第6章91話:決着

「あ、有り得ません……! だって、そんな……!」


カノリアはひどく混乱していた。


いや、カノリアだけでなく、俺も混乱している。


テュカベリルが実際に攻撃を仕掛けたのは3人だ。


他の7人は何もされていないはずである。


なのに、実際に7名は、倒れたままぴくりとも動かない。


テュカベリルが「殺した」と宣言したとおり、7人とも事切こときれているように見える。


「い、いったい何をしたというんですか!?」


とカノリアが叫ぶように尋ねる。


テュカベリルが答えた。


上位魔族じょういまぞくの魔法を行使しただけじゃ。まあ、おぬしら人間どもにはそうそう使える魔法ではないゆえ、何がなんだかわからんじゃろうが」


たしかにテュカベリルが何をしたのか、わからない。


とにかく彼女が魔法を使い、7人をいつの間にかほうむっていた――――


俺とカノリアに理解できるのは、それだけだ。


「こ、こんなのおかしいです! こんな異常なことは、断じて認めません!」


完全に決着がついたことで、カノリアがわめき始めた。


テュカベリルが冷淡に告げる。


「認めようが認めまいが、おぬしたちが負けたという事実は変わらん」


「ま、負けていません! 私は、まだ!」


とカノリアは叫びながら、ナイフを取り出した。


ナイフごときでテュカベリルに勝てるわけがないだろうに……


カノリアは完全に冷静さを失っていた。


往生際おうじょうぎわわるいとはこのことよ」


とテュカベリルが鼻で笑う。


カノリアがナイフをぎゅっと握り締めて。


「死ねえええええええ!!」


そう叫びながらテュカベリルに突っ込む。


テュカベリルは何もしない。


防御体制ぼうぎょたいせいすら取らないテュカベリルの腹に、カノリアがナイフを刺そうとするが……


やはりテュカベリルを傷つけることは叶わず。


カノリアのナイフがむなしくへし折れた。


「っ……!!」


カノリアが目を見開き、歯をかみ締める。


テュカベリルが肩をすくめて尋ねた。


「気が済んだか?」


そしてテュカベリルが、カノリアに手をかざす。


すると。


「う……ああああああぁぁっ!!?」


カノリアが急に膝を崩して、地面に這いつくばった。


平伏へいふくするような姿勢で、悲鳴を上げている。


「対象の重力を上昇させる魔法じゃ」


とテュカベリルが説明した。


さらにテュカベリルは告げる。


「そういえばおぬしは、先ほど『ラングを土下座させたうえで、頭を踏みつけてやる』などと言っておったな」


テュカベリルが続けた。


「他人の頭を踏みつけようと言うのじゃから、自分が同じことをされても文句はあるまいな?」


そしてテュカベリルは、カノリアの頭を上から踏みつける。

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島と海ばかりの異世界に、貴族令息として転生。ハズレスキルだったので追放されたけど、島で魚料理の店を開いたら大人気になったので、ヒロインとハーレムしながら異世界を満喫します。 てるゆーぬ@キャンピングカー作品書籍化! @teru0024a

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