ささくれ 【KAC20244】

姑兎 -koto-

第1話 塩対応に麻痺した僕の警報級異常乾燥な性癖

愛しても愛しても、ブラックホールのように、さらに欲しがる君。

カサカサの心はささくれ立ち、抱きしめる手を振り払い、とげとげしく僕に当たる。


君の眼は、僕をすり抜け、どこか遠くを見ている。

僕の想いは、水絆創膏ほどの力もない。

でも、僕は、この手を放すつもりはない。



『だーかーらー、ウザいって言ってるでしょ!』

君は、僕を受け入れようとはしない。

『お願いだから、もう、つき纏わないで!』

僕の一途は、知ってるでしょ?

困った子だ。

僕を受け入れさえすれば、カサカサの心も潤うのに。




ある日、警察官が僕の所に来た。

ストーカー行為で訴えられたらしい。


カサカサ、カサカサ……。

僕の心が音を立てる。

大丈夫……大丈夫。

異常なのは、僕じゃない。

乾ききった君の心なんだから。


カサカサ、カサカサ……。

ひび割れた心が悲鳴をあげる。

あれ?

なぜ、僕の心がひび割れる?

どうして、誰もわかってくれない?



「ごめんね」と君が泣く。

なぜ泣くの?

「ごめんね。勘違いさせて」

僕は、勘違いなんてしていない。

「ごめんね。優しくして」

いや、優しくされた覚えもない。

「ごめんね……ごめんね」

警察官の前で、優しいヒロインを演じる君。



高飛車でツンとした君が好きだったのに。

なんで、良い人のふりをしてるの?

あれ?あれれ?

僕は、この人のどこが好きだったんだろう。


心のささくれがポロポロと落ちていく。

執着で凝り固まっていた僕の心がポカンとしている。


君の事が好きだった。

その気持ちに嘘は無いけれど。

いつの頃からか、執着にすり替わっていたみたいだ。



ありがとう幻滅させてくれて。

ありがとう本当の君を見せてくれて。



僕を取り戻した僕。

穏やかに過ぎていく日々。




「だっさ!」

「きも!」

バーで隣り合わせた女性の心無い言葉。

待ってました!これだよ。これ。


そして、性懲りもなく、僕は、新たな恋をする。


君のカサカサの心。

そのささくれを僕が潤してあげる。


そして、僕は、また……。

カサカサと君を愛す。








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