婚約破棄されたので隣国に行きます!

温故知新

婚約破棄されたので隣国に行きます!

「あぁ、もう! あのバカ王子、本当にやったわね!」



 王家主催の夜会で、私は婚約者だて王太子殿下から婚約破棄された。


 理由は単純。私が義妹を虐めてたから。


 実母が無くなった直後、継母と共に来た義妹は、魅惑的な体つきと可愛らしい顔立ちで、とにかく周りに取り入るのが上手い。


 だから、義妹を見た殿下が一目惚れしたのは必然だった。



「でも、どうして周りの人達は義妹の言葉を全く疑わないの!? 王太子妃教育で忙しい私に、義妹を虐める時間があるわけないじゃない!」



 義妹に絆されている家族や使用人達が、彼女の言葉を疑わないのはまだ分かる。


 けど、平民や貴族、果ては王族まで彼女の言葉を疑わないのはおかしい!



「お陰で、夜会に参加していた家族や貴族達から嘲笑を浴びせられ、帰りの馬車も出してくれない始末。本当に何なのよ!」



 分かっていたとはいえ、こんなのはあんまりだわ!


 歩いて屋敷に戻ってきた私は、使用人達に白い目を向けられながら部屋に戻ると、急いで家出の準備をする。



「3歳の頃に前世の記憶を思い出し、この世界が乙女ゲーの世界で、自分が悪役令嬢であることが分かってから、破滅フラグ回避に奔走する傍ら、万が一に備えての準備をしてきた」



 本当は義妹と仲良くなりたかった。


 前世で推しだった殿下と本当の夫婦になりたかった。


 でも、ヒロインである義妹が無事にハーレムエンドを迎えた今、それはもう叶わない。



「お母様の実家である隣国の男爵家には手紙を出してある。後は、今夜中に屋敷を出て、明日には隣国に着くようにしないと!」



 男爵家には、既に私の現状を伝えており、隣国に渡った際は、隣国の皇城で下働きとして働けるようにお願いしてある。



「下働きの大半が下級貴族や平民だから問題ないと思うけど……よし、準備万端!」



 トランク1つで屋敷からこっそり抜け出した私は、そのまま隣国へと旅立った。


 でも、まさか皇太子付きの侍女に抜擢されるなんて、この時の私は思いもよらなかった。

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