しまかぜ荘のユカイな休暇 名探偵の美学編
光村あずみです、こんにちは!
作者が早く書いてくれるもんだから、ちょっとご機嫌なのよ。
あと、お詫び。
前回の怪奇現象編、友恵さんがいませんでしたよね。
……すみません。っていうか、本当は作者が謝るべきなのに!
作者からの伝言なんだけど、「友恵さんは法事があったので参加しませんでした」だって。まあ、さすがの辻さんたちもそれでは断れないか。
今日は、肝試しの翌日。
私たちは、私の部屋にいる。両親は仕事だから家にいない。
瑞希は、犯人は辻さんではないって言ってたけど……。
――辻さん以外に、あんなことする変人はいないわよ!
瑞希は、確かに変人だけど、私が見張ってたし。
水晶さんは、例外だけど。
「ねえ瑞希、結局あれは誰がやったの?」
「やりそうな人を考えればいいだけの話じゃないか」
「でもさあ、辻さんしかいなくない?ほかの人は、距離的に無理だったし」
「なんで、そうなるんだよ!達樹さんなら、できると思わない?」
……まあ、できる、とは思うけど。
でも、達樹さんはそんなことはしないと思う。
「まさか、『達樹さんはそんなことしない』とか思ってないよな?」
私は、首をぶんぶん振って否定する。
「今回は、あずみちゃんも春休みで脳が鈍ってたのかな」
なんか、腹立つ言い方。……あんた、皮肉の才能あるわよ?
「僕が謎解きするよ」
……?犯人は、わかってたんだろうけど、動機までわかってたの?
「……あ、最初は『さて』から始めてよね!」
「なんで?」
「それが、名探偵の美学だからじゃない!」
「僕のことを名探偵って言ってくれるのはうれしいんだけど、残念ながら僕は名探偵じゃないんだよね」
……っ、そこまで言われたら返す言葉がない。
「じゃあ、早く説明して」
「うん」
「今回の事件なんだけど、犯人は達樹さん」
……まあ、これまでの瑞希の言動から、うすうす気づいてはいた。
「……で、なんでなのかっていう話だよね」
私は、うなずく。
なんで、達樹さんはろうそくを倒したんだろう……?
「達樹さんが犯人だっていう証拠に、ろうそくが倒れたことに萌さんは特に驚いていない様子だったということがある」
「……ちょっとまって、あんた、あの暗闇の中で萌さんが見えたの?」
「ううん、倒れた時、萌さんの声がしないなって」
……はあ。
こいつは、いつも無駄なくらいに冷静だから、地球の危機が来てもおとなしく死ぬんだろうな。
「このことから、萌さんは達樹さんの協力者だったと考えられる」
夫婦で……じゃなくて、カップルで協力してたのね。
「肝試しって、どこか不穏な雰囲気がない?萌さんと達樹さんは、肝試しがカップルの今後に悪い影響を与えると考えた」
なるほど。
「でもそれって、最初から断ればよかっただけの話じゃん」
「……あずみちゃん、あの時心から喜んで肝試しに行った人が何人くらいいたと思う?」
……まあ、辻さんたちに誘われちゃあ、断れないよね。
「はい、おしまい」
瑞希が言う。
私は、こういう時は拍手をしたほうがいいんだろうと思ったけど、いつもそんな感じだから、しなかった。
「あずみちゃんは、カップルに悪い影響を与えるって思わなかったの?」
「ああ、うん。私、そういうの信じてないし」
本当に、信じてない。
というか、信じてないのは瑞希のせいだと思う。
不思議なところがあるのが怪談の魅力なのに、瑞希はそれらをすべて推理でつまらないものにしてしまう。
「……って、カップルっていう単語は私たちの何に関係するの?」
「……あれ?……あずみちゃん、そういうつもりじゃなかったんだ、まだ」
「……?」
私は、考える。
そして、その「カップル」という単語が、私たちに向けられているとわかった時、私の顔が一気に赤くなった。
「あずみちゃん、遅いよ」
瑞希が微笑む。
私もつられて微笑む。
春休みが明けたら、私たちが行くのは中学校。
――瑞希、制服似合ってるかな。
私は、ちょっとだけ楽しみになった。
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