箱と番号錠と友情
椿 恋次郎
箱と番号錠と友情
「酒持って来い!これが飲まずにやってられるか!」
最初に浮かんだ言葉がそれだった。
苦肉の策とも言える。
令和の時代に飛び出るには些か古臭い台詞だが、よかろう、どうせ俺は古臭い男なのだ。
「佐藤君どうしたのさ?」
「酒は今無いんだけど…日本酒、買ってこようか?」
「来る人数は分かんないけど、とりあえず人集めて飲む?」
「例の店抑える?宅飲みの方がいい?誰か近くに住んでなかったっけ?」
さても気のいい連中だ、やさぐれた心に優しさが染みる。
かくもありがたい話だが片付けなくてはならない事がある。
むしろ知恵を拝借すべきだろうか?
軽率に答えを急いでも良い事はないだろう、事情を話して協力してもらおう。
「最初は3で四桁の番号錠なんだね…あ、ちっちゃく『最初は3』って彫ってあるね」
「3が固定なら残りのパターンは729通り?0もあるの?そしたら1000通りか…総当たり出来なくもないね」
「組み合わせはそうだけど、どうせ回数制限とかがあるんでしょ?」
「冷静に考えてみよう…他にヒントとか無いの?」
「最初に渡されたのが番号錠付きの箱と謎の紙ね、読んでみよう。」
「『三分以内に開けて下さい。カウントは番号を入力し始めてからです。最初は3。メーニ。一番大きな数字と一番小さな数字の差が最大になるようにして下さい。更に四桁の数字が最大になるようにして下さい』なんだこりゃ?」
「クソ!そっちかよ!住宅の内見のチラシとか意味が分からず叫んだけれど、まさかのチラシの裏かよ!」
「レモン汁とかの炙り出しも疑った方がいいかも、ですね」
「最初は3。メーニ。…メニーじゃないんだよね?」
「流石にヒント書いたモノが誤字とかはないでしょ…ないよね?」
「悔しいけど今どきチラ裏とか舐めプしてくる相手だから否定しきれないよね…って今どき不動産のチラシで両面印刷じゃないのなんてあるんだねぇ」
「『冷蔵庫にプリンがあります』って書いてある方がシックリくるものね」
「さては…いや、まさか…けど…コレさー、『メーニ』じゃなくて『
「最初が3なら3×3-9=0…コレでしょう!」
雲を掴むような話かと思っていたが仲間とは有り難いものだ、早速入力してみる…開いた!見たか!友情パワーだ!…中には一枚の紙が入ってた。
「例によってチラシの裏ですね…何々…『おめでとうございます。正解は“3390”で“ささくれ”です。次のお題は“ささくれ”です』」
「「「「「酒持って来い!これが飲まずにやってられるか!」」」」」
箱と番号錠と友情 椿 恋次郎 @tubaki_renji
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