ささくれだった◯◯◯

セントホワイト

ささくれだった◯◯◯

「どうしてだよ、父さんっ!」

「お前には早いからだ」


 ボクは何度聞いたかも憶えていない父からの言葉に怒り心頭だった。

 父はボクの為だと言って聞かず、母も父の言うことに逆らえないのか同じ事言うのだ。


「昨日だって同じことを言ってたじゃないか! じゃあいつになったらボクも良くなるのさ!? 友達のラン君はもう食べてるんだよ!?」

「ラン君はお前とは違う。お前はまだ子供だ。食べていい年ではないのだ」

「そうよ、テン。お父さんの言うことを聞いてちょうだい」

「そうは言うけど、大丈夫かもしれないじゃんか! みんなしてボクだけ除け者にしてるだけなんじゃないの!?」

「テンっ!」


 べちんっと叩かれる頬。父の容赦のない一撃が脳を揺さぶり、身体が吹き飛ばされてみんなから笑われる。

 酷い仕打ちだとボクは父を睨んで訴える。


「どうして打つんだよ!」

「言っても聞かないからだ。いいか? これはお前が考えているほど美味しい物ではない。それに、今朝のお隣のタンさんを見たか?」

「タンさん? ラン君のお父さんのこと? 確か……凄く体調が悪そうな顔をしてたよ?」

「それはな……これが原因なんだ」

「これが!?」


 父が持っているそれを凝視していると、父はそれを恐れることなく口にしてみせた。

 パリパリという咀嚼音が耳に心地よく、何度聞いてもそれが父の言うような恐ろしい物には見えない。


「ホントなの、父さん?」

「そうだ。俺たちはこれを食べることで確かに腹は膨れる。だが結果として体調を崩して腹を痛めてしまうんだ」

「う、嘘だ。そんなの嘘だ! そんな酷いことをするはずないじゃないか!」

「嘘じゃない! 母さんも経験したことがあるだろう?」

「……はい。私だって昨日は体調が悪かったのよ?」

「そんな……でも、今日は平気そうじゃないか」

「スッキリしたからね。明日になったらタンさんも元気になっているはずよ」


 母さんが優しくボクの背中を叩くと、それだけで周囲は騒がしくなるが母もボクを諭しながら父と共にそれを口にしていた。

 たとえお腹を痛めると知っていても両親は昨日と同じくそれを口にする。

 よく見れば友達のラン君も離れたところでそれを口にして少し誇らしげに、そしてボクの視線に気づくと自慢気な顔でそれを口にする。

 父も母も、周囲の人々の視線を集めながらそれを口にして「可愛い可愛い」とちやほやされて羨ましかった。

 だからボクは思わず叫ぶ。


「ボクにも……ボクにも……笹をくれぇー!」


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