その宝箱、危険です
御剣ひかる
かのじょ は たからばこ を あけた
あの人も仕事に行ったことだし、お掃除でも始めようかしら。
まずは寝室からね。
……あら? この箱は?
サイドテーブルに置いてるけど、今朝起きた時はこんなのなかったわよね。
白い小箱に、細い赤いリボンがかかってる。
てのひらに乗るくらいの小さい箱。……軽いわね。
あっ、カードが添えてあった。
『親愛なる君へ。いつもありがとう』
って、これ、わたしへのプレゼント?
もしかして、サプライズで用意してくれてたのかな。
あの人、プレゼントとか面と向かって渡さない人だから。
前も、誕生日プレゼントの手鏡を、何気にわたしの道具箱に忍ばせていたし。
それ、下手したら気づかないからねっ?
うふふっ、でも、そういうのかわいいわよね。
時に大胆で、行動力もあるのに、繊細で不器用なところもある彼だから好きになったんだった。
それじゃ、早速開けてみようかな。
この軽さだとアクセサリーくらいかな。
指輪? ネックレス?
ワクワクする。
……って、何もない? ううん、カード?
『しかし宝箱は空っぽだった』
……はい?
何よこれぇっ。
本当にこれだけ?
思わず箱を分解してまで他に何もないか調べたけど、何もない。
こんなサプライズひどいよ。
わたしのワクワク返してよねっ。
よぉし、そっちがその気ならわたしだって。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「おい、聞いたか? 元勇者がミミックに指をかじられて、切断寸前だったって!」
「魔王を倒した元勇者がミミックなんかに引っかかるなんてどうしたんだ」
「それがさ、自宅で、らしいんだ」
「自宅?」
「奥さんにいたずらで空箱をサプライズしたら、奥さんの反撃で小さいミミックを置かれたらしいよ」
「奥さんって、元勇者パーティの召喚師だっけ」
「本物のミミック召喚したのかっ」
「けど、ダンジョンにあるような宝箱が自宅にあったら、あからさまにアヤシイだろ」
「うん、だから奥さんもまさか引っかかるなんて、ってパニックになっちゃったらしいよ」
「イタズラはほどほどに、ってか……」
(了)
その宝箱、危険です 御剣ひかる @miturugihikaru
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- INGEN専門ジャンルはSF、スペースオペラ、戦記、群像劇。硬派になりたいお年頃。 【作者略歴】 超僻地要塞四国島出身。 愛媛みかんの国に生を受け三十年。うどん、鰹節、すだちの国の民と血で血を洗う戦いを続ける。 従軍記者として5年勤務。勤務中、膝に流れ手榴弾を受けて退職。 みかんの山に首まで埋もれていたある日、「俺、戦記書くわ」と一念発起。現在に至る。 現在は超修羅要塞九州島で傭兵として活動中。修羅の国の人ではない。 (※このプロフィールのどこまでが真実かはINGENまでお問い合わせください。)
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