【KAC2024】笹くれ。【KAC20244】

御影イズミ

何に使うかは……

「スヴェンやーい」

「なんだ、クソ野郎」


 若かりし頃のフォルカーとスヴェンの2人。

 彼らは家が隣同士なのもあって、幼い頃から付き合いがあった。

 フォルカーとスヴェンは地質学を研究する研究者になるために日夜努力しており、ちょっとしたライバルみたいなものだ。

 ――まあ、現在はスヴェンは宇宙学を専攻している研究者なのだが。


「お前んちってさ、笹あったよな?」

「あるにはあるが……。何故だ?」

「率直に言うぞ。笹くれ」

「は?」


 何を言っているんだと真顔になったスヴェン。心なしか、フォルカーを頭のおかしい奴と見ているようにも見える。

 だがフォルカーはあることをやりたくて、笹がほしいという。故に笹をくれと。


「今日の夜さ、天の川見れるだろ?」

「ん、ああ。晴れているからよく見えるだろうな。それが?」

「天の川に船を流してみてぇなって!」

「あなたの話は本当によくわからんな。どういう意味だ?」


 フォルカーの説明をよくわかっていないスヴェンは何度も頭を捻らせるが、どうやって天の川に船を流すんだ、と愚痴をこぼす。


 笹とどう結びつくのか、天の川にどう船を流すのか、何度も考えたがよくわからない。空でも飛ぶ気か? などとも考えた。

 そこでフォルカーは夜、スヴェンに笹を持って近所の川に来てくれと告げる。これでもスヴェンは何をするのかよくわかっていないが、それで答えが得られるのならと了承。父に笹をもらって、川へと向かった。


「おいクソ野郎。何をする気だ」

「今から天の川に船を流すって言ってるだろ?」

「だからそんなの、現実には不可能だろう」

「ああ、そうだ。でも、これならどうだ?」


 そう言って、フォルカーは組み立てた笹の葉の船を川に浮かべ、カメラを構える。

 ゆるゆると水の流れと共に船が進み、やがてある地点に到達した瞬間、フォルカーがカメラのシャッターを切る。


「……わ……」


 写真を見れば、そこにはあら不思議。

 天の川を浮かぶ笹の葉の船が映し出されていた。

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