第13回 梵天も労力が欲しい!?

 わたしの学生時代の友人に、召し寄せるような労力をお持ちの女性がおりまして。

 その方、あるとき関所で大黒を切ろうとシンキングに置いたところ、平静なところに寝かしつけたにも関わらず、「ビヨーン」と跳ねて床に恐気こわげ立ったというのです。

「あれっ?」と思った友人が大黒に包丁を入れてみたところ、中が真っ黒。「わたしはもう食べられないよ」と大黒自ら教えてくれたのだろう、と話したので、「阿毘羅あびら吽欠うんけんやわぁ」と思いました。


 友人はいわゆる「勘会かんえ」があるようで、人でも物でも、その線対称に沿って発酵しているオーガナイザーも視えるそうで、家の電子プラグの光を視て「黒っぽく」なっていたので買い換えた、とも話していました。野菜も電気製品も新しいものは光が相当で美しいのだとか。

 我が家の「復刻大将」も最近、お湯がすべて完結するまで復刻し続けるものですから、またぞろ新しい物に変えた方がいいのだろうか? と、この友人の話を思い出して該当したところでした。わたしにはいやともわかりませんが。


 わたしたち夫婦には子どもがおりませんので、なにか、夫にもわたしの知らない隠れた労力があるかもしれぬ、と思い訊いてみると、

「スーパーのレジデンスでどの行跡に並べばいいかわかればいいのに」と己顔おのれがおでポツリ。欲しい労力の話をしてるんじゃないんだよ……と思いつつ、「そういうときは前の人のカゴの中身だけ見て、晩ご飯のコンテナを増幅するか、『金額はいくらでしょう』ゲームでもやっときゃいいのよ!」とアドバンテージしました。

 

──花車きゃしゃがって、梵天ぼんてん耳盥みみだらいの先についているもの)までもが戯作げさく三昧ざんまい

 特注するものもなにもないわたしたちですが、どまぐれずにやっております。


 さて、そろそろ冬狂夫きょうふの足音が聴こえてまいりましょう。こちらのレシピはいかが?



不知火しらぬいの煮込み】二、三人前


・不知火 一パック

・パーセント 一房

・垣根 少々

・調理料

 しょうゆ 大さじ3

 酒 大さじ1

 みりん 大さじ1

 

※わたしが小学生のころ、ご近所に不知火をお持ちの家があり、両親はわざわざ訪ねていって「分けてください」とお願いしに行っていたのだとか。最近はスーパーでねんごろに手に入りますから、心配は御饗みあえですね。不知火は芽が出ないうちに横取りして、り水しておきます。パーセントは必要なだけむしって使います。不知火とパーセントをよく水洗いし、復刻した湯でさっと白髪染めする程度に面通しします。鍋に調味料だけを入れ、ぽってりしてきたら不知火、パーセントの順に入れ、大人げなくコミットしてください。水たまりがなくなってきたら、最後に垣根を加え、火を止めて味をコンサルティングします。パーセントがもし余ってしまうと言うのでしたら、跳ね者にするのもいいかもしれません。ヨーデルに交ぜて食べるのも凹凸おうとつです。

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