恋愛用語
仕事が終わった。
今日は、1時間半の残業となった。
帰宅した誠実は、社員全員の残業を2時間と付けた。
「命を張る仕事だ。30分なんか付けられっかよ。」
そういって、風呂に入ると、1時間ゆっくり浸かり疲れを取り、湯上りの一杯と
帰りに買った幕の内弁当をぱくついた。
「あっ、そうだった。ヨウジの言葉を…」
布団に入り、恋愛用語辞典をめくる。
男性と男性の恋愛っと・・・
誠実が、恋愛用語辞典を愛読するようになったのは、元妻が辞典を彼の部屋に残して出て行ったのがきっかけだった。
「お前、本を忘れてるぞ、どうするんだ、これ。」
「なに?本て・・・」
「何ってお前の本だろうが、ったく、あー、れ、れ・ん・あ・・・」
「あぁ、それ、燃えるゴミに出しといて。」
「何言ってんだ、辞典なんか燃えるゴミに出せる訳ねぇだろう。」
「勉強するものはなぁ、そう簡単に…」
「うるさいわねぇ、捨てておいて。」
元妻が残した恋愛用語辞典、誠実は何故か捨てられず、何時しか彼の愛読書になったのだった。
「オーライ、オーライ、ストップ!」
「準汰、ユニックはこの位置で、足場をあの配管の上にあげるぞ!。」
「はい、社長、分かりました。」
うちの変わり者、準汰は役所に勤める公務員だったが、何を間違ったか、鳶職に憧れうちに勤めだした。
そりゃぁ、普通の中小企業の社員程度の給料は出せるが、福利厚生や、退職金なんかを考えるとよくまあ、うちになんかと言いたくなるが、まじめに仕事をしてくれ、唯一、俺の事を仕事場で社長と呼ぶ堅気の男だ。
その純汰が、ある日俺の家に来て、お願いがあると言ってきたんだ。
「社長、実は私、実家を出ようと思ってるんです。」
「ああ、お前ももう30だ、そろそろ自活しねぇと情けねぇ男になっちまわな。」
「はい、それで・・・」
「何だ、遠慮なく言ってみろ。住宅手当出してもいいぞ。」
「いえ、そんな、滅相でもない、社長にそこまで気を使って頂いては、私の立場がありません。」
準汰は、生真面目な男だ。良し、俺がアパート借りてやるかと思ったんだが…
「社長、申し訳ないのですが、ここに、この家に一緒に住まわせて頂けませんか?」
「はぁー?・・・・・・」
準汰は、臆病な奴と言うか、手堅いというか、自分の生活が荒れて、仕事に出なくなって、人生を棒に振るような人間にはなりたくないと言った。
俺は、ふと思った。
「公務員ってのは、やっぱり手堅い職業なんだなってな…」
恋愛用語にこういうのがある。
三強だ。
生活に強い、不景気に強い、身体に強いこの三つ合わせた男を三強と言うんだそうだ。
女子はそれを好むらしい。
そんな好かれ男と、俺が一緒に暮らす。
ふん、どうせ俺は世の中の嫌われ者さ。
準汰の引き立て役になってやろうか・・・
嫌われ続ける男の小説 138億年から来た人間 @onmyoudou
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