまかぜ荘と林間学校? 班決め!編

 やっほー、光村あずみです!

 まだ中学一年生になったばかりなのに、もう林間学校ってどういうこと?

 ……知らない人と行くの、やだなあ……。


「はい、みなさん!今日は、林間学校の班を発表します!」

 今川先生が言った。

 この人の声は、人を不安にさせる。……はたして、林間学校はうまくいくのだろうか?

 クラスメートを見ると、みんなうきうきした表情だ。先生が席を書いた表を黒板に張り出すと同時に、一斉に黒板の前に集まった。

 そして、一秒間の沈黙。

 次の瞬間、みんなが声をそろえるかのように叫んだ。

 それは、歓声?悲しみ?それらにかき消されたため息?

 みんなが去ってから、私も黒板の紙を見る。

 私は、前から二番目の席。その後ろには、瑞希。隣は、前に話しかけてきた美川憲一郎。あとは……田浦たうらさん……。

 

 田浦さんは、私と同じ小学校だった。

 学校で一番の美少女で、上級生、下級生……いろんな人から、ラブレターをもらってた。

 田浦さんは、あまり人とは関わらない人で、基本図書室にこもっている。

 ――人と関わらないっていうのは、私とは唯一違うところね(お前、そんなにかわいいか?っていう異論は認めません!)。

 うーん、あの人、あまり喋らないから、ちょっと心配。


 田浦さんのほかは、全員知らない人だった。多分、他の小学校から来たんだと思う。


 とりあえず、すばやく席を移動する。

 みんなが席を移動し終わったとき、先生が手をたたいた。

「みなさーん!同じ班の子とは仲良くなれそうですか?不安な子も、これで大丈夫です。今回は、先生がレクを用意しました!今から、班の形に机を動かしてくださーい」

 ――不安な子も、これで大丈夫って言っちゃっていいのか?余計怖いぞ。

 そう思いながらも、大人しく机を動かす。

「では、ルールを説明します。まず、自分の名前などを先に紹介してください。そのあと、自分についてのクイズを四問出題します。例えば、『好きな食べ物は何でしょう?』とかです。答えは、三択にしてください。――質問は、ないですか?それでは、始めましょう!よーい、スタート!」

 あああ~ちょっと待って、展開が早い……。

 そんなことを思っていたら、班のうちの一人が声をあげた。

「えーと、よろしく!私、幸本紗江ゆきもとさえ。班長だよ!あ、私からでいい?」

 このクラスでは、班長を先に決めて、班を決めた。

「じゃあ、私から言うね。うーん……私の好きなことは、何でしょう?一……」

 幸本さんがここまで言って、私は聞くのをやめた。

 このレク、私が苦手なタイプだ。

 なんで、初対面の人に対していろいろ喋んなきゃいけないんだろう?

 あとは、みんなに任せた!うん!


「あずみちゃん」

「へ?あ、瑞希」

「あずみちゃんの番だよ、喋んなきゃ」

 ……すっかり忘れてた。

「あー、光村あずみです。隣に座ってる瑞希と同じアパート?に、住んでます。えっと、問題……こ、このなかから……」

 駄目だ。初対面の人、苦手だ。

 しかも、知ってる人は瑞希以外で田浦さんしかいない。

「はいはーい!三番の、ミステリー!」

「あ、幸村……さん、正解です。次……次は、……」

 っていうか、先生、四問って多すぎない?時間的にも一問が妥当だったんじゃない?


 ――帰り道。

「あずみちゃん、駄目だよ。ちゃんと話は聞かないと」

「……げ、バレてたか」

 まあ、瑞希ならわかりそうだけど。

「どんな感じだった?班のメンバー」

「……全員の話、聞いてなかったの?」

「ち、違うよ!幸村さんの話は、聞いてたし」

 うん、嘘は言ってない。

「だからさ、幸村さんと憲一郎じゃないほうのもう一人の情報だけでいいから、教えて」

 私は、できるだけかわいい声で言う。

「……しょうがないなあ」

 よし、これで私の勝ちだ!

「えっと、藤堂信彦とうどうのぶひこ。柔道をしていて、日ごろからトレーニングしてるらしい」

 ……ふーん、弱っちい瑞希にはぴったりじゃない。


「じゃあ、また学校でね」

「またねー」

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