さかもげと方言と私
藤 ゆみ子
さかもげと方言と私
「さかもげから血が出たけんサビオはって」
子どもの頃無意識にささくれを引っ張り血を出しては母親に言っていた言葉です。
当時は方言などあまり気にせず周りも同じようにこの言葉を遣っていたのですが、特に都会に出る訳でもない私が独特な方言が恥ずかしくなりあまり遣わなくなったのは高校生になった頃でした。
私が通っていた高校はいわゆる私立のスポーツ校で全国各地から生徒が集まってきていました。
全国各地の方言が飛び交う教室でも部活でも相手の言葉に違和感を抱くと同時に自分の言葉にも違和感を抱くようになりました。
体質なのか、乾燥なのか栄養不足なのか小さい頃からよく『さかもげ』ができていた私。
ただ、高校で『さかもげ』という言葉を遣う人はいません。高校生になって初めて『さかもげ』という言葉に違和感を抱き、同時に語尾が『もげ』って可愛くないし、と思った私は『さかもげ』を『ささくれ』に変更。
けれども言いなれた言葉を咄嗟に言い替えることは難しく
『ささもげ』『さかくれ』など方言でもなんでもない変な言葉を発したこともありました。
冒頭に出てきた『サビオ』ですが、調べてみると私が生まれ育った地域の方言ではありませんでした。
誰が私に『サビオ』と教えたのか。
その後『カットバン』『バンドエイド』を経て今は普通に『絆創膏』で収まっています。
高校生の頃は本当に方言に敏感で友人とわざと方言を遣って会話をしたり珍しい方言クイズなどしたりして遊んでいましたが、厄介だったのは部活です。
一応強豪校だったので様々な県に遠征へ行ったり県外の高校から練習試合に来たり、インターハイなど、ふざけてはいけない真剣勝負の場で相手の言葉が良くわからなかったり、イントネーションが違っていたりした時になんとも変な空気が流れるのです。
特にオーダー表を読みあげる時に名前のイントネーションが独特だったりして笑ってしまいそうになるのを必死に堪えていたのを覚えています。
方言や言葉の違いを感じることは皆さんあるかと思いますが、地元の友人が東京の大学へ行き帰ってきた時に標準語になっていた時は別人になったようでなんだかよそよそしくなりました。
『ささくれ』から話が逸れましたが、たぶん私はこれから先も『さかもげ』は遣いません。
さかもげと方言と私 藤 ゆみ子 @ban77
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます