しまかぜ荘と林間学校? 入学編

 光村あずみです。……覚えてる?

 私は、今日からピカピカの中学一年生!ドキドキや不安もいっぱいだけど、みんなで一緒に頑張ろう!

 ――っていうタイプじゃないのよ、私は。

 嫌だから、嫌。好きだから、好き。それをねじ曲げようとはしないのよね。


 まあ、瑞希と同じクラスだったらいいかな、とは思ってる。

 え?なんで、瑞希と同じクラスがいいんだ、って?ま、まあ、それはどうでもいいじゃない。

 とりあえず、今日は入学式!張り切っていこうじゃないの!


 中学校に着いた。

 昇降口には、クラスのメンバーの紙が貼られていて、多くの人が集まっている。

 ――えーっと、「光村」……「光村あずみ」っと……。

 あった!

 一年三組、二十四席。瑞希も、同じクラスだ!

 ちょっとうきうきした気分で、教室へ向かう。

 途中で、瑞希に会った。

「あ、瑞希」

「ああ、あずみちゃんか。同じクラスだったね」

「うん。……制服、似合ってるよ」

 私が言うと、瑞希は、一瞬ぽかんと口を開けた。まるで、私の言っていることが理解できないというかのように。

「……ありがとう」

 そう言って、あいつは逃げるように教室へ行った。

 ――なにも、逃げるようなことしてないじゃない。

 

 教室には、見慣れた顔もあったけど、全然知らない子もいてどぎまぎした。

 私が席に着くと、前の席の人が急に振り返って、話し始めた。

「やあ、いい天気だね。僕は、美川憲一郎みかわけんいちろう。これから、よろしく頼むよ」

 ――はあ。……こいつって、ナルシスト?

「……あ、はい。よろしくお願いします」

 どんな関わり方をすれば分からなくて、敬語で話してしまった。

 ……美川憲一郎?美川憲一?こいつの両親って、美川憲一のファンなのかな。

 そう思っていたら、前の方から声が聞こえて、びくっとする。

「みなさん、初めまして!今日からあなたたちの担任になる、今川ゆきのです!初めて先生になって、この中学校に来たので、まだわからないことだらけです!みなさんのように、不安な気持ちでいっぱいです。でも、これから始まる中学校生活、楽しんでいきましょう!」

「おー!」

 一部の男子が、先生の言葉に反応する。

 みんなが「おー!」と言うと思っていたのに自分たちだけだったという恥ずかしさで、うつむいてるけど。

 ――でも、こんな先生で大丈夫なのかな?

 教師なら、ある程度は知っていてほしい。「わからないことだらけ」って言われても、共感どころか心配になっちゃうんだけど……。どっちかというと、小学校の先生みたい。

「さて、今からは入学式です。先生が案内するので、そこについてきてくださいねー!……先生が、道を間違えるかもしれませんが!」

 ……笑いは、おきない。というか、笑えない冗談だ。

「……ゴッホン!では、並びましょうか」

 咳払いをして、先生はそう言った。

 その言葉で、みんなは一斉に並び始める。


 ――ああ、私って、本当に中学生なんだ。

 今さら、実感した。


 ……あのね、申し訳ないんだけど、入学式の記憶、ほとんどない。

 緊張……してたのかな?それすらも、覚えてない。完全に、意識が吹っ飛んでたんだと思う。

 入学式の後、教室でいろんな説明を聞き、各自で家に帰っていった。


「ねぇ瑞希」

 私は、ベランダで瑞希に話しかける。

 瑞希たちの部屋は、私たちの部屋の隣だから、ベランダに行くと普通に話ができる。

「どうしたの?」

「……瑞希には、友達ができてほしくないな、って思って」

「……何それ、悪口?」

「違う、私といられる時間が少なくなっちゃうし」

 私は、ちょっと格好つけて言った。

「……あずみちゃんらしくない理由だね」

 はじめは、素直に受け取ったんだけど、じっくり意味を考えたら腹が立ってきた。

「ちょ、瑞希!あんた、それどういう意味で言ったのよ!」

「あずみちゃんならわかると思うよ~」

 お気楽な声で言って、部屋の中に逃げ込む瑞希。


 ――まあ、中学校生活、楽しめるといい……よね。うん。

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